1393 星暦559年 赤の月 2日 魔力認証結界(21)
「そう、そこを触れてこっちの蓋を開いて、登録する人にここを触れさせて下さい。
こちらが光ったら登録完了です」
アレクがチェルナ子爵夫妻に魔力認証用の登録の仕方を説明しながら、チェルナ子爵夫人の登録をやってみせた。
昨日は結局、色々と設置に時間が掛かったし、チェルナ子爵が楽しんで何度も捕縛結界を起動させて警備の人間に解除させてって言うのをやっていたら夕方になっていたので、子爵と家令以外の人間を登録せずに帰ったんだよね。
取扱説明書にはちゃんとやり方は書いてあるんで夜の間にやるかもと思ったが、自信がなかったらしく、今朝来てみたら誰も追加登録はされていなかった。
俺たちが帰った後も、追加で何度も、何度も、何度も捕縛結界を起動させたらしく。そこそこ魔石の魔力が減って、この調子だったら今日中に枯渇しそうなぐらいになっていたが。
本来は捕縛結界を使わずに、認証と防御結界だけだったらあと半月ぐらい保つ筈だったんだけどねぇ。しっかりと大きな魔石を使えば通常使用なら1月ぐらい保つが、今回は俺らが試作品として実費で提供したこの防犯システムに付随して入れておいた魔石だから、中ぐらいのお手頃な値段の魔石を入れておいたんだよね。
それでも、まだまだ保つ筈だったんだが。
ちょっと思ったより捕縛結界の魔力使用量が多いのか。子爵が非常識なぐらい使いまくったのか……。
「あれ?
昨日僕たちが帰ってから、どのくらいこの仕組みを使いました?
魔石の減り具合が思っていたより大きいんだけど」
シャルロも魔石の状態に気付いて首を傾げながら子爵に尋ねた。
「この人ったら面白がっちゃって、夜遅くまで動かしまくっていたのよ。
子供達も一緒になってぐるぐる巻きだ〜なんて喜んでいたし。
警備の人たちも『自分たちも体験する必要がある』とか言ってぐるぐる巻きに志願したり、解除の練習をしたりで、皆で子供達の就寝時間までやっていたわ」
チェルナ子爵夫人がちくった。
そっかぁ。
じゃあ、俺たちの想定以上に捕縛結界が魔力を消費するんじゃなくって、単に持ち主が楽しみ過ぎただけだな。
捕縛結界でぐるぐる巻きになるのってそんなに楽しいんかね?
まあ、貴族のお坊ちゃんとか当主は捕縛結界に捕まる経験なんてそうそう無いだろうが。
「じゃあ、今度はキースを登録してみようか」
ワクワクした顔で横で待っていた長男の顔を見て、子爵が魔力登録の部分の蓋を開けた。
横で次男が羨ましそうに見ている。
「あの登録する部分って現在魔力認証の登録済みな人なら開けられる仕組みになっていますが、鍵もつけた方がいいですか?
息子さんが弟に強請られてこっそり魔力認証してあげそうな気も……しないでもないのですが」
そっとチェルナ子爵夫人に小声で尋ねる。
「そうねぇ。
あの仕組み自体を鍵がかかる箱に納めて貰えるかしら?
キースもだけど、直ぐに開けられる形にしておくと、お調子者なあの人が親戚あたりには自慢して見せてしまいそうだから。
箱に仕舞って鍵を主寝室の金庫にでも仕舞っておけば、その場の思い付きで余計なことをしないでしょう」
楽しげに色々とアレクに質問をしながら長男の魔力を登録させている子爵を少し首を傾げて見た子爵夫人が言った。
実際に使わしてみると、工房で作って試していた時には考えなかったことにも気付くもんだなぁ。
「後で魔具を囲える金属箱を持ってきますね。
他に何か気付いた事はありますか?」
「そうねぇ、魔力登録出来る人数って限界があるの?
あと、登録した人数が一目で分かる様に出来るかしら?」
チェルナ子爵夫人が聞いてきた。
人数ね。
心眼で視れば登録部分の魔力の種類で分かるのだが、考えてみたらそれは魔術師じゃなきゃ分からないよな。
「魔力認証の登録は5人までです。
もっと増やしたいなら素材を入れ替えれば可能ですが、足りませんか?」
試作品だし、5人程度で良いだろうと中ぐらいな値段の素材を使ったから5人分しか登録出来ないんだよな。
一応取扱説明書には『登録可能人数を超えての登録は出来ません』って書いてあって、最後の仕様書部分に5人って書いてあるんで変更は難しく無い。
「私とあの人とキースと家令で4人ね。
ヨルクが大きくなったらあの子も登録するとなるとちょっと足りないかしら?
でも、暫くはこれで良いわ。数年後に変更をお願いできる?」
子爵夫人が聞いてきた。
「勿論です。
あと、登録人数を目視できる様な仕組みも付け足しましょう」
そっかぁ、家族構成が変わると登録しなきゃいけない人数も変わるかもなんだな。
シェフィート商会で売り出す際には後からのアフターサービスとして人数変更が出来るように、素材変更をしやすい形にした方がいいな。
うん。
色々と試作品を実際に使わせると新しい発見があって、良い。
ウィル達は初日の終わりで自分達の登録は消してます。




