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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1315/1327

1315 星暦558年 桃の月 12日 書類作業(7)

「こうやって見ると収益って新しい開発したモノにぐっとお金が入って、その後は徐々に減っていく感じなんだねぇ。開発した物をちゃんと把握していたら、大体想定外な変動はない感じがしてきた」

 工房を始めてからの収入を商品ごとに毎年横へ書き加えていった表を縦に並べて見比べていたシャルロが、感心したように言った。

 雑談しながらでもあったので昨日一日かかったが、収入と支出は大体ちゃんと全部書き出せた。

 最後に今年の分も暫定ではあるが数字を書き込んである。


 なんかこう、報告書って数字を足し引きしたら出来上がるものだと思っていたが、ちゃんとその背景に原因とその結果的な流れがあるんだなぁ。

 アレクが収支の数字を見るのは楽しいと言っているのが、ちょっとは理解できたかも?


「新しい魔術回路の開発に成功するかとか、開発した物がどの程度売れるかとかで違いが出るから過去の収支の流れは理解できても、将来の収入の増加は読めない。だから『今まで毎年このぐらい稼いでいたから、来年もそのくらい入るだろう』なんて甘いことを考えて借金や支出計画を立ててはダメだぞ?

 まあ、過去の商品の特許使用料を前年度までの毎年の減少額を考慮して見込むぐらいはしても良いが」

 アレクがちょっと厳しい顔をして俺たちに言い渡した。


 確かに、毎年大体金貨ウン枚分稼いできたから、来年もそのくらい稼ぐだろ~なんて安易に考えてはダメだな。

 基本的に、開発した年は最初の契約料として多めにシェフィート商会から前渡金を受け取り、特許使用料も初年度と精々2年目にがっつり売りまくった際にそこそこ入って来る。3年目以降はぐっと減った収入が少しずつ減りつつ毎年入って来る感じだ。最初に売りまくって大体狙った購入層が買い終わったらあとはそれ程売れないんだろうな。


 つまり、毎年新しい商品を開発しない事には同じレベルの収入は期待できないと。

 しかも開発したのが売れるかどうかの保証はないし。

 俺たちは比較的運が良く今までは当たりな商品が多かったが、それでも売れなかった商品もそれなりにある。


 まあ、今まで稼いだ分はそこそこあるから、借金なんて必要ないと思うが。

 というか。

「考えてみたら、今までって収入の方が支出より多かったけど、この工房ってどのくらい金があるんだ?」

 最初にこの工房を借りるときにちょっとシャルロとアレクに多めに金を出してもらい、俺は後から諸々の個人的依頼で儲けた分で二人に返したんだが、工房としての資金ってどうなっているんだっけ?


「よくぞ聞いてくれた!

 今日はそっちを確認する作業をするぞ!」

 アレクがにっこりと笑いながら何やらまた沢山書類を出してきた。


「この書類が毎回銀行から資金が引き出されたときの小切手や依頼書の写しだ。

 キーナ達はこれらをもとに収支の詳細を書き出しているんだが、我々がそれをやっていたら手間がかかりすぎる。

 なので、今回はもっと大雑把に、初期からの資金の動きが大体収支と一致しているかを確認する計算をしよう」

 アレクが言った。


 うわ~。

 そっか、支払いって小切手を渡したり、請求書に基づいて支払い依頼書を銀行に出したりが多いんだよな。

 現金払いも時にはあるだろうが。

 それを細かく足し合わせていくのは御免だが、何をするんだ?


「これが最初に三人で工房用の口座に振り込んだ資金。

 そのあと、毎年の収支の差額分が銀行の口座に入っている筈だろう?

 だから銀行からの口座残高通知書を足し合わせた数字と収支報告書の収益から税金を引いた分を確認するんだ」

 アレクが言った。

 なるほど?


 という事で初年度の収支報告書と、552年の年末の口座残高の通知書とを確認する。

 あれ?

「合わないぞ??」

 態々こんなことをさせるんだから、アレクが俺たちの工房の金を横領している訳じゃあないだろうけど。


 どこに差額が消えているんだ?



『初歩の会計監査』第一弾w

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― 新着の感想 ―
差額が合わないはあるある。 と言うか「無意識に使用した、あるいは得た収支」の確認ですからねぇ。 書類で追えるなら良い方で、「表に出せない依頼」とか色々あるし。 あとは「収入が食べれるものでした」ってパ…
アレクくん、完全に講師になってますね
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