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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1313/1327

1313 星暦558年 桃の月 11日 書類作業(5)

 そういえば俺は学院長から報酬を受け取ったお国の偉い人のヤバい案件とか、盗賊シーフギルドの長経由の依頼とかの報酬ってどこにも申告してないが、長の方はまだしも、学院長経由のって出している方は俺に払った金はどういう扱いにしているんだろ?

 馬鹿正直に『後ろ暗いことをこっそりやらすための報酬』とは書けないだろうけど、費用として計上できないとちょっと可哀そうな気も?

 いや、考えてみたら軍部の依頼でやっている分は最初から課税対象じゃないって言われたからあっちは別に後ろ暗いことをしている訳じゃないか。

 学院長は元々魔術学院の職員(?)として給与を貰っているんだろうから、費用計上なんか必要ないし、計上してもあまり税額に関係なさそうだ。


 お偉い人のヤバい依頼に関しては、ちゃんと学院長が補填されていると期待したいところだし、補填されていた場合はあそこまでお偉い人なら元々国税局に収支の報告なんてしていないだろう。それに『隠し子の存在を匂わす手紙を無くしたから見つけるために雇った費用』なんて費用に関して備考しちゃったら、関係者全員の苦労が台無しだ。


 それはさておき。

「考えてみたら、パストン島の収入って見た覚えがないけど、俺達の利権があるんだよな?

 どうなってるんだっけ?」

 あっちの会計を年に一回ぐらい確認しに行っているが、考えてみたらその分の収益を俺たちの工房の帳簿で見た記憶はない。


「パストン島の利権は個人に対するものであって、工房の収益じゃないぞ?」

 書類から顔を上げずにアレクがあっさり答えた。


「え?

 そうだったの???」

 シャルロも驚いたような顔をしているぞ?


「あの依頼はシャルロが目当てで、ウィルはちょっと手伝い、私は完全におまけだったじゃないか。だから工房に一律払い込むのじゃあ不公平だろう? 

 それに国としては、島などが見つかった場合に出来ればいつか解散されて利権がバラ売りされかねない魔術師の工房よりも、国を出る可能性が低そうなオレファーニ侯爵家の令息に利権を多めに持っていて貰いたいって言うのもあるんだろうな。

 まあ、その後に家畜を連れて行く時や現地の植物に関して調べる際なんかにはラフェーンが役に立っているが、あれは硬貨で支払われた。

 だから利権の割合も3人の間で違いがあっただろう?」

 アレクが言った。

 そうだったっけ???

 イマイチ詳しいことは覚えていないんだよな。

 アレクに任せておけば大丈夫だと思っていたから。


 まさか工房ではなく個人に帰属しているとは思っていなかった。

 確かに契約書とか権利書には個人として色々と名前を書かされたが、その書類の内容のチェックとかはシャルロとアレクの伝手で専門家が確認してくれたし、文言は3人とも同じだったから。


「ちなみにまだ開拓し始めで利益がないから俺達って収益を受け取ってないのか?」

 俺の口座に振り込まれてはいないと思うが。

 少なくとも振り込みに伴う計算書みたいのを受け取った記憶はないぞ??


「いや、我々はあの島の領地収入に対して自分の権利分まで引き出す権利があるだけだ。

 基本的に非常時用の資金を別として、各自の利権分の収益は再投資された形になっている。パストン島の役場か、王都の自治省に確認すれば幾ら引き出せるかの詳細が分かるぞ?

 利権者として我々なら島全体の収益報告も入手できるし」

 アレクが言った。


「そうなんだ?」

 シャルロがちょっと首を傾げながら聞き返した。


「貴族の領地は毎年収支報告を国に対して行って税金を払い、残った資金で災害に備えるとか、産業を始めるのに投資するとか、領主の贅沢の為に使うとかって感じである程度まで自由に金を使うだろう?

 領主だったら領地の将来の収益を担保に更に借金をすることも可能だ。

 パストン島は大部分の利権が国に帰属しているから、私たちには収支報告や租税義務はないし、勝手にあれを担保にして金を借りることも出来ない。だが生み出された資金の使い道に関しては自分に帰属する分は自由に出来る権利があるんだ」

 アレクが説明してくれた。


「自由に使えるのに引き出すまでは再投資されているのって、そういう契約に俺が署名していたのか?」

 一応契約書は最初から最後まで読んだが、それこそ深く考えてなかったから俺に不利になりそうなことが書いてないしまあいいや~って感じで適当に署名したんだよな。


「まあ、基本的に領地の運営資金は再投資するのが定番だからな。こちらから何も言わなくても最初からそういう風に契約書が書いてあったぞ?

 一応5年ごとにしっかりと細かく開発状況とかこれまでの支出、周囲の環境や今後の見通しなんかを詳しく書いた報告書を出すと言っていたから、来年には何か報告書が来るんじゃないかな。

 利権者の権利として、変な無駄遣いをしていないかは定期的に確認しているから問題はない筈だとは思うが」

 アレクが言った。

 なるほど。報告書は5年ごとだが、それじゃあ変な無駄遣いとか使い込みをされていたら金を取り返せないかもってことで毎年確認しに行っていたのか。

 利権者の権利だ!ってアレクが言っていたし、ジャレットとかあっちの役場の人もあっさり色々と見せてくれて説明してくれていたけど、そういう流れだったんだなぁ。


 来年その報告書が来たら、アレクに読み方を教わらないとだなぁ。


パストン島!

全然お金が入ってこなかったのには理由があったw

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― 新着の感想 ―
ウィル君へのマルサは「国が」止める案件だから(乾いた笑い)。 今からきっちりやってねとも言えない代物が多いので、多分監査が入らないと思う。 ともあれ、自分の収入を把握するために記録だけは必要かもしれま…
多分一番儲けが出ているはずのトレジャーハントのお金はどうなってるんでしょう
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