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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1273/1295

1273 星暦558年 橙の月 7日 ちょっと寄り道(12)

 朝食を食べて直ぐ、俺たちの屋敷船は王都の方へ向けてパストン島から出航した。

 温暖な気候のパストン島付近とはいえ、流石にもう涼しくなってきた季節なので甲板で日に当たっても然程暑くはないのだが、のんびりし過ぎていると日焼けを起こす可能性もあるので、日よけと防風の結界で甲板を区切ってその中で優雅にお茶を飲むことにした。

 魚を釣るんだったら日よけ結界だけで良いんだが、普通に景色を見るだけとかお茶を飲むだけだったら風よけもした方が肌や服がべたつかなくていいんだよね。

 屋敷船にも洗濯用魔道具を設置してあるから洗濯も大して手間じゃあないが、一日に何度も風呂に入るのは面倒だし、朝から潮風に当たる必要もないという事で防風結界も展開しておいた。


 パディン夫人が注いでくれたお茶を受け取りながら、シャルロが謎の紙の写しを手に取った。

「これ、どうしようか?

 シェイラに見せる? それとも歴史学会の受付にでも持って行って頼む?

 じゃなきゃハラファ達の遺跡発掘チームが居る場所に行って相談してみてもいいし」


「歴史学会の受付はダメだろ。

 どっかで無くされるか、取り合いで破られるか、素人が持ってきた落書きもどきなどうでもいい書類だと勝手に判断されて後回しにされるかの可能性が高い。

 歴史学会に直接依頼するんだったらセビウス氏辺りに誰か知り合いがいないか聞いて、そっち経由で直接依頼した方がいいんじゃないか?」

 俺もシェイラ経由で歴史学会に何度か行っているが、特に誰かと親しくしては居ないんだよな。

 それよりは実は沈没船とか古い美術品とかが好きだったセビウス氏の方が個人的に歴史学会に伝手がありそうだ。


「北の方と言ったらハラファの遺跡の方が関係性があるかもだが、彼だって自分の遺跡発掘の責任やノルマがあるだろうからなぁ。

 非公式に頼むのは気が引けるかな?

 取り敢えず、シェイラに見せて何か知っているか尋ねて、知らない様だったら年初の歴史学会の集まりの際に誰に相談したらいいだろうかって聞いてみたらどうだ?」

 アレクが提案した。


 そういえば、もう橙の月だもんな。

 まだ月の始めとは言え、考古学者達はこれから年末に向けて色々と忙しくなる。俺たちは事務に人を雇ったし、それほど忙しくない……筈だが。

「遺跡発掘チームは年末までにちゃんと決まった報告書とかを提出しないと来年の予算が承認されないか減額になるらしいから、確かに今ハラファや歴史学会に話を持っていくのは不味そうだな。

 シェイラに軽く相談して、年初の発表会の前後に誰に相談したらいいか、聞いてみるか」

 つうか、シェイラとかハラファの知識ってジャレットの部下の異文化研究が趣味な人とどのくらい違うんだろう?

 素人だってそれなりに趣味に金と時間をつぎ込めば色々と知識を身に付けられるからなぁ。

 それこそシェイラが今発掘している遺跡だって、元々は迷いの森と呼ばれていたのを遺跡好きな老魔術師が散歩がてらに色々と解明したから発見されたんだし。


「船長室とかから出てきた宝飾品や硬貨と酒を取り敢えずセビウス氏経由で査定後にオークションにでも出してもらって、この紙に関してはシェイラ経由で年初に歴史学会ってことで良いか。

 歴史学会の方であまり誰も何も知らない様だったら、ノルダスにちゃちゃっと遊びに行ってアチューラの婆さんにでも会って、考古学に詳しい人を教えてもらってもいいかも?

 あの婆さんだったらきっと顔が広いだろ」

 あの北国で、歴史を研究する人間がどのくらいいるかは知らんが。


「いやいやいや。冬にノルダスはないだろう。

 歴史学会に依頼して春まで何の進展もなかったらノルダスに行くことを考えても良いが」

 アレクが嫌そうな顔をした。


「確かに、真冬に北国へ行くのはちょっと避けたいね」

 シャルロも頷く。


「そんじゃあまあ、取り敢えず帰ったらシェイラに見せて相談して、本格的な相談は新年ってことにするか。

 もう少し本国に近づいたら通信機でセビウス氏に連絡して、港で会ってもらおうぜ」

 今回はそれ程量はないとはいえ、酒の壺とか瓶がそれなりな数なので、どこか倉庫を手配する必要はあるだろう。


「だな。

 というか、宝飾品はシェイラとかに見せなくていいのか?

 それなりに古いんだろうから、皆で一点ずつぐらい選んで家族や知り合いへのお土産にするのもありだぞ?」

 アレクがふと提案した。


「……見せたら喜ぶかもだが、プレゼントしても要らんって言われそうな気が?

 プレゼントするよりも、売り出す前に一度シェイラを連れてきて見せてもいいか?」

 換金価値や見た目重視で海賊が選んだせいか、宝飾品系はそれなりに派手なんだよね。

 シェイラの趣味に合うとは思えないが、歴史的観点からは一度見てみるぐらいはしたがるかも?





シェイラに派手な古臭い宝飾品をあげたら、バラして一つか二つだけ宝石をキープして自分の好みに加工させ、残りは発掘費用捻出の為に売っぱらっちゃいそうw

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― 新着の感想 ―
まあ、ウィル君朴念仁だからね、シカタナイネ(乾いた笑い)。 とはいえ、依頼する場所も四苦八苦ですな。 変に権威付けても大変なことになるだろうし、面倒やなぁ。 しかし何があるのかは気になるので、進展待ち…
効率云々は考えずに、先ず真っ先にシェイラに話さなきゃあダメなんだけどなあ これはいずれ振られることに...
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