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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1264/1294

1264 星暦558年 橙の月 3日 ちょっと寄り道(3)

「左前方に船っぽい塊を発見!

 でも……ちょっと小ぶりかも?」

 光球を左前方へ飛ばしたシャルロが声を上げた。

 順番に光球を飛ばしながらでっぱりを見て回ってきたが、昨日は結局二隻程交易船ぽいのを見つけたものの一隻は船倉に大きな穴が開いていてほぼ何も残っていなかったし、もう一隻は木箱がそこそこあったが中の物は海水に溶けたのか魚に食われたのか、泥っぽいボロボロな何かが残っていただけで回収できるような物はほぼ何もなかった。

 一応船長室に少量の金貨はあったけど。


 今日の午後にはパストン島に着きそうだと清早が言っていたから、この調子じゃあ今回は空振りかも。ちょっと帰りのコースを王都直行じゃなくて少し外れたところに方向を取って、西大陸沿いにもう少し沈没船探しをしないか、提案してみようかな?

 それこそ、水の補給施設を設置した島あたりまで行って、あそこから王都へ向かう途中に海底を探しても良いかも知れない。


 それはさておき。

「なんかこう、交易船にしてはしゅっとした形だな。

 新規航路を探すための船か?」

 近づいてみたら、塊は岩ではなく船なことが確認できたものにちょっと小さい。

 長距離交易用の船って胴体部分がそれなりにデブで、速度よりも積載量を重視している。遅い代わりにそこそこ安定性がよく、沢山積み荷を運べるようになっているんだがちょっとこっちの沈没船はスピード重視型かも?


「もしかしたら軍船かも?

 こんなところまで軍船が出てくるのは意外だが」

 アレクが言った。


 今ではアレグ島にアファル王国の海軍が駐在しているからそこそこ頻繁に軍船がパストン島周辺も航行しているが、昔は軍船がここら辺にくる理由なんてあまりなかっただろう。

 それなりに古そうなこの船は、俺たちがパストン島を見つけた後に沈んだようには見えない。


 まあ、船なんて出来立てのほやほや以外は沈む前からフジツボ?だっけ?が船底にそこそこへばりついているし、沈んだ後は海の生き物に住処にされるせいでどれも古そうに見えるから俺には年代の判断は難しいんだけどね。とは言え、流石にパストン島が見つかって数年でここまで船が海の住宅として利用されるほどボロボロにはならないんじゃないかな?


「もしかしたら、海賊船を討伐に来て逆襲されちゃったのかも?

 じゃなきゃ海賊船そのものだったり」

 シャルロがちょっとわくわくした感じで言った。


「パストン島かアレグ島を拠点にしていた海賊が居た可能性もあるか。

 だがパストン島にもアレグ島にも、人が住んでいた痕跡はなかったよな?」

 まあ、そこそこ暖かく、雨も定期的に降る島だから、数年したら木材で作った家とか桟橋とかは跡かたもなく消えちまうんだろうけど。


「少なくとも怪しげな財宝を見つけたという話は聞いていないな。

 アレグ島にあった場合は我々の方には話が流れてこないだろうが」

 アレクがちょっと首を傾げて応じる。


「あ~、そういえば海賊の隠された宝物の話は子供の頃に読む絵本なんかによく出て来たよね~。

 自分の家にしまうんじゃダメなの?って子供の頃に父上に聞いたら、絶対に中身を盗まれない金庫を入手するよりも誰にも見つからない場所に埋める方が楽だったからじゃないかって言われたんだよねぇ。

 結局海賊ってお互いの資産も奪い合う連中なんだなぁってもう少し大きくなってから気付いたけど」

 シャルロが笑いながら言った。


 確かにしっかりした金庫を船で運び込むよりも、誰にも見つからない場所に埋める方がいいだろうが、埋めた場所にちょくちょく行って中身を確認していたり、追加で入手した財宝を入れに行っていたらそのうち誰かにばれて盗まれてそうだ。


 それはさておき。

「考えてみたら、海賊って何を奪って拠点に持ち帰るんだ?

 宝石や金貨を集めても離島で食べる役には立たないから、船の整備とかノンビリ休むのには離島を拠点にしてもいいかもだが、奪った財宝を楽しむにはどこかの都市に行って使わなきゃだろう。

 そう考えると、別に宝石じゃなくても食料とか金属とか鉱石とか、何でも奪うのはよくでも拠点に持って帰ってもあまり役に立たないよな?」

 換金しやすさで言ったら金貨や宝石がいいだろうが、襲った船にある積み荷のほとんどが食材とか美術品とか皮や陶器とかだった場合、それを捨てるのかね?


「船ごと奪って積み荷も船も乗員も、全部丸ごとどこかヤバい街の裏社会の伝手経由で売るか身代金を請求していたんじゃないかな?

 最近は人身売買を禁じる国が増えたが、昔は露骨に街中で誘拐したんじゃない限り、借金奴隷だってことで適当な書類をでっちあげたら人身売買が普通に出来る国が多かったようだからな」

 アレクが言った。

 確かに。

 まあ、ヤバい組織に伝手さえあれば、それこそアファル王国ですら人身売買は今でもあるけどな。


 それはさておき。

「取り敢えず、船の船倉を漁ってみるか。

 東大陸の街で奪った積み荷や船を換金した後だったらそれこそ金貨とか蓄財効果の高い宝石とかがザクザクあるかも?」

 美術品とかの方が売り出すときの『いくらになるかな??』っていう楽しみは大きいんだけどね。


 というか、沈んでいる船が海賊船とは決まっていないけど。

 軍船だったらそれこそ錆びた武器程度しかなさそうだ。


軍艦の沈没船って実は一番得る物がないかも??

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― 新着の感想 ―
さて、何が出るかなぁ。 沈没船からお宝も出るけど、厄介なのも出るんだよなぁ。 (最近だと沈没船を巡って国家が領有権を主張した国際裁判まで起きているし) という訳で、今回も楽しませて頂きました。 次回…
何が見つかるのか楽しみです
昔の軍船は、食糧渡河を現地調達するために相当量の貨幣を運搬していましたので、沈没船発見できれば結構がっぽり儲かります。 交易船と違って、乗組員が多く物々交換できる交易品が無いので、現ナマオンリーでの…
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