表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1252/1289

1252 星暦558年 黄の月 25日 頼まれごと(15)

 さて。

 誰にその町長(?)が乗っている船の名前を聞くか。

 アホ娘のやっている行動が行き当たりばったりな割に、実際の拘束手段とか拘束した人間の管理に関してはそこそこまともで破綻していないことを考えると、誰かそれなりに有能な人間がどこかにいるんだと思う。

 そいつにでも、『交渉をさっさと始めて効率よくこの問題を終わらせるために、町長を呼んでくるから船の名前を教えてくれ』と言ったら教えてくれないかな?

 港の外に泊まっている帆のない異様な船(俺たちの屋敷船)の話が伝わっているなら、それなりに危機感を感じていないかと期待したいところなんだが。


 まあ、脅威を感じている時って押し方を間違えると大人しく言うことを聞くのではなく、死ぬなら諸共的なやけっぱちな攻撃に出てくることもあるからなぁ。

 微妙だ。

 そっと気配を消したまま、建物の外をふらふらと漂いながら何か都合のいい会話が聞こえないかと動いていたら、やがて女性の声が聞こえてきた。


『お父さんはいつ帰ってくるの??

 もうそろそろの筈よね?!』

 これが諸悪の根源のアホ娘かな?

 ちょっともうパニックし始めてる? 短絡的に、捕らえている人間を全員殺して船を沈めちまえとか言い出さないでくれよ??

 そっとダイニングルームっぽい部屋の窓の外に近づく。


『ヴァルパック号はもうそろそろ帰って来る筈です。

 きっと明日の朝の風にでも乗って現れますよ』

 比較的若そうな男の声が聞こえる。うんざりとした気持ちを辛うじて隠してるおざなり感が滲んでる。俺たちの船が現れてから繰り返し同じ事を言い聞かせているんかな?

 う~ん、男兄弟って感じではないな。

 家令とか執事っぽい感じかな?

 まあ、東大陸のしょぼい港町の町長の家に家令とか執事が居るのかは知らんが、取り敢えず名目的なトップであるアホ娘をなだめるぐらいな関係性がある立場らしいな。あいつが色々細かいことを手配しているんかね?


 どうせだったらもっと賢い爺さんでもいれば、アホ娘を良い感じに宥めすかしてアホな行動をとらないように上手くいなせたかも知れないのに。

 まあ、呪詛や毒が頻繁に使われる東大陸ではジジイになるまで長生きするのは難しいんかもな。


 どちらにせよ。

 めっちゃ運がいいことに目的の船の名前が分かったから、屋敷船に戻ってこのヴァルパック号を探しに行こうとシャルロとアレクに提案するか。


 ◆◆◆◆


「お帰り~。

 どうだった?」

 船に戻ったら甲板でのんびりと釣りをしているシャルロに迎えられた。


「フェンダイ達は町長の屋敷で眠らされてた。

 どうも、侵略的に拡大志向の強い近くの街のトップから押し込まれた婿をうっかり殺したか死なせたかしたこの港町の町長の娘が、パニックして父親が帰って来るまでその話が広まらないように、入港していたその近くの街の船とガヴァール号の船員を拘束したらしい。

 で、そこまでやっちまったから後から入港した船も同じことをやっているみたいだな」

 取り敢えず分かったことを伝える。


「うわ、迷惑~。

 完全にとばっちりじゃん」

 シャルロが顔をしかめた。


「だな。

 そんでもって仮死に近い状態に体の働きを遅くして睡眠薬の効果を強める呪器っぽい物でフェンダイや他の拘束された船の士官たちは町長邸で眠っているから、現時点では一応無事。

 フェンダイを起こして話をしてみたら、面倒だからその町長とやらの船をこの港まで引きずり戻して俺達の力を見せつけて、アファル王国は関係ないんだからさっさと解放しろと交渉しようと言われた」

 力を見せたら助けてくれと言われそうな気もするがな。


 まあ、縋りつかれても『知ったこっちゃね~』で薙ぎ払う予定だが。

 一応街のトップを張るだけの能力がある人間だったら、何とかうまい具合に対処できるだろ。

 出来なかったら諦めて、ゲルダルド(婿)がメイドと駆け落ちしたから探している間は皆を足止めしたが、奥地で獣に襲われて死んでいるのを見つけたとでもギルバース(父親)に報告して、慰謝料を払うなり傘下に入る約束をするなりで話をまとめればいい。


 他の大陸の人間の助けを得たところで、俺たちは直ぐに居なくなるのだ。

 長期的解決策にはなりえない。

 シャルロか俺がこの町に何年間か滞在して敵をすべて撃退するというのならまだしも、何といってもシャルロは結婚してアファル王国に奥さんがいるし、俺はシェイラがヴァルージャにいるしで、どちらもハニトラに引っ掛かるつもりはないからね。


「その町長が乗っているとやらの船はどこにいるんだ?」

 アレクが眉を顰めながら尋ねる。

「ヴァルパック号って名前の船で北からもうそろそろ帰ってくる予定らしい。

 取り敢えず空滑機グライダーで探しながら屋敷船で北進してみるか?」

 どっかで沈んでいないと良いけど。

 というか、信頼できない婿とアホな娘しかいないのに、町のトップが交易になんぞ出て行くなよ。


 何をやっているんだか。


めっちゃご都合主義な会話w

でもパニックしてる相手と1時間おきぐらいにやってそうだから、ウィルが耳にするのも必然かも?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>めっちゃご都合主義な会話w 壊れたレコードプレーヤーの様に同じフレーズを繰り返していそうですね そりゃあ答える方はうんざりでしょう
普通だったら娘を生贄に差し出して、街の安全を図るところですが。 多分そういう度量もない人間なんだろうなぁ。 (困ったことに、人道を考えなければベストの答えと言うか、共同体の長って家族よりも町の存続が第…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ