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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1234/1302

1234 星暦558年 黄の月 15日 脱走防止(14)

「あんまり子供を拘束することばかり考えるのもあれだからさ、拘束に関しては取り敢えずベルトに固定しやすい皮紐でも提供するだけにして、もっと悪戯をしない良い子を報いる形に工夫しない?」

 救命具のジャケットで空気で膨らますと身動きが取れなくなった試作品を探そうと工房の奥を漁ろうとそちらに向かった俺にシャルロが声を後ろから掛けてきた。


「報いるって?」

 ガキと言えば甘い物が好きそうだが、『脱走しなかったら飴やクッキーをあげる』というのは長期的に俺たちがどうこうできることじゃあない。

 大体、従うべき人間の言うことを聞いただけなのに褒美を貰えるのが当然になると、子供に間違った世の中の在り方を教え込む事になりかねない。

 大人になって社会に出たら、指導的立場にある上司や貴族の言うことを従ったら『褒美が貰える』のではなく、『クビになったり投獄されないで済む』と言うのが現実なのだ。変に世の中を舐めた子供を育て上げるのは親の為にもならないだろう。


「さっき言ったじゃん。

 宙に浮けたら子供が喜ぶって。

 それなりに魔石を消費しちゃうけど、脱走防止用の魔具で既にそれなりに魔石を使っているんだし、拘束結界を起動させないで済めば魔石の節約にもなるんだから、それこそ宙に浮いて空中遊泳をちょっと楽しめる魔具を作って、脱走した子は10日程とかそれで遊ばせてもらえないってことにしたら?」

 シャルロが提案する。


「遊び用の魔具なんてまず普通の場合だったら買わないだろうが、脱走防止用魔具と一緒に買えば割引しますって形で売りつけるのは……ありかも?」

 アレクがちょっと考えながら言った。


「毎日ガンガン使ったら魔石の消費がとんでもないことになるから、毎日順番にちょっとだけ空を飛べるってことにして、悪戯をしたり怒られることをしたら順番を飛ばされるって脅す形にすればいいかもな」

 子供を宙に浮かせるのにどのくらい魔力が必要なのか微妙に不明だが。


 つうか、単に宙に浮くだけで楽しいかね?


「まあ、宙に浮く魔具だったら高いところの掃除とか工事とかに役に立つかもだし、魔具として作ってみたらどこかに売れるかも知れないから、取り敢えず作ってみてどのくらい子供たちに喜ばれるか、試してみて良いんじゃないか?」

 アレクが提案する。


「そうだよね、高い場所での作業で足場から落ちて怪我する人って時々いるって聞くし、安全装置的にあっても悪くないかも?」

 シャルロが頷く。


「ついでに泥棒や夜這い目当ての男がどこぞの家の上層階に忍び込むのにも便利だぞ?」

 俺だって頼まれごとでどこぞの悪徳貴族とかの屋敷に忍び込んだり話を盗み聞きする場合なんかに浮遊レヴィアの術を使っているんだから。

 まあ、プロだったら自分の筋肉の力だけでもちゃんと大抵の屋敷の2~3階程度なら登れるが。


「そっか。

 それにあまり高くまで浮き上がって魔力切れでそのまま落ちたら危険だし、悪事に使われると困るから2階まで届かない程度の高さまでしか上がれにないようにした方がいいかもだね。

 それじゃあ工事とかでは使えないかもだけど、上がれないだけで降りる時の安全装置的に役に立てばそれはそれで良いかな?」

 シャルロが頷く。


浮遊レヴィアの魔具を何種類か作って、子供でも大人でも同じ高さまで上がれるタイプで、高さ制限を弄りにくいのを見極めてみようか」

 アレクが言った。


 確かに、子供が浮遊レヴィアの魔具で宙に浮いてどっかに登ったり上がったりした後で動けなくなった場合に、大人が助けに行けなかったら困るよな。

 体重に比例して浮ける高さが変動するタイプじゃないのにしないとだな。


「確か空滑機グライダーを作った時に幾つか浮遊レヴィア系の魔術回路を試したよな。

 短時間浮くだけだったら何とかなるようなオモチャにお手頃なのってあったっけ?」

 色々と問題があって苦労して工夫しまくった記憶はあるが、大分と前だから最初の頃の試行錯誤はイマイチ覚えていないな。


「流石にあの頃の試作品は大体処分してしまったが……魔術回路の写しはファイルしてある筈だから探せば見つかる。

 多分」

 アレクが言いながら工房の奥の方に来た。


「事務作業部屋に移してないんだっけ?」

 あっちに沢山書類を持ち込んだが。


「あちらは特許関連の資料や契約文書だけだ。

 魔術回路はこちらに残してある」

 そう言いながらアレクが奥の本棚のファイルを手に取って調べ始めた。


 見た目は整理されているけど、どういう順番に並べてあるのか分からないから俺が探すのは難しいなぁ。

 探し物をする際に色々と出して元にあったと思われる場所に適当に戻すといつも『違う!』って怒られるんだよね。


 最近では奥の本棚は基本的にアレクの管轄下って感じで俺たちはあまり弄らないようにしているんだけど、アレクの都合が悪い時でも探し物が出来るよう、一応どういう感じに整理整頓されているのか今度確認して分かりやすく手引書でも作るべきかも。





宙に浮かぶだけって楽しいですかね?

最初は大興奮でしょうが、そのうち飽きそう……

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― 新着の感想 ―
おっ採用ありがとうございます!
エアトランポリン(っていうのかな、空気で膨らませるアレ)みたいな遊具にした方がいいかも。 エリア区切ったり安全装置着けるなりしないと絶対に何か起こる。
こっちの世界に空中浮遊だけで億以上払う御仁が居るから、否定できないなぁ(苦笑)。 (ロケットや飛行機に乗って、数十秒や数分の無重力状態を楽しむのにそれくらい払う) そのうち飽きるけど、空中浮遊中に出来…
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