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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1233/1302

1233 星暦558年 黄の月 15日 脱走防止(13)

「これ、滅茶苦茶魔力を食うな!?!?」

 魔術院で魔力で拘束できる魔術回路を幾つか見つけたので試作品を作ってみたのだが、最初のはあっという間に中型魔石を枯渇させてしまった。

 マジか?!


「拘束結界ですらもっと魔力が保つのに、なんで人ひとり分を拘束するのにこんなに魔力を使うのか、不思議〜」

 机の上に固定した形で拘束していた人形が魔力が切れた際にうっかり魔具についていた鎖を引っ張られて倒れたのを拾ったシャルロが、不思議そうに試作品の魔術回路を覗き込んだ。


「魔石を急いで空にするような需要があったら人気が出そうだな」

 アレクが溜め息を吐きながら言った。


 魔石に急いで魔力を充填したいって需要はあっても、空にしたいって使い道はあまりないよなぁ。

 まあ、魔石に特殊な魔力を詰めたいなんて必要があったら魔力を抜く需要があるかも知れないが、世の中魔具に使っていて空になっちゃった魔石なら大量に転がっているのだ。

 魔力を抜くために魔具を使う必要なんてほぼないだろう。


 それはさておき。

「これだったら浮遊レヴィアの魔具でガキを宙に浮かせて歩き出せないようにした方がまだましだろ」

 宙に浮いていて足が地面についていなければ、魔術師以外ならばほぼ動けない。

 生垣沿いに手で体を引っ張って動かせるかもしれないが、たかが知れている距離しか動けないだろう。


「宙に浮くなんて子供が喜ぶことをしたら、ますます脱走しようとする子供が増えるよ。

 あの予防薬は1年に飲ませていい量は決まっているんだから、繰り返し脱走されたら罰がなくなっちゃって困るし」

 シャルロが指摘する。


 あ~。

 確かに子供って宙に浮くのが好きそうだよな。

 というか、空滑機グライダーを借りたがる人間の数が今になっても然程減っていないことを考えると、空に浮かびあがりたい人間って子供に限らず沢山いるようだし。

 俺たちだって浮くだけならまだしも空を自由に飛ぶのは楽しいからな。魔術師じゃないガキだったら浮くだけでも大興奮になりそうだ。


「取り敢えず、試作品第一号はダメだな。

 こっちはどうだ?」

 もう一つの試作品に魔力を籠めて、人形に縄ごと掛ける。

 が、先ほどは魔石が枯渇するまでは縄を引っ張っても人形が床に張り付いたかのように動かなかったのに、今回はあっさり宙を飛んで俺の手の中に引き寄せられた。

「あれ?

 動くぞ?」


「もしかして人間の動きを禁じるタイプなのかも?

 精神を縛る系だったら禁術になっちゃうけど」

 シャルロが眉を顰めて言う。


「遺跡や東大陸の蚤市場フリーマーケットで見つけた魔具ならまだしも、魔術院の特許記録の部屋にあったんだから流石に禁術系ではないだろう。

 体の動きを阻害するタイプじゃないか?」

 体を動かなくするのだって精神を縛るのと同じぐらい人間を拘束できると思うが、体を拘束するのは色々とやり方があるから禁術じゃないんだよな。


 鎖や縄で縛ったって動けないもんは動けないからな。精神だろうが魔力だろうが物理的な縄だろうが、自分の意思に反して動けない事に変わりは無いと思うんだが、法律上ではかなり扱いが違う。

 そこら辺は魔術院もかなり神経質に目を光らせているらしいから、自分のところで管理している特許資料に禁術系な精神を縛って拘束する魔術回路は無いだろう。


 という事で、試作品を今度はアレクに結び付けて、引っ張る。

 アレクが引っ張られた勢いのままに倒れた。


「うわっと!

 大丈夫か?」

 幸いソファに倒れこんだが、そこまで勢いよく引っ張ってないぞ??!!


 慌てて魔具を解除してアレクに聞いたら、手足をプラプラと振りながら答えた。

「凄いな。変な格好で座っていて痺れが悪化した時みたいに、全く感覚が無くて動かせなかった」


「へぇ?

 禁術じゃないってことは精神じゃなくて神経に干渉して動けないようにするのかな?

 それこそ歯医者に行きたくないって暴れる子供を担いで運び込む時なんかに便利そうだけど、流石に預かり所から逃げたところを捕まえた際に使うにはちょっと効果が大きすぎるかな?」

 シャルロが面白そうに自分の左手を拘束してみながら言う。


「動けないのは良いと思うが、確かに全く動けないとなると預かり所の職員が担いで動かさなきゃだから手間が増えそうだ。

 体が全然動かない感覚って中々怖そうだから脅し込みで良さげな気もするが」

 体が動かなくなるなんて、普通だったら経験しない感覚だからぎょっとするだろう。


「いや、流石にこれは下手をすると悪夢を見ちゃいそうだから、余程手におえないヤンチャな子じゃない限り、やめた方がいいと思うな」

 シャルロが反対した。

 アレクも頷いているからダメらしい。


「う~ん、だったらもう諦めて鎖でつないだ際に固定しやすい鍵でも提供するか?

 じゃなきゃ、それこそこないだの救命具のジャケットみたいので空気が膨れ上がって目の前が見えないし手足もろくに動かせないぐらいピチピチなのを作るとか」

 あの救命具を作っている際にジャケット全体に空気を入れたら、腕を曲げられなくて身動きが取れなくなったんだよなぁ。

 首も腕もろくに動かせないようにしたら逃げにくくないか?

 予防薬を飲むのも難しいかもだが。





子供の拘束って中々デリケートな問題ですよね

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― 新着の感想 ―
重力は難しいとして磁力とかはどうだろ。土の関係なら…
逃げない子には空を飛ばせてあげるけど 逃げた子ひ一ヶ月間空中遊泳禁止にするとか
というか、現代社会では介護現場も法令によって拘束禁止ですからねぇ。 (特例はあれど、障害者および高齢者の拘束は禁止……例外が沢山必要だけど) まだ倫理観で拘束が忌避されているだけで、法で禁止されてない…
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