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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1220/1302

1220 星暦558年 緑の月 30日 事務作業(26)

「で?

 3日ごとに変わる事務職員ってどんな感じ?」

 ちょっと書類作業が残っているというシェイラが遺跡にあるテントで作業をしているのを横でお茶を淹れながら見ていたら、シェイラが聞いてきた。


「まあ、俺らにとって事務職員を雇うのが初めてだし、職員3人組も今まで交代制でしか働いたことがないから、どこが違うとか不便だっていうのはお互い良く分からないかな。

 取り敢えずは今までの契約書類や集めたけど使わなかった魔術回路の古い特許資料とかの整理を頼んでいる。

 そのうち整理が終わってやることが減ったら、来てもらう日数を削るかも?」

 今まで開発関係の作業が忙しくてアレク的には完ぺきに諸々の資料や書類を整理できていなかったらしいから、それをやって貰うのと日常の費用の会計処理とか契約書類の準備とかで現時点では十分やる仕事はあるらしい。


 だけど整理作業が終わったら日常の書類作業はそこまでないんじゃないかな?


「う~ん、書類の整理って意外と終わりがないのよね~。

 どこかで見切りをつけて諦めるんじゃない限り、果てしなく続く可能性も高いわよ?」

 シェイラが指摘した。


「いやだって書類や資料には限りがあるんだ。

 終わらないってことはないだろ?」

 現実の話として、作業室の壁一面分弱しかないんだ。しかも天井までぎっしりでは無く、女性の肩程度までの高さだから、量は限られている。

 それの整理が果てしないってことは無いだろう。

 資料だって6年間の間に適当に増えていった分だけなんだし。


「いかに資料を効率的に、見つけやすく整理するかっていうのは理想を求めると果てしないのよ〜。

 まあ、大抵は忙しすぎてそんな理想は途中で捨てられることになるんだけど。ある意味、あなたたちじゃなくってお金で雇った事務職員にやらせるだけだったら幾らでも理想を求めてやり直しとか更なる工夫をとかって出来る訳でしょ?

 毎日来て作業してもらう支払いの資金が厳しいって状況にでもならない限り、色々と終わりなく工夫を重ねる事になると思うわね」

 シェイラが言った。


 まあ、工夫っていうのは確かに幾らでもやろうと思ったらやれるからな。

 というか、工夫を考え付いて、実際にやってみたら思っていたほどの効果がなかったから諦めて別の方法をやってみてと言った試行錯誤にも時間がかかるしな。

「なんか実感が籠っているけど、それってここの書類作業とかの話にも当てはまるのか?」


 基本的にシェイラの職務ってツァレスが投げ出している書類作業の後始末だ。

 追加として他の必要な消耗品の補給とか支払いとか報告とかの作業もやりつつ、自分が本当にやりたい発掘作業もやろうとしているから時間が全然足りていないんだと思うんだが。


「事務作業なんて、妥協と見切りをどこでつけるかが肝なのよ!

 完璧になんてやっていたら費用対効率が悪すぎるわ。

 書類や資料だって、無いって言えば諦める人も多いのに、下手にあったらこれもくれ、あれも欲しいって果てしなく要求が来る上に、下手をしたら『君のところは素晴らしい、他の発掘隊の手助けもしてくれないか』なんて言ってくるボケまで湧いてくるんだから」

 苛立たしげに書類をバシっと横に避けながらシェイラが言った。


「あ~。

 そこら辺の見極めが難しいんだな。

 シェイラだったら上手くやれるとは思うが」

 少なくともシェイラだったら、自分がやりたい発掘作業を犠牲にして他の発掘隊の書類作業の手伝いをするなんて言う話にはならないように上手くやるだろう。


 まあ、数年前にハラファのところの事務担当がやらかした時は手伝う羽目になったが。あれはハラファの事務職員が例外的なレベルで無能かつ自信過剰で野心的だったからだろう。


「そう、ついつい理想を求めたくなる自分を自制して、有能と言われつつも無駄な仕事が湧かないよう必要最低限を狙ってやっているというのに!

 どこぞのバカが!

 うっかり王都で命じられたことを忘れたりするから!!!

 休息日にまで尻拭いをする羽目になるのよ!!」

 うが~!!とシェイラが吠えた。


 おやま。

 ツァレスがやらかしたんだな。


 それこそ今回来た派遣事務員をこちらに寄越して手伝わせたら良いんじゃ無いかな~って気もするが、発掘隊は常時金欠状態だから、そういう事務職員を臨時で払うのも難しいんだろうなぁ。


「う~ん、それこそ王都にツァレスが行く際は常に携帯型通信機を持たせておいて、お偉いさんとかと話をする際にはシェイラが聞いておくとかしたらどうだ?

 そうすれば何か頼まれたのを常時把握できるだろ?」

 年に数回だったら俺のを貸し出しても良いぞ?

 俺とシェイラとの連絡用に一セット作って、俺のほうのをツァレスが王都に仕事で来る際に貸し出すって形にしたら、普段は俺がシェイラと連絡とりやすくなるし、ツァレスが何か命じられたらシェイラが把握できるしで、良いことづくめじゃないかな?




普段はきっちり休息日に休むシェイラですが、今回はツァレスのやらかしでどうしようも無かったようですw

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― 新着の感想 ―
そりゃ恨まれるわなぁ。 というか完璧な整理整頓なんて無いですから、どうしても工夫だらけになるわけで。 お疲れさまです。 という訳で、今回も楽しませて頂きました。 次回も楽しみにしております。
図書館情報学なんて学問の一分野が出来るぐらいてすからね 分類整理は奥が深いです
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