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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1216/1303

1216 星暦558年 緑の月 19日 事務作業(22)

「まあ、こんなところで良いかな?」

 壁紙を張り終えた新しいダイニングルームをアレクが見回しながら言った。


「暫くは食事の前に消臭の術を掛けなきゃだけど、大体これでいいよね。

 明日、ケレナと昼に食べにくるのが楽しみ~」

 シャルロが新しく付け替えた北側の窓から外を覗き込みながら言う。


 意外と北側は村の外れだから景色も良い。

 長閑な畑と野原が続く光景は自分がその中に居なくて済むなら、穏やかで悪くない。

 自分がその中に居ると虫とかが飛んでて穏やかじゃないことの方が多いんだけどな。


 前のリビングよりも少し大きくなったので、ついでにダイニングテーブルも少し大きくて良いのに買い替えた。

 6年前に卒業時に買ったダイニングテーブルはアレク経由で適当に入手してもらった中古品で、侯爵家の息子が使える位には良かったけど新米魔術師が使っても相応な程度の品質だったからね。


 壁紙も新しくちょっとお上品なのに変えた。これに関しては、糊が数日たっても臭いが残っているのは意外だ。

 魔術で一気に乾燥させようかとも思ったのだが、それをやると壁紙に変に皺が寄ったり、後から剝がれやすくなることもあるとアレクに言われたのでそのままにして、消臭の術を部屋に入る前に使うことにしている。

 多分1月ぐらいで臭いもなくなるらしい。


 ちなみにリビングのソファとかもついでに買い替えるかと言う提案もあったのだが、あれは適当にぐで~と寝転がるのにふさわしい草臥れ具合が居心地がいいんで、変えなかった。


 アレクも特に強くは押さなかったから、あれで良いと思っているんじゃないかね?

 俺みたいにソファに寝転がるところは見かけないが。

 誰もいなかったら寝転がってるのかな?

 今度こっそり清早の知り合いの精霊にでも覗き見してもらおうかなぁ。


 それはさておき。

 昇降機と伝声管もあっさり設置し終わり、デルニッヒ工房の職人たちも姿を消した。

 次の昇降機を設置する際に、あちらが使っている魔術回路の工房が魔具部分を作って設置するのを指導・確認する約束になっているし、何か不具合や不便な点があったら暫くは協力することになっている。親方がやる気になった試作品だったからか、俺たちの家の昇降機とダイニングルームの設置や改修はあっという間に終わった。

 とは言っても、共同開発を決めてから10日以上は掛ったんだが。


 普通に発注すると待ち時間を合わせると1月や2月かかっても不思議はないらしいので、どこかの注文が俺たちのとばっちりを食らって遅れてないと期待したいところだ。


「シェイラは今晩迎えに行くの?」

 シャルロが尋ねる。

 明日のダイニングルームの初お披露目昼食にはシェイラもついでに呼んであるのだ。


 普段だったら休息日はパディン夫人も休みなのだが、今回は明後日に休みをずらしてもらってケレナとシェイラも招いた昼食会の準備をお願いしている。


「おう。

 ここに泊まってもいいって言ったんだが、王都内にある部屋を確認したいからっていうんで、もう暫くしたら迎えに行って、王都で夕食を一緒に食べて明日の昼前に連れてくるよ。

 ついでに書類作業の部屋の間取りについてもちょっと相談してみようぜ」

 ツァレスや歴史学会で色々と書類作業を熟しまくっているから、シェイラに効率的な作業用としてあったら便利な家具とか設置位置とか、教えてもらえるかも知れない。


「そうだな。

 女性だとファイルの置き場所なんかで私と違う方がいい可能性もあるし」

 アレクが頷く。


「考えてみたら、浮遊レヴィアの術で手軽に重いファイルとか書類を下せないとなったら、ガンガン上の方に積み上げる形の棚は使いにくいか」

 俺たちに声を掛ければ直ぐに何でも出せるが、やっぱ一応上司である俺たちの仕事を邪魔して書類を取ってくれというのは言い難いだろう。


 というか、言い難くないにしても色々と意見を交わしている最中に邪魔されたくないし。


 後は適当な家具を書類作業室に入れれば、秘書替わりの事務作業要員が働けるようになる。

「そういえば、結局3人が交代で働くようになるんだっけ?

 キーナの他は名前と前職は何だったか、もう一度教えてくれ」

 一応軽く聞いた筈だが、微妙に覚えていない。


「まずは、ウィルが見つけてきた、領主だった男爵に無理やり愛人にされていた田舎出身だがやたらと数字に強いキーナ。

 もう一人は子供が神殿で遊びながら学ぶ年齢になったからもっと本格的に働きたいと希望を出してきたシェフィート商会の従業員の妻のピュリス。

 最後に、新しくシェフィート商会で働き始めたんだが接客よりも書類作業の方が得意っていうジュディナだな」

 アレクが言った。


「……考えてみたら、俺たちにとっては交代で何人か来てくれる方が誰かが病気になったりしたりしても引き継ぎに苦労しなくて助かるけど、なんだってウチに交代で来るんだ?

 普通に毎日働く方がよくないか?」

 ふと気になって尋ねる。

 俺たちにとって都合がいいことが、相手にとっていいとは限らない。


「ここ以外にもあと2か所ほど、シェフィート商会とつながりのある工房で書類作業に手伝いがいる場所へ3人を派遣することで話がついたんだ。

 下手にずっと同じ人を出すと引き抜かれたり、辞められた時に引き継ぎに関してもめたりするから、こういう3人で交代制というちょっと距離のある仕事の仕方の方がいいかもってことで試すことになった」

 アレクが答える。


 試すことになったって、上手くいかなくなったらやめるってことだよな?

 まあ、そうなったら普通にずっとここで働く事務職員を雇うか。


工事って準備の方が作業より長く掛かってる印象。

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― 新着の感想 ―
ウィルってシェイラにとっては アッシー兼メッシーなんじゃw
まあ、書類のクロスチェックは必須ですからねぇ。 (特に米国で有名騎手が自己破産したというニュースを聞いて、絶句した直後なので) 出来ればウィル君には波乱のない人生を……………無理かなぁ。 ともあれ、事…
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