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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目

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1208 星暦558年 緑の月 7日 事務作業(14)

 オレファーニ家の昇降機を作った工房は俺たちの提案した魔術回路に関して中々前向きな反応を示した。

 俺たちとの共同開発にするか、魔術回路や魔具部分を購入して自分たちが設置する昇降機に組み込む形にするか、購入するとして独占契約にするか等々、親方などと話し合う必要があると言う事で取り敢えず持ち帰って相談した後に後日交渉という事で数日後に再度話し合いと言う結論になった。


 と言う事で、今日はシェフィート商会経由で紹介された豪商などに昇降機を売り込んでいるもうちょっと一般向けな工房が来ているのだが……。


「酷いなこの仕組みは。

 もっと工夫しなきゃ重すぎて話にならんだろう」

「猫や子供が忍び込んだ時の警報?

 そんなもの、扉を閉める前に覗き込めばいいだけじゃないか」

「動かすのに魔石を使う、ねぇ。

 適当にそこら辺の下男にやらせればいいのに、魔具にするのって見栄以外に何か意味があるのか?」


 説明していた時は何も言わずに話を聞いていただけなのだが、何故か試作品を見せてから怒涛の駄目だしになった。


 どうも、上の滑車部分のお粗末さから俺たちは工房より下な存在だと見做されて、話を聞いた時には一応遠慮していた部分もすっかり消えてなくなったようだ。


「ふむ。

 つまり、我々のアイディアは実用性はないと言う事なのだね?」

 駄目だしが一通り終わった後に、アレクが冷静に確認を取った。


「まあ、此方の技術を購入してそちらの魔具と合わせて販売したいというのだったら工房の仕事の一つとして請け負っても構いませんが」

 営業担当の方が応じる。


 昇降機ぐらいに金額の大きな設備に関連する新規事業になるかも知れない話があると言うと職人だけでなく営業担当も来るものなのか、ここも2人組で来た。


 職人が怒涛の駄目だしをしているのに営業担当は止めようとする素振りを見せなかったから、二人とも俺たちの魔術回路や魔具的機能をそれ程良いとは思っていないようだ。


「そうですか。

 では、お帰り頂いて結構です。

 ちなみに最初に交わした機密保護の誓約は意図に反応する術なので、契約で明示していない方法で情報を他者に伝えて悪用しようとしてもペナルティが起きますから気を付けた方が良いですよ」

 アレクがあっさりと話を打ち切った。

 まあ、こっちを下に見て来る連中相手に交渉しても時間の無駄だよな。


「そう言えば、心臓が弱い人が誓約違反すると心臓麻痺で倒れたりすることがあるらしいから、本当に気を付けてね?

 まだ二人ともそれなりに若いからちょっとうっかり程度な間違いは胸が痛くなる程度で済むと思うけど、本気で情報を悪用しようとすると心臓が止まっちゃうこともあるから」

 シャルロが親切に注意を重ねる。


 ちなみに誓約魔術違反で起きた心臓麻痺は神殿の治療師や医者に見せてもあまり効果は無い。

 ただまあ、そこまで言うと相手が脅されていると受け取って俺たちの悪評を広めかねないから、何も言わないでおいた。


 営業担当の顔色がちょっと青かったのって、ぼろくそに俺たちの技術を叩いた上で買い叩くか、自分の知っている魔術師に同じような仕組みを作らせようとでも考えていたのかな?


 そそくさと二人組が帰った後に、俺たちは工房に戻ってお茶を飲むことにした。

 一応二人組が来た際にお茶とクッキーも出したが、あまり誰もそれを楽しむ雰囲気じゃなかったんだよなぁ。

 パディン夫人のクッキーは職人のおっさんが試作品を見に席を立った際にちゃっかり全部回収していたが。


「びっくりするほど態度が違ったね。

 やっぱどれだけ金持ちでも豪商向きには昇降機の魔具なんて需要が無いのかな?」

 シャルロが新しく出したクッキーに手を伸ばしながら言った。


「まあ、魔術師(われわれ)と対等に組んで販売する気はないという感じではあったな。

 それとなく潜在的顧客に興味があるか話を振ってみて、売れそうだったら自分のところで魔術師を雇って類似品を開発させるつもりだったのかも知れないね」

 アレクが茶葉をポットに入れながら応じる。


「ある意味豪商とかの方が後継者争いのライバルや頭の固い古参幹部に内部で毒を盛ったりってしそうだから、台所近辺へどこぞの馬の骨か知らない人間が近づくのを警戒しそうなもんだけど、やっぱ貴族の方がそう言う安全対策に対する意識が高いんかね?」

 経済力的にはそこまで大きく違いは無いような気がするが。


 というか、全体的な経済力で言ったら領地持ちの貴族の方が圧倒的に富んでいるだろうけど、比較的どうでも良い、目に見えない屋敷の設備に費やす資金力に関しては却って豪商の方が金があることも多いと思うんだけどな。


 貴族なんて、場合によっては先祖代々の骨董品を『歴史』って名前で誤魔化して何世代も回し使いしているところもあるのだ。

 成金趣味な豪商とかの方がよっぽど金払いは良い。


「まあ、取り敢えず昨日の工房の方が信頼も出来そうだったからな。

 あそこがどんな風にやりたいと言ってくるか、返事待ちで良いかな?」


「おう、その方が良いよな」

 別の工房を探すのも面倒そうだ。


領地のインフラ整備とか災害への備えとかで貴族のキャッシュフローは良心的なところほど渋かったりw

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― 新着の感想 ―
貴族相手じゃない商売人とのやり取りは 生き馬の目を抜くような油断出来なさですね 舐めると酷い目に会わせられる相手と分かってないあたり 二流以下っぽいですが
なんか横柄な方の工房、やらかしてぽっくり往きそうだなぁ。 (三人との軋轢ではなくどっかに恨まれてアサシンギルドとか、制約魔法ブッチして自爆とか) そうでなくても「あそこは金になるだろうから忍び込んでア…
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