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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1206/1302

1206 星暦558年 緑の月 6日 事務作業(12)

「昇降機の魔具化、ですか」

 やはり商談を持ち掛けるにも試作品を見て貰った方が良いだろうと言う事で、警報と昇降機能を完成したところでまずオレファーニ家の昇降機を設置した工房に俺たちの家に来て貰って話をした。

 ちょっと郊外で悪いけど、馬車の手配はこっちでしたから良いだろう。


 貴族の屋敷にある設備を扱っている工房なら、ある意味貴族の我儘には慣れているからちょっとした遠出も問題なくやってくれるらしいんだよね。

 それにちょっとぐらい設備の単価が高くなっても売れそうだし。


 まあ、反対に貴族の屋敷だったら下男が沢山いるから筋肉で動かしている部分を魔具化する必要がないとも言えるかもだけど。


「ああ。

 貴族の屋敷だから雇い入れる人間はそれなりに厳選した方が良いだろう?

 だとしたら単純作業で筋肉さえしっかりついていれば出来る作業とは言え、それこそ台所付近に出入りする必要がある人員を削れる魔具の機能はあって悪くないものではないかな?」

 アレクが頷きながら返す。


 そっか、部屋で食事を食べる場合とか、湯浴みをする場合の湯を持って行く場合でも、どちらにせよ台所近辺から持って行く必要がある。そう考えると貴族の屋敷でも昇降機は台所の傍に設置するよな。


 台所は下手をしたら毒殺とか食中毒とかで貴族に害を及ぼす原因になりかねない場所だから、そこへ近づける人間は誰でも良いという訳ではないのか。


 そうなると適当な下男を選んで昇降機を動かせば良いとはならないのかな?


「まあ、確かにそれは一理あるかも知れませんが……貴族様のお屋敷で昇降機を動かす人員が居なくて困ると言う話はあまり聞きませんよ?」

 職人と一緒に来た営業担当?の男があっさりとアレクの話をいなす。


「ついでに、猫とか子供が入っていたら警報が鳴るようになるから、子供が悪戯で中に隠れようとしたりした時に直ぐに見つかって良いと思うよ?」

 シャルロが付け足す。


「……そちらは有難いかも知れませんね。

 猫もですか?」

 何やら子供かペットの騒動で苦労したことがあるのか、営業担当の男がぐっと身を乗り出した。


「鼠にまで警報が鳴っては面倒なので、小型の猫サイズ以上の生き物が昇降機の空間に入ったら警報が鳴る仕組みを造り上げた。

 だから鼠ぐらい小さいような子猫だと引っかからないが、流石にそこまで小さな子猫は勝手に動き回らないだろう?」

 鼠ぐらい小さな子猫なんて、下手に踏んずけたら死んじまうから箱にでも入れて管理しているだろう、多分。


「ちょっとした試作品をベランダに設置したので、見てみないか?

 こちらとしては既存の昇降機を改造する形の共同開発、もしくはそちらへ技術を売り渡す形でも構わない」

 アレクが外を示した。


 今回のは既存の魔術回路に警報器の機能を組み合わせただけなので、革新的な技術はないってことで新しい特許申請は多分通らないだろうってアレクが言うんだよね。

 だからまあ、アイディアと造り上げた魔術回路を昇降機を作る工房に売るだけでも良いかな〜って感じ。警報器関連の特許は入るし。

 話を持って行った工房のどちらかがアイディアを独占したいって言ったらその分金を貰ってそちらだけに詳細を見せるし、どちらもアイディアだけを買うってだけで特に独占を求めなかったら両方にアイディアと魔術回路を売っても良いし。


「そうですね、是非」

 職人が頷いたので外に出て、東側に回った。


「昇降機の滑車部分はそちらの方がもっといいものを作れると思っているから、動かす機能は実際にはもっと良くなると考えてくれて良いだろう」

 アレクがそう言いながら、庭の試作品の扉を開け、バスケットに入れて待機して貰っていた隣の家の猫を昇降機の箱の中に入れる。


『プッププ~!』

 警報機の音が鳴った。


「この音はもっと大きくとか小さくとかしたいなら変更は可能だ」

 そう説明しつつ、扉を開けて猫を取り出し、バスケットの蓋を開けた。


 猫のお気に入りと言うおやつで釣ってバスケットに入れた後はのんびりと昼寝をしていたらしき猫が、警報音に目覚めたのか凄い勢いでバスケットから飛び出していった。


 まあ、いつも適当にそこら辺をうろついているから、機嫌が直ったら隣に戻るだろう。


 次に、ボタンを押して昇降機を上に動かして固定し、扉部分を開いて柱の中に覗き込む様な感じで手を伸ばしながら体を入れたら、俺の上半身半分ぐらいが入る前程度のところで警報音が鳴り始めた。


「手を差し入れたら直ぐに鳴ると言う訳ではないようだな?」

 職人が興味深げに横にやってきて腕を突っ込みながら言う。


「小柄な猫程度以上の生き物の心臓部分が範囲指定されている場所に入ると鳴る様になっている」

 アレクが答えた。


 それを聞いて職人のおっさんがグイッと身を乗り出したら、また警報音が鳴り出した。


「ふむ。

 中々面白い仕組みですね。

 ちなみに昇降機を動かすのにはどの程度の魔石が必要なんです?」

 営業担当が興味を強めたのか、聞いてきた。


 さて。

 これから交渉だな。


扉を閉めたら鳴るという設定は考えてみたら前回のテストで使ってなかったし、テストが面倒になるので止めましたw

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― 新着の感想 ―
魔獣化したネズミとかの検知器にも応用がききそうだな、今回の人感センサー。 とは言え、まずは売り抜けが第一かな? 各種応用品はパテントがザクザクになる程度だろうし。 というか基礎の肝だけ売り出して、あと…
異世界だから子猫並みに大きいGやネズミが……
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