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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1193/1304

1193 星暦558年 萌黄の月 18日 後輩から相談(10)

「私が部署に入って来たのを見て、お金を溜めたらサリエル商会の悪事だって事にして全部私へ擦り付ければ丁度良いと思って大々的にやり始めたんですって」


俺はほぼ部外者ってことで横領男の件があの捜査の後どうなったのか教えて貰えなかったが、数日後にパルティアがお礼にと言う事で昼食に誘ってきた。

で、今回も盗み聞き防止用魔具を使いながら真相(って程でも無いから、裏?)を教えて貰っている。


「大々的にってことは以前もやっていたのか?」

ちなみに、パルティアは告発者だった上に遅れていたら身代わりとして罪を着せられた可能性があり、何よりもサリエル商会の娘と言う事で今後も同じことを考える人間が出てくる可能性もあるからと言う事で、横領男の計画的な裏を教えて貰えたらしい。


「数年前に大きな嵐が来たじゃないですか?

あの時に古い街路樹が倒れて商業ギルドの建物の一部が破損したらしいんですよ。

そこが丁度1月も足らず前に固定化の術を掛けたばかりだったので、術のお蔭で破損が少なくて済んだと言われたらしいんです。ただ、それでもそれなりに漏水して色々と修繕費が掛かったんだそうで。

それを見て、防水塗装なんてしないで固定化だけで露骨に破損しないようにしておき、丁度よさげなタイミングで強風や嵐で木の枝や看板でも突っ込んできて建物が破損した形にすればバレないだろうと思いついたらしいです」


破損したら修理した後にもう一度防水塗装とかをし直す必要があるから、元々防水塗装が最近されていなかった事実は作業をした職人は分かるだろうが、それがわざわざ報告に上がる可能性はあまり高くないと考えると、確かに修繕を手配する部署が全部誤魔化せるよな。


「屋根部分の防水塗装が足りていなかった事を嵐で飛ばされてきた枝で誤魔化せるのか、微妙な気もするが。ああいうのって壁にぶつからないか?」

屋根の部分は風で瓦が飛ばされたことにするつもりだったんだろうか。


パルティアが頷いた。

「だから最初は屋根はちゃんと防水塗装して、壁の分だけ誤魔化して費用を削減した差額を着服していたらしいです。

でも特にそれで水漏れが酷くなったとかいう苦情が出てこなかった上に、私が入ってきたので防水塗装その物を全部なしにして、がっつり資金を横領してバレそうになったら私のせいだったってことにすればいいと思いついたらしいです」


なるほど。

防水塗装の作業自体をやらせたら塗る範囲が多少狭くなったところで削減できる費用はそれ程大きくないが、防水塗装その物を完全にやらなければかなり大きな金額を浮かせられる。


ただ、そうなると流石に見つからない可能性は低くなるから、そっちはバレそうになったらパルティアと言う評判が悪いサリエル商会の人間がいるからそいつのせいだって事にしてしまえばいいと思ったのか。


パルティアが辞めたら流石に横領を止めるつもりだったんだろうなぁ。

まあ、実際にその段階になったら余剰収入が無くなるのが我慢できなくて、なんだかんだ言い訳を自分にして続けた可能性も高そうだが。


「取り敢えず、パルティアの上司がやっていたのは確定。パルティアの無実と、不正を告発した貢献度も認めて貰えたんだな?」

商業ギルド内で不正を告発したら何かいい事があるのか、知らないが。


意外と表向きでは不正の告発は喜ばれても、裏では煩い面倒な奴と疎まれる可能性もあるからなぁ。


「ええ、ボーナスを貰えるそうです。

横領されていた額の1割を貰える決まりらしいですが、実際には横領されていた額で横領犯から取り返した分の1割なので幾らになるかは不明ですが」

パルティアが苦笑しながら言った。


「……残念ながら大した金額にはならないんじゃないかな?

あの横領男も愛人も、大して売って金になるような物は家になかったぞ」

他国にでも隠し財産を溜め込んでいて、それを回収できたって言うなら話は別だが……あの横領男は小説未満を書くのに忙しくてそこまで手間暇かけて蓄財はしていなかったんじゃないかなぁ。


「でしょうねぇ。

あそこは奥様の実家は中堅の商会なんですが、横領した金で愛人を囲っていたって分かった時点で離縁して息子を連れて実家に戻ってしまったらしいですから、そちらに賠償を要求しても拒否されるでしょうし」

パルティアが頷いた。


へぇぇ。

そうなんだ?

少なくとも息子に関しては『商業ギルドから横領した男の息子』ではなく『中堅どころの商会の出戻り娘の息子』ということで、何かを継げる可能性は余りないが少なくともお先真っ暗ではならないで済みそうだな。


「ま、無難に終わって良かったな。

今後も変な身代わりにさせられない様に常に注意を払っておく方が良さそうだが」

なんとも面倒そうだなあ。


まあ、そのうちサリエル商会の方に戻って兄貴の手伝いをするんだろう。

そうなるまでの我慢だな。

悪事に目を光らせる癖がついたら、実家の方で従業員が横領しようとか着服しようとか考えた時にすぐにわかって良いかも?

商業ギルドに内部監査部みたいのがあったら、今後は囮要員として欲しがられるかも?

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― 新着の感想 ―
(横領漢を凝視しながら) ………馬鹿じゃねぇかなと思ってたが、極めつけの馬鹿だったか。 同時にサリエル商会も「悪評」が跳ね返せる、丁度いいきっかけに。 まあ、ギルド全体に「不信感」が来るのでどっこいど…
サリエル商会って、これだけ悪名高いのに よく商売を続けていられますよね ある意味すごい
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