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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1186/1303

1186 星暦558年 萌黄の月 11日 後輩から相談(3)

「これ、昨日パルティアと行った食事処のクッキー。

ケーキも美味しかったけどそっちの持ち帰りはやっていないって言われたからサンプルに持ってきた」

いつもの朝食後の工房でのお茶で、昨日の食事処で買ってきたクッキーを提供した。


「悪くないね〜!

なんて言う店?」

早速一つ口に放り込んだシャルロが聞いてきた。


「キルギダーナとか言ったかな?

比較的商業ギルドに近くて客も多く入っている場所だったな」

昔アンディに連れて行って貰った高級レストランよりはお手頃な値段だったし味と見た目もある意味値段相応だったが、あの位の方が気軽に食事に行けて良さそうだ。


大体、高級レストランだったらドリアーナに頼み込んで予約を取る方が良いし。

自分の分だけだったら何か適当な魔具の試作品を持って行くなり、あっちに提供した魔具の修理・改造は必要ないか聞きに行って賄いを食べさせて貰えば更にお得だ。


「あ、キルギダーナって去年の始めぐらいに開いたところだよね?

最初からそれ程悪くなかったんだけど、別の店で修行していた息子が帰ってきたらさらに美味しくなったって噂だったんだけど、これは是非行ってみないとだね」

もう一つクッキーを手に取りながらシャルロが言った。


流石、よく知ってるねぇ。


「それで?

パルティアの相談事はなんだったんだ?」

自分もクッキーに手を伸ばしながらアレクが聞いてきた。


「なんか、どうもパルティア達商業ギルドで働いている魔術師ってギルドの施設や設備の固定化の術の掛け直しとか補強をやっていて、特に仕事が無かったらギルド会員の商家の仕事も請け負うことがあるらしいんだが、最近やたらとギルドの施設へ固定化の術を掛ける案件が増えたらしい。

で、良く見たらどうもちゃんと防水塗装とかをする代わりにパルティア達に固定化の術を掛けさせて、金をケチって上司たちが着服している気がするんだがどうしようって」

それなりに金勘定の専門家が集まった組織なんだから、それほど簡単に内部の人間が不正行為をして金を儲けられるのかは不明だが。


「ふむ。

魔術師が居る部署と、防水塗装を手配する為に塗料を買ったり作業員を雇ったりする部署が同じところなのかな?

だとしたら短期的には塗料を買う代わりに固定費で働かせている魔術師で誤魔化す方が資金を節約できるだろうね」

アレクがちょっと考えてから応じる。


「だが、パルティア達はギルド内の施設の仕事が無い時は外部の商会の仕事も請け負ってそちらからも収入があったというぞ?」

そっちがゼロになるんだから完全に儲けにはならないと思うが。


「外からの依頼があって仕事請けるのは大した収益にはならないんだろうな。

大掛かりな防水塗装のやり直しは足場を組んだり何日もかけて古い防水塗装を洗い落として新しいのを塗り直してってするのにかなりの人件費が掛かるから、それをやらないことでかなりの出費を抑えられる筈だ」

アレクが指摘した。


へぇぇ。防水塗装って前に塗ったのを洗い落とさなきゃいけないんだ??

前のが少しでも残っているんだったらその上に塗る方がちょっとは効果が増えそうな気がするが。


「ああ、あれって中途半端に前のが残っていると新しいのがしっかり全部に均等に塗れないらしいね~。

僕も領地の方で時々洗い落とすのを手伝ってた」

シャルロが付け足す。


まあ、王都全体を水洗いできる水精霊の加護があるのだ。

侯爵家の本館だとしてもあっさり洗い落としが出来るんだろうな。


「だけど、そんな手抜きをしていたらそのうちバレるだろ?

バレる前に商業ギルドを辞めるつもりなのか?」

だが、ギルドを辞めたとしても大抵の人間は実家が商家でギルドの一員だろうから、悪事がバレたらヤバいだろうに。


「大きな嵐が来た時にでも、想定外な損傷があったってことにしてその時に修理と合わせて防水塗装もやり直そうって提案して誤魔化すつもりなんじゃないか?

なんだったら風が強い時に適当に何本か木の枝でも折れて突っ込んでくるように細工しておくのもありだし」

アレクが指摘する。


「まあ、確かに夜中の嵐だったりしたらどの位風が強かったかなんて正確には分からないこともあるからな。

そうじゃなくても建物の傍の街路樹が病気や寄生虫で弱っていたってことにしたら他が倒れていないのにそこだけ被害を受けた理由になるだろうし」

想定通りな程よい被害がちゃんと出るかは知らんが。


実際に修理とかをしている人間には防水塗装が最近されていないってことがバレる可能性は高いと思うが、そこら辺は報告される立ち場の人間が関与していれば都合の悪い報告を握りつぶせる。


そう考えると悪くはない横領の仕方なのかも?


「じゃあ、使い込みか着服の二重帳簿を探すのを手伝ってって言われたの?」

シャルロが尋ねた。


「いや、それは自分で取り敢えず心眼サイトを活用して探しているんだとさ。それよりも、誰に報告したらいいか助言が欲しいんだって」

うっかり着服に加担している奴に報告したら却ってパルティアが濡れ衣を着せられて着服の犯人にされかねないと思ったんだろうなぁ。


その点、悪名高いサリエル商会に繋がりがあるっていうのは不利なんだろう。

他の魔術師たちは商業ギルド内部に余り伝手が無いだろうし。


「ふむ。

ちょっと両親と兄たちに相談してみるよ」

にやっと笑いながらアレクが言った。


おや~?

誰が着服しているのか、何か思い当たる節があるのかな?


なんかシェフィート商会のアンチな人たちが徐々に駆逐されてる……?

でもまあ、悪事に手を染めてなければ何もされないんだから、自業自得ですね!

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― 新着の感想 ―
>にやっと笑いながらアレクが言った おっ、これは商業ギルドを掌握するつもり?
まあ、自業自得な展開ですね。 シェフィート商会としては、「たまたま」魔術師を目指した三男がアイディア商売を初めて、それの支援をしているだけですし。 (アレク君の人徳で得た人脈と運だけで回ったようなもん…
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