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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
魔術学院3年目
118/1292

118 星暦551年 桃の月 19日 相談

乾燥機は出来あがった。

限られた日数の中では出来る限りのことをした。これで手助けするに値しないと魔具職人の方が思うのだったらそれはそれでしょうがない。


さて。

今度俺たちが悩んでいたのは、ガルバ村とノルデ村のどちらの職人に先に見せるか。


急いで造ったとは言え、この乾燥機だって俺たちの商品として特許登録してどこかに売りたい。だから情報の漏えいのリスクも考えて、『この人ならやっていける』と思える魔具職人が最初に見つかったらもう一人には見せない方が好ましい。


とは言え、最初のが『許容範囲内』で見せなかった方が実は理想的だなんてことになるかもしれない。

だから俺たちとしては最初に見せる方に理想的であって欲しいんだが・・・。


シャルロは両方の村に行ってさりげなくスタルノの教えてくれた魔具職人の話を近所の人に聞いてきた。

アレクはシェフィート商会のコネを使ってビジネス界の方での評判を集めてきた。


だけどねぇ。

評判って言うのは人の評価だ。

それだけで判断をするのはそれなりに難しい。

別にどちらも明らかに『不可』ではないし。


「ガルバ村のアスコトさんはねぇ、家族思いの凄くいい人らしいよ。仕事にも誠実で、よく困っている人のことも助けてくれる優しい人なんだって。

ノルデ村のダビーさんは頑固おやじタイプ?あまり近所づきあいはないし、奥さんは何年か前に死んじゃって、子供も成人してずっと前に西に行って帰ってこないらしいし。腕は凄くいいけど、時々人のことを怒鳴りつける怖い人らしい」

シャルロの報告にアレクが頷いた。


「私の方に聞こえてきた話も同じようなモノだな。アストコ氏の方が人当たりが柔らかく、他の職人や商人ともやりとりがあるから色んな噂や新しい技術のことにも詳しいらしい。

ダビー氏は魔具に対する熱意と拘りは人一倍だが人間づきあいはあまり好きではないらしい。最近は殆ど王都に姿もあらわさないそうだ」


人当たりがいい男と頑固おやじねぇ。

「俺としては頑固おやじの方がいいな。人当たりがいい『好かれやすい』人間と同等の評価を受けていると言うことは頑固親父の方が腕がいいと言うことじゃないか?」


アレクが少し考えてから頷いた。

「確かにそうだな。人当たりがいい人間というのは好かれやすいからプラスな印象を与えやすい」


「でも、家族がいる人の方が安心できない?」

シャルロが尋ねた。


「いや、家族はいない方がいい。本人がどれだけ誠実で信頼できる人間だとしても、家族が同じだけ信頼できる人間であるとは限らない。本人が何気なく夕食時にでも話した内容から情報を他へ売られる可能性があるし、もしもそんなことが起きた場合にも『優しい人』だったら仕事相手より家族を優先する可能性が高い」

そうじゃなくても何か本当に金になる発明を俺たちがした場合、それを狙った人間に家族が誘拐されて俺たちのアイディアを渡せと言う状況になる可能性だってある。


ま、現実的には多分そんなことないだろうけどさ。


シャルロが目を見張った。

「そんな考え方もあるんだね。思っても見なかったよ」


「私もあまり考えていなかったが、確かに下手に情報漏洩のルートがある人間より、一匹狼的な頑固おやじの方が良いかもしれない。

私たちだったら別に怒鳴りつけられたって気にしないし」


確かに。

一番人当たりが柔らかいシャルロですら怒鳴られようが脅されようが、見事にスル―するからな。


「じゃ、明日はまずダビー氏に会いに行こう。頑固すぎて話にならなかったらアスコト氏だ」




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