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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1175/1303

1175 星暦558年 翠の月 22日 海に落ちたら(17)

「これを身に着けて飛び込むのか・・・」


お洒落系の改造はまだ手を付けていないが、機能面では大体最終形になったと思われる救命用魔具を手に持ちながら、アレクがため息を吐いた。


今回は最終版が実際に海へ落ちた際の溺死防止に役に立つのかを確認する為にも、俺やシャルロ以外の人間が試す必要がある。


勿論、シェフィート商会経由で適当な船乗りに金を払ってそっちでも試してもらうつもりだし、最初のテストが上手く行ったらシェフィート商会の従業員にでも金持ちっぽい服装をして貰って沈没する船に乗った状況の真似もして貰う予定だが、先ずは普通に実用性があるのかを試さないとね。

誰しも海に落ちるのは嫌なのだ。

せめて試作品を試せる範囲までは試してないと、被験者に失礼だろう。


「一応人の助けなしでも身に付けられる筈だから、常時身に着けているのがどうしても嫌だったらハンドバッグにでも入れておいてヤバくなった時にパパっと纏うのもありだが・・・まあ、ヤバくなって慌てている時にちゃんと身に付けられるかどうかはそれなりに賭けだよなぁ」

アレクがもたもたしながら救命用魔具に頭や肩を通しているのを見ながらため息を吐く。


ペンダントトップもサスペンダーベルトの後ろと繋がる形にしてあるので、ちょっとどこに首を通すかが分かりにくいもののメイドとかの手助け無しでも正しい場所に正しい順番で体を通せば身にまとえる。

だけどやっぱそれなりに複雑っぽい感じにはなっているんだよなぁ。


ちゃんとベルト部分を締めれば救命用魔具が体から抜け落ちることは無い筈だが、パニック状態な時にちゃんとベルトまで締めるのを忘れずにいられるかは不明だ。


とは言え。

やはり見た目的にはドレスとかの上に身に着けているとちょっとどころでなく微妙なので、ハンドバッグに入れておいて自分一人で身に付けられるというのは俺たちのギリギリな妥協だ。


シェフィート商会の女性群がドレスの上からも身に纏えるぐらいお洒落にしてくれるのを期待したいところだな。


まあ、どちらにせよお洒落を命を落とす可能性よりも重視するという選択は本人の自由だからな。

ちゃんと商品の注意書きにはしっかり大きな文字で『平常時に落ち着いて使用説明書通りに身に着けておかなかった場合、非常時に上手く装着できなくても自己責任です』と大きく明記しておく予定だ。


「ここを通してこっちが前で・・・このベルトをここで締めるのか。

なんかちょっと緩い感じで微妙に心配だな」

ブツブツと一人で着用時のステップを口に出しながら救命用魔具を付け終わったアレクが、俺たちの方を振り返ってなんとも言い難い感想を述べてきた。


「もっときっちり体を締め付ける感じの方が安心感がある?」

シャルロが首を傾げながら尋ねる。


「なんかこう・・・案外と緩い感じだから海に落ちた時にあっさりずれて外れそうな気がするんだが、大丈夫かな?」

アレクがサスペンダー部分を上下に動かしながら言った。


確かにズボンに繋がっている訳ではないから、ベルトバックル部分でベルトを締めていても上下にはあっさり動くよな。


流石に肩を抜けて脱げてしまうという事は無い筈だが、ちゃんと想定した位置にクッションが膨らむか、言われてみると微妙に不安を感じるかも知れない。


人形を使って俺たちの工房の庭にある池で試した時は特に問題なく想定通りの場所に広がったんだが。


「まあ、あんまりピッタリしていると邪魔だったり下の服が引っ張られて撚れたりするかも知れないから、取り敢えずはそれでやってみて。

どうしてもダメそうだったらまた後で考えよう」

シャルロがさっさと飛び込めと言う感じに手を振りながらアレクに言う。


ちょっと冷たいんじゃね?

まあ、アレクが海に飛び込みたくなくてグダグダしている感じもあるからな。


「大丈夫、上手くいかなくて溺れそうになったら直ぐに助けるから安心して海に沈んでみてくれ!」

まあ、ちょっと海水を飲む羽目になるかもだけど絶対に死なせないからさ。


「はぁ。

実験は必要だしな。

では、行ってくる」

溜め息を吐きつつアレクが甲板の端により、海に飛び込んだ。


「考えてみたら、落ちた後に海上に浮かんでから船の注意を引くような笛でも一緒に付けておくべきかな?

誰にも気づかれなかったら沈まなくても助からないよね」

シャルロが海面を見ながらふと首を傾げて言った。


「ベルトバックルに入るぐらいのサイズでそれなりな音が鳴る警笛みたいのがあったらってとこかな?

それなりに海も煩いから、どの程度役に立つかを実際に試した方が良いだろうが」

アレクが飛び込んだ時の泡が静まってきた海面に、やがてぷくりと下から何かが浮かんできた。


お、アレクが浮かんできたかな?

考えてみたら、何度か誰か意識不明な状態で落とすのも実験すべきだろうけど、流石に頭を殴られて意識を刈り取られた状態で海に放り投げられる実験に合意してくれる人はいなさそうな気がする・・・。




眠らせる術を掛けて落とすにしても、海に落ちた瞬間に目覚めちゃいそうですしねぇ。

微妙にテストしにくそう

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― 新着の感想 ―
>シェフィート商会の従業員にでも金持ちっぽい服装をして貰って沈没する船に乗った状況の真似もして貰う予定 精霊の加護が無いと命の危険がありそう
そもそも意識が刈り取られた状態で落ちるってなると、事件性が疑われますしねぇ。 ………………軍に売り込むときに、無理やりテスト条項にぶち込んで試してみるとか(マテ)。 あるいは適当なかいぞ(ゲフンゲフン…
楽団の伝手で芸人とか雇えないものだろうか…まあ、そこまでするより適当に船乗りに任せれば良いか?
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