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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1170/1304

1170 星暦558年 翠の月 11日 海に落ちたら(12)

「うわ!」

傾いた甲板を滑り落ちない様にと縁に摑まっていたら、水面を割ったところで一気に海水が流れ込んできて、押し流された。


流されながらも少し先でもう一度甲板の縁を掴み自分がそれ以上落下するのを止めたが、横をシャルロが甲板を転がり落ちていくのが見えた。

楽しげに笑っているからいいが、あれで怖がっていたら何を頼まれていようと蒼流が落下を止めてそうだなぁ。


と言うか、斜めになった甲板を以前渡河用の魔具を試した時にやった山津波みたいな水の塊に上からぶつかられて流されているのに、楽しいんか??

俺はなんかちょっと怖いんだけど。


普段は川とか海に入る際に、水の力が俺の動きを邪魔しないように清早が介入してくれているんだなぁ。

水ってこんなに力が強いとは知らなかった。

これじゃあ沈没する船なんぞに乗っていたら、助からんだろ。


沈む前にさっさと海に飛び込んでそれなりに離れないとヤバい感じだ。

とは言え、沈むか沈まないか判断が付かない状況で慌てて海に飛び込むのも自殺行為だし、船乗りって言うのは状況判断が難しいんだな。


そんなことを考えている間に、完全にクリシファーナ号が海面下に沈んだ。


お蔭で上から流れて来る水はさっきみたいな怒涛の勢いではなくなったが、それでも海底へ沈んでいくクリシファーナ号の動きが水の流れにも影響するのか、下へ引っ張られる感じがする。


まあ、今回は大人しく引っ張られて動きが止まった場所で袋に空気が溜まるのにどのくらい時間が掛かるかを調べるんだから構わないが、これって実際に船が沈没するのに巻き込まれて何とか生き残ろうとしている場合だと、中々絶望的かも。


袋に空気が入り始めてそれがだんだん浮き上がろうとする力が生じているので、これがあったらなんとか海上まで浮き上がれるかもだが。


とは言え、船が沈む際の奔流で周囲の水が泡だらけで白く濁って殆ど何も見えない感じになっているから、落ち着いて泡の動いている方向を見極められないと、どっちに泳げば海面なのかも分かりにくいな。


マジで沈没する船と一緒に海に落ちちゃ駄目だな、これ。


船が傾いたらさっさと諦めて海に飛び込んでちょっと離れたところまで泳ぎ、もしもそのまま船が沈まずに何らかの理由で浮かび続けたらそっちに戻る感じにした方がまだマシそうだ。


甲板が傾いた船が沈まずにそのまま航海でいるかどうかは非常に怪しい所だと思うが。

もしかしたら、大型船で船倉が幾つもに分かれているタイプでそれぞれがしっかり防水仕様なら、その船倉のところに穴が開いて船が傾いても船全体が沈まないで済むかも?

傾いた船じゃあ滅茶苦茶動かしにくそうだけど。


あとは・・・陸地の傍とかで座礁した場合だったら船底に穴を開けた岩自体が船を支えてくれるの可能性もゼロでは無いかもだな。


でも、陸地に近いんだったらその陸地へ泳いでいく方が良さげだ。

夜中で何が起きているのか分からない状況だったらどっちに泳げばいいのかも分かり難そうだが。


まあ、船乗りって星の位置とかで方向が分かるんだよな?

だったら陸地の場所も分かるんだろう、きっと。


天候が悪くて星が見えなかったら中々絶望的そうだが。


そんなことを考えている間に、袋の中の空気が一杯になったのでシャルロの肩を叩いて袋を見せ、俺が先に浮上していると合図して清早に浮上させてくれるよう頼む。


「シャルロは?」

浮遊レヴィアで屋敷船の甲板に上がった俺にアレクが尋ねてくる。


「まだ袋が半分ぐらいしか膨れていなかったから、もう少しかかるんじゃないか?

浅い所ではシャルロがテストしている奴の方が良いけど、深いところだとこっちの方が空気を集められるっぽいな」

手許の袋を見ながら言う。


なんだって深い所ではこっちの方が早く空気を集めるんかね?

空気を集める有効範囲がこっちの魔術回路の方が広いのかな?

なんだったら両方の魔術回路を付けたら落ちただけの時と、深みに引き込まれた時との両方の状況に対応できそうだが・・・魔術回路を二つにしたら製造費が倍・・・とまでは行かなくても5割増しぐらいにはなるからなぁ。


中々悩ましい。

どうせだったら浅い所でも深い所でもどちらか一方が常に優れているって結果になってくれれば良かったのに。


面倒だ。


注:沈没する時の水の動きとかは想像の産物です

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― 新着の感想 ―
シャルロは生涯、命の危険とは無縁に生きていくのでしょうね 病気にもならなさそうだし
まあ、形状の問題はしょうがないとして。 とりあえず海が主目的ですが、海岸線での漁や釣り、後は渓流釣りの趣味がある貴族にも売りに行ってほしいですねぇ。 落ちたときもそうなんですが、ちょっとしたところで滑…
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