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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1155/1304

1155 星暦558年 青の月 25日 海底探索(10)

「考えてみたら・・・この船、相続問題が解決して新当主がこの船は我々の物だとはっきり認めるまでは引き上げない方が良いかも?」

王都の傍まで蒼流に運んで貰い、取り敢えず海底に置かれたクリシファーナ号を見ながらアレクが提案した。


朝食を食べ終わったら王都に行ってシャルロはオレファーニ侯爵家の王都別邸へ、アレクはシェフィート商会、セビウス氏はどこぞの情報通な知り合いの元へ、そして俺は俺なりに情報通な知り合い(盗賊ギルドの長)の所に行くことになっている。


まだ早朝なのでゆったり朝食を終わらせてから出ようと、甲板で最後に海底のちょっと神秘的な風景を楽しみながらのんびり食べている。


屋敷船が上にあると誰かから声を掛けられそうで面倒だし、海底から頭上を動く船の底や横を泳ぐ魚の姿を見れる様な風景は俺かシャルロが居なきゃ無理ってことで、今朝はセビウス氏が海底での朝食を希望したのだ。


「え、沈没船って新しかろうが一度沈めば中身だけじゃなくて船その物だって引き上げた人間の物なんだろ?」

クリシファーナ号を見つけた時にそう言っていたよな?


「法律と慣習的にはそうだが、馬鹿な人間はどこにもいるし、権利意識が強い貴族の嫡男なんぞは平民だったら自分の希望は当然聞き入れる物だと思ってごり押しをしてくる可能性が高い。

付きまとわれたら作業の邪魔だから、取り敢えずここに置いておく方が良いと私も思う」

セビウス氏がアレクに賛成した。


「まあ、そう言うバカって兄上が『弟に何か用かね?』って威圧したら黙る事が多いんだけど、態々そのために兄上に面倒を掛けるのも悪いし、確かに暫く放置で良いかも。

中もオークションとかかけるような面白い物は無かったし」

シャルロが頷きながら言った。


まあ、そうだな。

と言うか、この船その物もあまり要らないんだよなぁ。

俺たちは出かけるなら屋敷船を使うから。


「ちなみに、シェフィート商会でこの船を修理して使うか?

それとも売りに出して入った金貨を山分けする?」

貴族とかの当主が使う船としては作りはしっかりしているしそこそこ早く動きそうだから悪くない船だとは思うが、あまり交易に向いた船とも思えないんだよねぇ。


ちょっとした移動だったら転移門を使う方が効率的だろうし。

まあ、ノルダスへ金細工を買い付けに行くならこれでも悪くないのかもだが。


「・・・修理し終わった後に両親と長兄ホルザックに見せた方が良いだろうが、多分売って山分けじゃないかな?

シャルロの家族で誰か船を欲しがりそうな人はいないのか?」

アレクがシャルロに尋ねる。


「どうだろ?

特に船に乗るのが趣味って言う親戚が居たとは思わないけど・・・一応兄上と義姉上にでも聞いてみるね」

シャルロがちょっと首を傾げながら言った。


確かに遊びでどっかに船で出るって言うのだったら貴族の方がこういう船を使いたがるかな?


商家だったらやっぱ時間が早い転移門か、もっと船倉の大きな交易船を好みそうだ。


◆◆◆◆


「北国からのお土産です」

盗賊シーフギルドの酒場に寄り、長の居場所をそれとなく確認して忍び込んだら、まだ長が起きてのんびりとワインを飲んでいた。


朝食を食べ終わって、これから寝るところかな?

幾ら夜に行動することが多い盗賊シーフのまとめ役とは言え、長自身が外に仕事に行くことは無いんだから、もう少し早寝早起き・・・とまでは言わなくても、太陽とある程度は顔を合わせるような生活をすればいいのに。


「ほう?

中々腕がいい鍛冶師に出会えたようだな」

俺が渡したスヴァン作のナイフを手に取りながら長が言った。


「すっごく腕のいい婆さんに教わりながら、そこそこ腕のいい孫と一緒に久しぶりに剣やナイフを打ってきた」

ちょっと鍛冶の腕が上がった気がするから、もう少し家の炉を使って剣かナイフを鍛えようかな。

とは言え、実際に剣を使うような状況に陥らない様に常に気を付けているから、新しい剣を打っても溜まっていくばかりなんだよなぁ。

かと言って売りに出すのには微妙な出来栄えな気がするし。

スタルノに見習いの鍛えた剣ってことで割安で良いから売りに出してもらえないか、後でお土産を持って行く際に聞いてみるかな?


「腕利きの婆さんねぇ。

まだ大アチューラは生きていたのか」

長がナイフを見ながら感慨深げに言った。


うわぁ、あの婆さん、アファル王国まで名が知られているんだ??

暗殺アサッシンギルドだったらナイフの切れ味とかに拘る奴も多そうだから、知る人ぞ知る凄腕の鍛冶師の名前がこっちでも知られていても不思議はないが、盗賊シーフギルドの長まで知っているとは。


ちょっと意外だ。


「まだまだ元気そうだったぜ。

孫に昔からの裏通りの小さな店を、甥に大通りの比較的新しい店と客を押し付けて気楽に孫の店の店番をやっているようだったな。

ちなみに、帰路で沈没船を見つけたんだが・・・ケヴァール子爵家の当主争いってどうなっているのか、知っているか?

かなり怪しい状況で王宮側の遺言書が失われたって噂だが」

暗殺依頼が子爵とか甥に出ているのかも知りたいところなんだが。



イマイチ長への口調が定まらない・・・

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― 新着の感想 ―
お婆さん、世界的な有名人なんですね
まあ「知っている人は知っている」なんでしょうね、大アチューラ。 で、ケヴァール子爵本人が実はまだご存命トカ言う三段落ちまで警戒しておりますが。 ……実は仕留めそこねて、そのゴタゴタの真っ最中ってのが一…
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