1147 星暦558年 青の月 21日 海底探索(2)
屋敷船のすぐ傍まで近づく魚も居たので、折角だから打ったショートソードで串刺しに出来ないかと甲板の端に立ち、清早に空気の膜を出来るだけ甲板ぎりぎりまで近づけて貰う。
やっぱ水にぬれるよりは甲板から不都合なしに捕まえたいからね。
まあ、ショートソードを塩水に濡らすのはあまり良くは無いが、スヴァンの所で入手した鋼なのでそれなりに塩水に強いし、濡れても直ぐにしっかりふき取った後に手入れしておけば大丈夫な筈。
そんでもって剣での串刺しを何度かやってダメだったら一応銛もある筈だが・・・銛の方が重くて動きが鈍いと思うんだよなぁ。
もっと大きな魚ならまだしも、今見えている程度の魚だったらショートソードで素早く刺すのが一番だと思うのだが。
「は!」
好奇心を感じたのか船に寄ってきた魚に剣を突き刺・・・そうとする。
が。
外れた。
「水面で見える角度がちょっと変わるから、それを修正するか水の中に入って取るかした方が良いんじゃない?」
シャルロが指摘してきた。
おっと。
随分とシャルロにしては鋭い指摘だ。
シャルロも似たようなことをやろうとした経験があるのかな?
取り敢えず、ショートソードを水に突き刺してみて、剣の角度が変わっているのを確認する。
う~ん・・・これを調整しながら動く魚に突き刺すのは無理かな?
「と言うか、生け簀に入れるつもりなんじゃなかったのか?
だったら網でとらえた方が良いと思うが」
アレクが指摘する。
「・・・そうだった」
なんかこう、『獲る』という言葉だと釣るか刺すかって感じに頭が固まっていた。
剣を濡らしただけ損したな。
まあ、海の潮風(?)に晒されているんだからどちらにせよ定期的に手入れはした方が良いんだし、短時間だったから、大した事はない筈!
取り敢えず。
「釣りをした時に最後に魚を取り上げる時の網ってあるか?」
アレクに尋ねる。
そう言う道具のしまってある場所とかって多分補給とかをやったアレクが一番良く知っていると思うんだよね。
というか、アレクが知らなかったら誰も知らないかも。
それとも掃除をしているメイドが知っているか?
「ああ、そこの箱に釣りの道具と一緒に入っているぞ」
あっさり甲板にあった木箱を示された。
ちゃんとあったか。
と言うことで、網を手に、再度甲板の端へ。
そっと網を突っ込んでみるとやはり角度が曲がって見えるが・・・取り敢えず、魚が見えている方につつつっと近づけていき・・・ぶんっと振りまわして甲板へ叩き込む。
「うわ!
濡れた~~!!」
近くまで身に来ていたシャルロが飛び下がるが、どうやら水が掛かったらしい。
「あ、悪い。
逃げないようにと思って思い切り振りまわしたら水も入ってきたか」
というか、魚が完全に乾いちゃったら多分死ぬし、一気に乾かないように清早が調整してくれたのかな?
慌てて甲板でビチビチと暴れている魚を捕まえて臨時で造った生け簀(適当な木箱に防水の術を掛けたて海水を入れた物)に放り込む。
「これって適当に網を甲板から海水の中に突っ込んで固定しておいたら、勝手に何匹か魚が引っかかるんじゃない?
船はそこそこの速度で動いているんだし、魚が本気で暴れない限り逃げられないかも?」
シャルロが提案する。
まあ。
取り敢えず、もう2,3匹捕まえたら残りはそれでも良いかな?
どうせだったらもっと大きな網を袋状に引っ張るみたいにして魚を集めても良いが・・・考えてみたら、魚を獲りすぎて美味しいのだけ残して残りを開放するにしても数が多すぎると面倒か。
そんなことを考えて追加で2匹ほど生け簀に入れた後、網を甲板脇の水の中に出るように固定していたら・・・突然、大きな変な生き物が網に飛びつくように絡みついた。
「なんだあれ?!
魔物!!!!???」
海だと暗黒界から変な生き物が入ってきているのか??
グニャっとした足が何本も網に絡みつき、ギョロリとした目がこちらを恨みがましく睨んでいる。
慌てて術で倒そうかと魔力を練ろうとしたところでズロクナが落ち着いて口を挟んだ。
「それはタコという海の生き物です。
南の方出身の奴から聞いた話だと、中々美味しいらしいですよ」
食べるのか?!
あれを??
なんかこう、足が何本もあってそれぞれに変な白い丸いブツブツがついてそれが網に何重にも絡みついている感じになっているのに。
不気味過ぎる・・・。
そんでもって、どうやって網を解放すりゃ良いんだ?
これを食べるのはごめんだが、食べられると聞くと殺したら食べなきゃいけない気がして困るんだが。
ズロクナが食べてくれるかな?
沈没船より先に未知との遭遇w