1144 星暦558年 青の月 20日 遊ぼう!(31)
「う~ん・・・」
遺跡からの発掘物っぽい良く分からない石とか模様が付いているおんぼろな木片や割れた陶器の破片っぽいものが並んでいる露店の前で俺は唸っていた。
一応シェイラのお土産でハズレでも良いから幾つか発掘品っぽいのを持って行こうかとも思っていたんだが・・・。
「明らかにこれって単なるゴミだよな??」
横で覗き込んでいたアレクに囁き掛ける。
それこそ、古い家を廃棄する際に捨てられたゴミの中から遺跡から発掘しましたっぽい感じのを適当に拾ってきて、ここに広げているだけだろう。
どれにも魔術回路が無いし魔力も籠っていないので、心眼で偽物かどうかを見極められないが・・・明らかにゴミにしか俺には見えん。
「こう言っちゃあなんだけど・・・。
沈没船から見つかる壺とかはまだしも、地面の下から掘り起こされる遺跡の発掘物ってとんでもなく古いかも知れないけど要は一般家庭の生活ごみが多いんじゃないか?
だとしたら、ゴミが古いか否かの違いだけだから、私には見分けがつかないな」
アレクがちょっと申し訳なさそうに肩を竦めながら言った。
確かに。
割れた壺の破片なんて、突き詰めれば生活ごみだよな。
古いから過去の文明の解明に役に立つかもしれないが、割れた破片ゴミであることに変わりはない。
割れずに残った本当に古い物はそれこそどっかの貴族とか豪商の屋敷にでも家宝っぽい感じに飾られているだろう。
もしくは古すぎて野暮ったいと捨てられて割れているか。
『こういう物の古さって分かるか?』
清早にダメ元で尋ねる。
『う~ん、人間が壺を焼いて作るようになったのが比較的最近だからねぇ。
どれも新しいっちゃあ新しいね』
清早がのほほんと答えた。
なる程。
精霊の視点で見たら、どれもこれも新しいのか。
つうか、清早って人間が壺を焼く様になる前から存在するのか?!
悠久の時を生きてきたであろう蒼流はまだしも、子供っぽく見える清早はもっと若いかと思ってた。
「まあ、偽物に騙されるにしても。もう少し見た目が良いのにしよう」
普通の骨董品の方がまだ良いかも知れないが・・・見た目が悪くない本当の骨董品だと高いからなぁ。
つうか、そう言うのが蚤市場にあったらほぼ確実に贋作だろう。
まあ、シェイラには革の肩掛け鞄を買ったのだ。
遺跡出土品っぽい物はよっぽどうまく出来た偽物(か本物)が無い限り、無理に買わなくて良いか。
つうか、シェイラとか他の考古学バカってどうやって偽物と本物を見極めるんだろう?
自分で実際に掘り出したなら現場の様子から色々と推測出来るかもだが、それにしたってどの程度古いかは微妙な気がする。
まあ、ちゃんとした発掘現場だったら俺たちが手伝ってきた遺跡のようにマジで古い文明の遺物が残っているんだろうが。
「うわ、凄い良いじゃない、これ!!!
お父様のお土産に買って行かなきゃ!!」
そんなことを考えながら蚤市場を動き回っていたら、ケレナが何かとってもいい感じに彫られた熊の彫り物を見つけた。
細かい詳細はすり減って既に無くなっている感じだが、なんかこう、躍動感というか怖さと言うか、迫力がある。
同じ露店に鷹か何かの猛禽類っぽいのもあるし、昼寝している猫の彫り物もある。
どれも何か古い感じだが・・・同じ製作者が彫ったんだとしたら、よくぞまあ古いのを沢山集めたもんだね。
それとも昔の習慣で皆が造っていた民芸品っぽい骨董品かな?
これだったらシェイラへの追加お土産に良いかも?
古さなんぞ分からんが、腕は良い感じがする。
「これって同じ作者が造った彫り物なの?
凄く良い感じだけど、どれもそこそこ古いよね?」
シャルロもそこら辺に疑問を感じたのか、露店の爺さんに尋ねている。
「これらは僻地の集落の連中が冬の間に彫る奴じゃ。
ずっと昔から、吹雪の中に出ていけないようなジジババが子供たちに彫り方を教えて、春になったら街に持って来て売るのを続けて来ている。だからそれぞれの家系の特徴はあるが街のもんには違いはイマイチ判らんのじゃよ」
爺さんが答えた。
へぇぇ。
家系ごとの特徴なんてあるのか。
街の人間には分からないってことは単純に熊の家系とか猫の家系とかって訳じゃあないよな?
ちょっと歴史があって良さそうだし、可愛いのや迫力があるのとかもあって中々良い。
もっと詳しく分かったら更に良いが、それを調べるために来てみたらどうだってシェイラをいつかノルダスへ来るよう誘うのにも良いかも?
俺が婆さんやスヴァンと剣を打っている間に、シェイラが彫り物の歴史を調べたら丁度いい。
とは言え。
シェイラが好きな動物って何だろう?
犬か、猫か、馬か、鳥か。
・・・掴みを間違えると困るな。でも何か動物が好きか、特に話し合った記憶が無いんだが。
どうしよう。
スコットランドの家紋的タータン柄の木彫り版?!




