1140 星暦558年 青の月 18日 遊ぼう!(27)
「で、今日は剣を打ったの?」
スヴァンに紹介された食事処に夕食の為に集まったら、色々と買った物を見せられた後にシャルロに聞かれた。
「殆どの時間はスヴァンの剣を打つのを手伝っていたが、その後にちょっと自分のショートソードを打たせてもらった」
魔剣にするならば魔術回路を刻み込みやすいロングソードかブロードソードの方がいいのだが、俺個人が使うとなったらショートソードぐらいの方が使いやすいからな。
どちらにせよまだ剣を打つ腕も微妙なので、練習として実用的なショートソードを打ちたいと言ったのだ。
「へぇぇ、後で見せてくれ」
セビウス氏が興味深げに聞いてきた。
「まだ研いでいないし握りとかも全然手を掛けていないから、早くて明日だな。
まあ、出来上がったら見せるよ。
時間を掛けられないから大雑把に色々習いながらってところになるが」
スヴァンが打った普通のナイフですら絶妙な装飾がさり気なく邪魔にならない場所に施されているあのセンスの良さは俺にはどう考えても無理だと思うが、取り敢えず教えて貰える分は教わっておきたい。
俺みたいのが実際に剣で身を守らなきゃいけない羽目になるような状況に陥ったらもう終わってるんじゃね??という気がするから、ショートソードを打ったところでそれを身に着けて動き回るなんてことはほぼ無いとは思う。
だが何かの間違いで戦場に借り出されるようになった場合は流石にナイフだけではなく、ショートソードぐらいは腰に下げておく方が良い。
そうでなくても体に合ったショートソードをどうやって打つのか、コツを教わるのは役にたつ。
スタルノの鍛冶スタイルは基本的に思うように好きに作ったのを適当に店に置き、それを気に入った人間が買うという形なので、振るう人間に合わせて剣を作るという視点は無い。
使用者に密着したスヴァン達のやり方だと、どの剣が誰に合うかを見極めて売るし、場合によっては注文されて打つこともあるので身体に合わせて打つ際の注意点とかをちょくちょく教えて貰えた。
筋力に関してはハンマーを振るっている時に見極めていたらしいが、俺のショートソードを打ち始める前に身体の可動域とか、実際の腕の長さや身長などをしっかりと測れと言われ、それを参照にしてショートソードの長さやバランスに関してもちょくちょくと助言されたのだ。
まだ研いでいないし握りの加工もしていないが、確かに振るってみたら今まで授業や模擬戦で適当に借りて使ったショートソードよりも明らかに振るい易かったのは、流石だよなぁ。
「アレクとシャルロ達は何か面白いものは見つけたか?」
商品だけに限らず、一応観光に来たのだから何か面白い見ものを見つけたのだったら俺も後で寄ってみたいかも。
「毛皮とか、木彫りのオモチャとか、寄木細工とか金細工とか、色々とあって面白かったね。
食事に関しては・・・昼食に適当に入った店は少し外れだったけど」
楽し気に話していたシャルロの顔がちょっと微妙に顰められたが、直ぐに元に戻って色々な細工に関して話始めた。
「そう言えば、蚤市場もあったわよ?
シェイラへのお土産用に、覗いてみても良いんじゃない?」
ケレナがふと口にした。
「へぇぇ?
何か骨董品っぽいのとか遺跡からの流出品みたいのもあった?」
こんなに寒い地域に遺跡が出来る程古い時代に誰かが住んでいたのか知らんが。
まあ、それこそ誰かが精霊の加護を貰えたらそれなりに色々と融通は利くし、そうじゃなくても別に今の技術レベルと過去がそこまで違うとは限らない。
というか、遺跡として発掘できるほどの何かを造り上げた文明って大抵現代には無い魔法技術とかを持っているっぽい気がする。
そう言う技術が無い文明も当然あったんだろうが、そう言うのは廃れた後に何も残らなかったんだろうなぁ。
何か遺跡や古い骨董品があったら、それこそ防寒に飛び切りな効果のある魔術回路でも残っているかも?
南の方で発掘作業をしているシェイラには実用性はないけど、古い物だったら喜びそうだよな。
「う~ん、自国の蚤市場でも薄汚れた中古品なのか骨董品なのか、見分けるのは難しいからねぇ。
他国の市場じゃあそこら辺は完全に運次第じゃない?」
ケレナがちょっと考えてから肩を竦めた。
確かに。
まあ、骨董品だって要は滅茶苦茶古い中古品ってだけだもんな。
取り敢えず、帰る前に一度その蚤市場に行ってみよう。
偽物を掴まされてもそれはそれで笑い話になるさ。
考古学者だったら偽物は全て回避できるんですかね?
よく出来た偽造品って目だけで見分けられるのか・・・