114 星暦551年 桃の月 9日 ビジネスモデル(?)
「とりあえず、幾つかはシェフィート家の方でもあったら便利だと思う商品は既にある。これを開発してもいいし、我々の誰かが作りたいと思う商品を開発して売り込んでもいい。
基本的に商品を開発したら買い取りとしてそれなりの金額を貰い、後は総売り上げに対して1%程度の手数料を貰うと言う感じのことを考えている。まあ、売り込みの場合は交渉次第だろうが」
アレクが簡単に説明を始めた。
「リタイアした魔具職人にお金を払って少しアドバイスしてもらうのもいいんじゃないかと思うんだ。僕たちって実際の製造っていうのはやったことないから、造りやすい構造とかコツとかって知らないし」
シャルロが付け加える。
「実際の作業としては共同で金を出してどこかに工房を建ててそこを活動拠点にする。帳簿をつけたりするのは月ごとに当番を決めた方が変に情報が偏らなくっていいと思う」
とアレクがまとめた。
「その工房さ、ちょっと余分なスペースを取っておいてそこに俺が住んでもいいかな?どうせ寮は出なくちゃならないんだし」
どこかに部屋を借りるつもりだったんだが、どうせ工房を借りてそこにそれなりの防犯魔術をかけるのだったらついでに自分も住んでしまった方が楽だ。
「あ、だったら僕もそこに住みたいな」
意外なことをシャルロが言ってきた。
「あれ、シャルロって王都に家があるんじゃなかったの?」
ぷうっとシャルロの頬が膨れた。
「何言っているの、あれは実家のモノじゃない。折角独り立ちするのに親の家にいつまでも住んでいるっておかしいでしょ」
アレクが小さく笑った。
「いや、目が届くところに住んでくれる方が家族としては有難いと思うが・・・私もついでに部屋をそこに持とうかな。実家に戻る時もあると思うが、自分の場所があると言うのは良さそうだ」
と言うことで工房はただ単に働くだけでなく、俺たちが住むところになってしまった。
どこにするか。
「倉庫街が一番経済的だぜ?」
「もう少し空気が奇麗なところがいいな。第一、ラフェーンが気軽に動けるような場所がいいし」
「そうだね~。アルフォンス君ももうちょっと森に近いところの方が良いだろうし」
・・・。
田舎に住むのは嫌だが、確かにちょっと郊外の方がアスカも喜びそうだ。
都心の土は不味いらしく、それなりに毎日遠出しているようだし。
「じゃあ、王都から1刻程度馬で行ったところで、腕が良くって信頼ができるアドバイスをくれるような魔具職人が住んでいて、美味しい飯屋が傍にあるような場所?」
「・・・飯屋?」
シャルロが不思議そうに尋ねた。
「家事は近所の主婦でも雇うとしても、それなりに外食しなくっちゃ食生活は寂しくなると思うぞ?」
ぽんっとアレクが手を打ち合わせた。
「そうか、食事を作ってもらわなければいけないんだっけ」
「俺は自分が作った料理を毎日食べるのなんて、嫌だぜ。プロの料理人を雇うほどのことが無いとするなら、それなりに美味しい飯屋が傍にないとな」
まあこいつらの場合、実家に戻れば超一流の料理人が用意した食事が出るんだろうが。
というか、別に飯屋が傍になくっても王都まで出てくれば美味しい店は幾らでもあるんだけどね。
ただ、仕事に集中している時に往復2刻もかけて食事を取りに行く手間を取りたくないだろう。
「職人に関しては・・・スタルノに聞いてみるか。それなりに魔具職人の知り合いも多いみたいだから心当たりがあるかもしれない」
「アドバイスを聞くだけだったら直ぐそばに住む必要は無い。王都近辺で良さげな場所が無いか、調べておくよ」
「僕も蒼流とどこら辺の水が美味しいか調べておくね」
・・・まあ、水が美味しいところは食べ物もおいしいだろう、きっと。