1130 星暦558年 青の月 18日 遊ぼう!(17)
「取り敢えず、街の中歩き回ってみる?」
シャルロが朝食を食べながら聞いてきた。
「俺は一度商業ギルドにでも行って鍛冶師の纏まっている地区か、多数の鍛冶師が造った剣が売られている店を教えて貰いたいかな」
お洒落な生地とか金細工とかだったら適当に大通りを歩いても売っている店を見かけるだろうが、剣を作る様な鍛冶師っていうのは特定な業種の人間しか日常的には用が無いからちょっと奥まった人通りが少ない所にあることが多いんだよな。
それを始めて訪れた見知らぬ街で探すのはちょっと大変そうだ。
「まずは持ってきた商品の一部を売り払って幾らになるか確認したいし、ある程度の現地通貨を入手したいから私も商業ギルドに行くよ。
シャルロ達はふらっと歩き回りたいなら別行動でも良いぞ?」
アレクが応じる。
まあなぁ。
シャルロとケレナはふらふらと異国の街を歩き回って新しい発見を楽しめればいいだけだから、却って商業ギルドで目的地なんぞ聞かずに効率性を無視して動く方が楽しめるんじゃないか?
数日回っても満足できるほど興味を引かれるものが見つからなかったら商業ギルドで色々聞いてみても良いのだし。
「そうだね、じゃあ別行動しようか。
でも、昼食は一緒の方が良いかも?
アレクが商業ギルドで適当にお勧めされる店を聞いておいてよ。
で、通信機で連絡してくれたらそこで会おう」
シャルロが言った。
危険な地域が分からん異国で若い妻を連れて歩くなんて危ない気もするが、まあシャルロだからな。
魔術師ってことで自己防衛能力はそれなりにあるし、ケレナも体を動かすのは得意だしスリとかを撃退するのはシャルロより得意だ。
何よりも、実際に害が及びそうになったら蒼流が対処するからね。
つまり、実質シャルロ達が安全に歩けない場所なんて存在しないから、別行動でも大丈夫だろう。
ある意味、シャルロと別行動していて、俺と別れた後のアレクが一番危ないかも?
今日はセビウス氏も同行するのかな?
セビウス氏に戦闘能力があるのかは微妙に不明だが、少なくとも危険な地域を察知する能力はきっと人一倍鋭いと思う。
「取り敢えず、商業ギルドまでは私も同行させてもらおうかな。
個人的に持ち込んだ商品も幾つかあるし」
セビウス氏が言った。
う~ん、昼食までは同行しそうだが、その後は分かれそう?
護衛兼道案内を雇うか、シャルロと一緒に動く様、アレクに言おうかな。
まあ、街の中を歩き回ってみて治安が悪くなさそうだったらそこまで神経質にならなくても良いだろうが。
確か、北国って寒くて生きるのが難しいからこそそれなりに仲間意識が強くて、社会からの脱落者が居ない(というか脱落したら死ぬからもっと暖かい地方へ逃げていくんだろうな)と聞いた気がするから、安全かもだし。
・・・考えてみたら、パディン夫人とかメイドの子の護衛も雇う必要あるのかな??
「取り敢えず、見知らぬ王都を歩き回っても安全なのか分かるまで、パディン夫人達はズロクナと一緒に行動してもらうべきかな?
それとも護衛とか、雇うべきだと思うか?」
ちょっと小声で相談する。
「あ~。
荷物持ちってことで道案内役を兼ねたそれなりに信頼できる人間を港の役人に紹介してもらうと良いかも知れないな。
連中だって他国から来た人間が行方不明になって大騒ぎになったら面倒だろうし」
アレクが提案する。
なる程。
役人の知り合いとか顔見知りを紹介させればもしもの時に追求しやすいな。
パディン夫人の血はずっと昔に清早が採取しているから夫人に何かあったら探せるんだけど、考えてみたらメイドの子とズロクナに関しても一滴血を貰っておいた方が良いかも?
「それが良いね!
やっぱ田舎の港町と、王都じゃあ街の大きさも人口も違うから、ある程度は用心した方が良さそうだよね」
シャルロが頷く。
そんじゃあまあ、出かけようか。
ウィルは心配してるけど、アレクはそれなりに新しい街に来た際の危機管理は出来ますw