1126 星暦558年 青の月 17日 遊ぼう!(13)
ケレナの知り合いの領主から勧められたとか言う食事処は、ニシンが売りらしかった。
鶏肉や卵料理も一応あったが、メニューの殆どはニシン。
煮込んだのや塩焼き、フライパンでそのまま焼いたのとか、小麦粉をまぶして焼いたのとか、パン粉をまぶして油で揚げたのとか、燻製にトマトのソースをかけたのとか、やたらと色々な種類があった。
しかも全部の料理方法にも決まった名称があるんだから、感心しちまう。
まあ、説明されないと俺には料理方法の詳細なんて食べても分からんけど。
取り敢えず俺は揚げたニシンを食べた。一緒に出た芋を揚げたのとも合っていて、中々美味しかった。
シャルロは塩焼きを注文して、小麦粉でまぶして焼いたのを頼んだケレナと半分こしていた。アレクは煮込んだニシンを試していた。
セビウス氏は燻製のニシンにソースをかけたのを頼んでいたな。
どれもそれなりに美味しそうだったが・・・ある意味、どこの店に行ってもニシンが出るんだとしたら、そのうち飽きそうだ。
まあ、ここだって鶏肉の料理があるんだから、一応他の肉類もあるっちゃああるんだろうが・・・ちょっと割高だったから、この町では日常生活のおかずはニシンになる可能性が高そうだ。
まあ、それはさておき。
ニシンを満喫した俺たちは船に戻り、出発。
朝起きた時に朝食を食べながら船を停め、その間にズロクナが位置を測定して海図と照らし合わせて現在地を計算していた。
普通の船だったら夜は座礁を警戒して停泊するんだが、俺らの船はその心配はないからな。
がっつり進んだのでもう隣国かその先に居ても不思議は無いが・・・どうなんだろ?
地図を見たところだと隣国って海に面している範囲が比較的狭いんだよな。
チャールトンの北側にある山脈の向こう側から比較的大きな川が海に流れ込んでいる河口の南側までが隣国で、その向こうはまた別の国になっている。
確かデメナータとか言う隣国は、本来は内陸の農業国だったのを何とか海を使った交易をする為に無理やり元々アファル王国の隣にあったキャルギスとか言う国から海沿いの土地を一部奪い取ったと歴史では習った・・・と思う。
デメナータは塩害のせいであまり農作物の収穫が良くないキャルギスの食糧供給のかなりの部分を握っていたので、根気よく金を溜めて戦争をするだけの武器を買いためた後はがっつり港を一つ確保して、手放さなかったらしい。
キャルギスとしては未だにその件を恨んでいるらしい。
とは言え、船乗りが多い国で内陸国との戦争には向いていない国民性な為、結局食糧取引の条件を多少有利にすることで港町の一つを諦めたとの話だった。
「で、今はどこら辺にいるのかな?」
朝食を食べ終わり、ノンビリお茶を飲みながら海岸線や海原を眺めていたシャルロが甲板に立って色々と測ったり計算したりしていたズロクナに尋ねる。
「デメナータは通り過ぎてしまったようですね。
この調子だったら今晩にもノルダスに着くかも?」
あり得んだろう!と言いたげな顔でズロクナが言った。
一応その位の進捗になるかも~?と王都を出る際に言っていたのだが、半信半疑どころか殆ど信じていなかったらしい。
パストン島に行く時だってぶっ飛ばしているんだから、いい加減慣れれば良いのに。
「夜にノルダスについても微妙だから、途中で適当な港町で観光しようぜ。
キャルギスで何か面白い店がありそうな港町ってどこかな?」
どうせ夜は寝てるだけなのだ。
ノルダスに着いて港の沖で夜を過ごして朝に入港するよりも、日中に適当に面白そうな港町で観光をしてから寝ている間にノルダスに辿り着き、朝に入港する方が良い。
まあ、ノルダスの王都って海へ注ぐ河を少し遡った所って話だから、その河の位置を蒼流にしっかり把握して貰ってそこの傍って指定しないと通り過ぎちゃうかも危険性もあるが。
精霊って地図で場所を示してもイマイチ分かって貰えないんだよなぁ。
人が一番多い河を下った河口の傍って言って、外れないことを期待しないとだな。
なんと言っても国境だって精霊にとっては知ったこっちゃない人間の決まり事だから、キャルギスの方に人口が多い似たような河沿いの街があったりしたら、そっちに辿り着いてしまう可能性はある。
・・・ノルダスの王都が近辺の河沿いの街では一番人口が多いよな?
塩害で農業が難しいから漁師と交易船船乗りが国民のかなりの部分を占めるせいで、陸上戦力があまり無いキャルギス。
食料は輸入に頼るけど、国元に住む人口はそれ程多く無いのでガンガン収穫量を増やすよう頑張っているデメナータの穀物を全部買い取るだけの需要がなくなり、海外輸出に船を使いたいデメナータに港を奪われましたw
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カクヨムさんで別に書いている短めに終わる予定(希望!)な話の最新話を久しぶりにアップしました。
前回がちょっと中身が薄かった気がしたのでもう少し書きました。良かったら読んでみて下さい。
https://kakuyomu.jp/works/16818023211694735678