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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1125/1304

1125 星暦558年 青の月 16日 遊ぼう!(12)

漁業だけでなく、北の方の国(ノルダスとの間にもう2つぐらい国があるらしい)との交易船が補給や商売で寄ることもあるとかで、歩き回ってみたらチャールトンにはそれなりに店があった。


まあ、一番広かったのは日中はひっそりと静かな船乗りご愛用の夜の街という印象だったが。


色々な店の中を覗き込んだところ北国から仕入れた大きな毛皮とか、それで造ったコート、毛糸の織物なども幾つかあったが・・・そこそこ良さげな店でも、毛皮はまだしも毛織物に関しては王都で見るのよりもちょっとランクが低い感じかな?

高級品は王都まで持って行って売る方が良いのかも知れない。

毛皮だってそうな気もするが・・・実用的に防寒具として使うのだったら寒いこちらの地域の方が王都よりも売れそうではある。


反対に、ニシンの瓶詰や燻製はあちこちで様々な形で売ってあった。

この街の名産物であり、北の国々へ土産なり交易なりで買っていくのに良いのかな?


「あら、このカバーは良い感じね」

そろそろ大体の店は回ったかな〜と言う感じでちょっと真剣に店の中を見ていたケレナが、何処となく異国風な織物を手に取って肌触りを確認しながら言う。


「寒い時に良いかも~?

でも、寒さ対策だったらそこの大きな毛皮を買って帰るのもありじゃない?」

側で一緒に見ていたシャルロが返す。


いや、そこまで寒かったら魔具で家の中を温めりゃあいいじゃん。

それとも寒い中で一緒に暖まるのが楽しいんかね?

まあ、夫婦で色々相談しつつ買うのが旅行の思い出作りの一環なんだろうな。


「街中で随分と沢山ニシンを売っているけど、誰が買うんだ?

住民が食べるんだったら燻製にしなくても良さげな気がするが」

ちょっと暇だったので、街を歩き回っている間に疑問に感じたことを店のおっさんに尋ねる。


「ああ、瓶詰とか燻製は交易船の連中が買うんだよ。

王都に行く船もだが、北に行く船でもそれなりに大量に買っていくぜ?」

おっさんが教えてくれた。


「船に乗って移動するんだから北の国でだってニシンを獲れるんじゃね?

なんで態々チャールトンで買うんだ?」

ここと隣の北の国程度だったら海の環境にもそれ程違いは無さそうだが。


ここら辺が特にいい漁場だと言うなら、チャールトンまで船で買いに来る代わりにここで獲って帰れば良いだろうし。


「ニシンが良く獲れる海域はチャールトンから近いんだ。北方の国々の漁師がニシンを獲ろうと思ったら1日か2日かけて遠出しなければならない上に、チャールトンに寄港して補給した場合はニシンを持ち出すのに関税がかかる。

だから季節風が余程良い時期以外は、大人しくチャールトンで買う方が安上がりになるらしいぜ」

にやりと笑いながら雑貨屋のおっさんが教えてくれた。


補給するだけで船に乗っていたブツに関税をかけるって何か酷くね??

まあ、要はアファル王国の漁師以外にニシン漁をさせたくないって言うのが正直な本音なんだろうな。


「なるほど。関税を避けたければ往復分の食糧や水を積まねばならず・・・それでちょくちょく真水抽水魔具が売られているのか」

交易船が買うのかと思っていたが、漁師が使うのか。

交易船だったら王都で買った方が態々チャールトンまで持ってこられた魔具を買うより安上がりだろうにと思ったが、漁師だったら王都まで行く機会が無いんだろう。


「そう言う事。

まあ、水を樽に入れて持って来る連中もいるが、そうなると運んで帰れるニシンの量が減る。

飲み水用に魔具を買い、往復に最低でも2日、下手したら4日ぐらい時間を掛けなきゃならないとしたら、関税を払った方が良いかも?って悩ましい程度になるらしいな。

領主殿も魔具を売り込む商家の願いでそこら辺がギリギリになるような関税にしているって噂だ」


「やるねぇ」

単なるよく居る田舎町の地方領主だと思っていたが、流石態々王都でケレナの所から馬を娘の為に買うだけの事はある。

それなりに切れ者らしい。


「しかもニシンの燻製や瓶詰は、経費を考えればそこそこ安く売っているらしいぜ。

まあ、流石に最寄りの港は直接漁に来る方が安いが、もっと向こうの港だったらチャールトンから買い付ける方がお得ってことでニシンの加工品がこの港の名産物になっている」


なるほどねぇ。

ぎりぎり値段が勝てるとは言っても、他に輸出できるような量を水揚げして持って帰るのは難しいんだろう。

普通にニシンをそのまま食べるには良いんだろうが、ニシンの加工産業を大々的に立ち上げるだけの量の確保は難しいんだろうな。


まあ、それこそアファル王国と北側の国が喧嘩でもしたら軍艦サイズの漁船を使って大量にニシンを獲っていくという手もあるかもだが・・・少なくとも現時点では魚に軍艦サイズの船を使うような状況じゃあないのだろう。


「決めたわ!

このベッドカバーを頂戴!」

ケレナが雑貨屋のおっさんに言った。


あれってベッドカバーなんだ?

毛布なのかと思ってた。


だったら手触りとかそれ程気にしなくてもいいから、シェイラへのお土産に良いか?

でもヴァルージャはそれなりに南方でそこまで寒くないからなぁ。

真冬はあっても悪くないだろうが、がっつり暖かいベッドカバーが必要な期間は短そうだ。


関税・・・

色々と戦略的に使えそうだけど、袖の下を使った回避行動も多そうw

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― 新着の感想 ―
[一言] ニシンって子供の頃は食卓によく出てた気がしますが すっかり食べなくなりました
[一言] 鰊は生活用品、毛皮は衣料品、それ以外は嗜好品………まんま商人ハンザですなぁ。 (都市自体がそうだからかつてのリューベック等の自由都市等の都市ハンザ並の利益率かもしれんけど) というか、商業的…
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