1119 星暦558年 青の月 14日 遊ぼう!(6)(アレク視点)
アレク視点の話です
>>>サイド アレク・シェフィート
「ノルダスで欲しがられる商品?」
船の補給を終了する前に確認しておこうと実家へ昼食を食べに行ったら、運がいい事に両方の兄と父親が居た。
ウチの家族は夕食は全員揃う事を出来る限り心掛けているが、昼はそれぞれの都合次第なので、男性陣4人が揃ったのは珍しい。
しかも母と義姉が居ないのは都合が良い。
「ああ。
水筒に関して変に煩い要求が来ても面倒だし、ちょっと遊びに遠出しようって話になってね。
暑いから北の方に行こうって言っていたらノルダスはどうだって案が出て来たんだ。
あそこだったら金貨を積んでいくよりも何か食料品でも持って行く方が喜ばれそうだろう?
何がいいのか、教えてくれないか」
セビウスが聞き返してきたので説明する。
頼まれれば向こうで一回限りになるかサンプル的な仕入れもしていいし。
誰かの目に叶ったら商会の方であちらへの継続的な交易を手配するようになるだろう。
「ノルダスかぁ~。
もう少し早かったらアリサの誕生日プレゼントを頼んだのに」
ホルザックが嘆く。
「開発の進捗状況とか王都の天気とか他の連中からのシャルロやウィルへの頼み事とかに左右されるんだ。
遊びに行くタイミングは選べないよ。
大体、誕生日なんて毎年あるんだから来年用として買えば良くないか?」
毎年色々騒いで探しているのだ。
今年だけの事ではないのだから手遅れになったと嘆く必要はないだろう。
とは言え、義姉は兄が自分で探して選んだのを貰う事を喜んでいるっぽいから、私がお土産で買ってきた装飾品はどれだけ素敵だろうとそれ程喜ばれない気もするが。
「どうせだったらバラーンに行かないか?
母さんが最近磁器の花瓶に嵌っているんだ」
父が冗談交じりに笑いながら提案してきた。
「バラーンは南だろう。
暑いから北に行こう!ってなっているのに更に暑い南なんて、行きたきゃ勝手に行けば?って放り出されるよ」
バラーンに行きたいなら年末か年初の寒い時期に休みを取ろうと提案するしかないだろう。
とは言え、年末年初は家族で集まることが多いから遠出のタイミング調整が難しいし、色々と提出書類があって時間的にも厳しいだろう。
「だが、船で行くんだろう?
金細工なんて繊細で小さな物をお前達のデカ船で買ってくるなんて、勿体ない」
父が嘆いて見せた。
「絶対に誰にも襲われないって点を考えれば勿体なくも無いだろう?
行きにシェフィート商会として嵩張る食糧なりなんなり喜ばれる物を持って行ってあちらの商業ギルドに売っても良いし」
まあ、継続的に嵩張る物を持って行く気が無いとなると今回得る好印象が薄れる前に信頼関係を築かないと交易も長続きしないだろうが。
「小麦は当然だが、あとはつまみになるような美味しい燻製の肉やラム酒あたりが喜ばれるかもだな」
セビウスが提案した。
「寒い国なら食材の保存技術はあっちの方が進んでいるんじゃないか?」
燻製魚は北から輸入する物も多い筈。
「香りの良い旨い燻製にする為の木材が高いから、あっちの燻製はもっと保存性なんだ。
香りと味重視なつまみ用の燻製肉は喜ばれると言う話だ」
セビウスが説明してくれた。
なるほど。
「そんな燻製肉の入手先に心当たりは?」
パディン夫人もそこそこ美味しい燻製を作ってくれるが、流石に遠方への賄賂代わりな商品として持って行くほどの物ではない・・・と思う。
「丁度いいのが手に入ったから、バラーンの陶器に詰めて幾つか提供してやろう。
陶器に対するあっちの食いつきも見て来てくれ」
ホルザックが言ってきた。
「それだったらベルファウォードの磁器も少し持って行こうか?
流石にバラーンから輸入した陶磁器をノルダスまで売りに行くのは欲張りすぎかも?」
遠距離を運ぶ間に割れたら元も子もない。
「まあ、そうだな。
大きめな壺と繊細な小物と両方持って行って、どっちが好かれるかも確認して来てくれ」
父が頷く。
なんかこう、遊びに行く予定がすっかりシェフィート商会の交易開始の先発準備隊にされてしまった感じだ。
「・・・誰か一人、シェフィート商会の仕事をする人間が同行しないか?
私はウィルやシャルロと遊びに行く予定なんだ。
あまり色々頼まれても無理だよ」
シャルロとウィルが精霊に頼んで動かしてくれる船で、私一人が商売に励んだら心象的に微妙だろうし。
第一。
私だって遊びたい。
話を持ち出したのは私だが、遠慮がなさ過ぎる。
家族だからって、商会から出た人間に甘え過ぎは良くないぞ?
グイグイ押してくる家族w




