1115 星暦558年 青の月 12日 遊ぼう!(2)
「ケレナも行くって〜。
ただ、ドレスアップするのは面倒だから貴族が居ると分かっている港はアファル王国内では避けたいって頼まれたんだけど」
翌日、シャルロがのほほんとお茶を飲みながら家族協議の結果を教えてくれた。
昨日は遊びに行くと決めた後、シャルロは家に帰って家族協議、アレクも実家に帰って何か北の方に面白い物があるかの情報収集、俺はちょっとした暇つぶしも兼ねて久しぶりにナイフを鍛えていた。
最近はナイフもレターオープナーとしてしか使わないからなぁ。
何かもう少し実用的な物を作っても良いんだが、何がいいだろう?
鍋はイマイチ興味が湧かないし、適当に作って料理中に底が抜けたらパディン夫人に怒られそうなんだが。
スタルノは基本的に剣ばかり作っているから日常生活品の鍛冶は教えられるほどは覚えてないって言っていたしなぁ。
まあ、それはともかく。
「貴族が居る港って・・・街中で散歩する際に顔を合わせない様に気を付ければいいだけじゃないのか?」
どこの港に貴族が居るのか知らんが、補給をするなら大きい港町の方が多分食材の選択肢が広いと思うんだが。
「あの屋敷船はそれなりに目立つからな。
領主が正式に港へ使いを出したら少なくともシャルロと私は挨拶に伺うのを避けられないだろうな。
本来ならウィルも顔を出すべきだが。・・・まあウィルの場合は貴族の顔を潰しても報復される相手がいないから」
アレクが言った。
「別に僕相手にも招待状を無視したところで報復はしないだろうけど、貴族の付き合いはそれなりにしきたり通りにやらないと後で母上とかに怒られちゃう可能性があるからね。
特に、ケレナとしては一緒に行っていたのに駄目じゃないってお義母さまに説教されたくないから、領主一家が滞在中の港町には近づきたくないって」
シャルロが付け足す。
確かにオレファーニ侯爵家は有力な高位貴族だからそれを相手に喧嘩を売ろうとする貴族家は少ないだろう。それに、それこそ港町の領主だとしたらシャルロ相手に嫌がらせを遣ったら港が一晩で水没する可能性があるしな。
相手を理解している上で嫌がらせをする程アホじゃあないとは思うけどな。
領主側としては単にご挨拶とゴマスリのつもりなのが、シャルロとケレナにとってはいい迷惑って程度じゃあ流石に港を潰すなんてことはいくら過保護な蒼流もしないだろう。
そう考えると、寄港しないのが無難かも?
もしくは、領主へ知らせが届かないぐらい素早く逃げるか。
でも、補給をする為に寄港するならそれなりに荷を運び込むのに時間が掛かるから、領主が招待できる前に出ていくって言うのは難しいかもだな。
アレクなんかはシェフィート商会に嫌がらせをされたら困るから、こっちの方がある意味嫌がらせのやりがいがある相手だろう。
行商に来た商人が町の領主を敵に回したら色々とヤバい。
そう考えると、確かに領主一族が居る港町に寄らないのが一番か。
でも。
「女性って着飾って社交するのが好きなんじゃなかったのか?
確かにケレナもシェイラもそう言う感じじゃないけど、そこら辺の違いってどこから出て来るのかイマイチ分からないんだが」
着飾って社交がするのが好きな相手だったら邪魔をしたら怒られるだろうけど、嫌いな人間にそれを強いたら嫌がられる。
シェイラは社交ってあまり興味が無い感じだが、それでも綺麗な格好をするのはそれなりに好きみたいなんだよなぁ。
「自分を磨くのが嫌いな女性はほぼいないよ。
でも、綺麗に磨いた自分を嫌いな相手に態々見せてケチを付けられて不快な思いをしたいかと言ったらそうではないんだろうな。
気が強い女性なんかは不快な思いをさせてきた相手の喧嘩を買って叩きのめすのが好きって言うタイプも時折いるが、やりすぎると社交界で遠巻きにされるようになるから、やはり女性陣としては気の合う連中と着飾ってお互いを褒めつつ情報交換するのが楽しいみたいだな」
アレクが解説してくれた。
なるほど。
『気の合う相手』とというのが大切なのか。
そうなると、ケレナとしては港町の領主一族にそう言うのが居るとは思っていない訳なんだな。
「一応面倒な領主がいる港町の情報は入手して来たが、面倒じゃなくても領主一族が拠点もしくは夏の避暑地にしている港町の情報を集めておくよ。
ついでにウォレン氏辺りにでもそこら辺の事を聞いておくのもいいかも?」
アレクがシャルロに伝える。
情報部の妖怪爺をそんなことに使って良いんだろうか。
でもまあ、あの爺さんってばシャルロが頼ると嬉しそうな顔をするから、良いんかな?
社交と綺麗な格好をするの違いがイマイチ分かっていない男、ウィルw
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カクヨムさんで別に書いている短めに終わる予定(希望!)な話の最新話を久しぶりにアップしました。
前回がちょっと中身が薄かった気がしたのでもう少し書きました。良かったら読んでみて下さい。
https://kakuyomu.jp/works/16818023211694735678




