111 星暦551年 緑の月 4日 使い魔召喚(2)
ここまでの7カ月の間で召喚魔術に関してもそれなりに学んできた。
単純な召喚術と保護結界。
召喚対象に関して条件をつけた召喚術。
召喚対象に関して条件付けの付与された保護結界。
何らかの強制力を持つ保護結界。
強制力って言うのは結界の張り方次第なんだけど、俺たちが教わったのは単に召喚された相手が召喚主の質問に答えなければいけないと言う強制程度だった。
ちなみに、極々弱い存在しか召喚しない単純な召喚術以外の場合、絶対につけるよう教わるのが『こちらの保護結界を破れない』という条件付け。
まあ、召喚した後に『具現化』としてこの世界とリンクさせるステップを召喚主が踏まない限り、召喚主が死んだら召喚対象は元の場所へ戻ることになるので保護結界が破られても被害は有る程度限られているんだけどね。
とは言え、始末に負えないほど強い召喚対象がわざと召喚主を殺さずに脱走して悪戯や悪行をやりまくる可能性もあるから、魔術師としての社会的責任(と地位)の為にも、絶対に『こちらの保護結界を破れない』という条件付けは抜かさないよう教わった。
ちなみに、この条件付けをせずに最弱レベルへの単純召喚以上のことをしていたことがばれたら魔術院から多額の罰金が科される。
ということで、今回は『使い魔になってもいいと感じている存在』という条件付けを保護結界に付与して張ることになっていた。
エタラ教師に一通り説明された後に、各々条件付保護結界を準備して張り始める。
結界にお墨付きが出た順に使い魔召喚の術を試せると言われたのもあって、皆熱意にあふれていた。
最初に召喚する権利を得たのはアレクだった。
やっぱりこういう細かいことに強いよなぁ。
俺の場合、視る分には得意なんだけどそれを実際に地面に描くとなると中々思うようにいかないんだよねぇ。
シャルロはうっかり線を一本忘れて結界が機能しなかったと言うことが多いうっかり組。
◆◆◆
「「おお?!」」
アレクの召喚によって現れた存在に驚きの声が上がった。
アレクが欲しがっていた火の鳥でも土の妖精でもない。
・・・そこにいたのは純白のユニコーンだった。
ぷっ。
思わず小さく笑いを漏らしてしまった。
市井にはユニコーンは純潔な者のみに己へ触れることを許すと言う伝説が流れており、大多数の平民がそれを信じている。
だが。
ユニコーンは別に純潔を求めている訳じゃあないんだよね。
単に、気が濁っていたり混じり合っていたりしている人間を嫌うので、何かの想いに取りつかれすぎていたり他の人間と性交をしたばかりの相手を嫌う。
この場合、確実に拒絶されないのは性交もまだのような若者たち。
それによって変な伝説が流れるようになった訳だ。
しかし・・・。
俺たちはユニコーンの好みのことを授業で教わっていたから純潔なんて必要ないのは知っていたが、街中ではかなり悪い意味で注目を集め過ぎそうだ。
白馬の王子様ルックなんて似合いそうだから、角だけ目晦ましで誤魔化すかな?
ふふふ。
ま、ユニコーンも土の妖精に劣らず物知りとのことだ。
アレクにとっては悪くない相手だったかな?
ちょっと短めなんですが、どうにも眠くって・・・。