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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1107/1303

1107 星暦558年 紺の月 30日 創水の魔術回路(11)

「で、これがそのボタンを押せば水を補給できる水筒?」

アレクの母親の提案で、取り外してコップ代わりに出来る水筒の蓋の上(コップとして使っている時は下)にファンを付ける形に変えた水筒を手に、シェイラがボタンを試しに押しつつ聞いてきた。


横にポコンとついているよりは上の方がマシだし、ファンを丸いままではなく置けるように四角い枠を付けたら何かちょっと前よりすっきりした感じになった。

ファンの方にもはみ出していた魔術回路を水筒本体に戻したので水筒をちょっと大きくしたから、ファンが上についていてもそれ程バランスは悪くないし。


「ああ、繋いでいる鎖の範囲内でならファンごと蓋を外してどっかに引っ掛けて自分に風が当たるようにするのも可能だぞ。

ファンとしてだけ単体で使うのも可能だがそうすると水を飲んだ量と関係なく魔石が減るから、そっちの補給に注意を払っておく必要はあるが」

蓋を落としたり忘れたりして失くしては困るので、それなりにしっかりとした鎖で本体と繋いであるので極端に問題はないと期待したい。


魔石の使いすぎもね〜。予備の魔石を入れておけるケースを付けるかって話もあったんだが、そこは自分で管理しようねと言う事に落ち着いた。


暑い最中にファンとして使って魔石が切れた場合、発掘現場とか遠乗り程度ならまだしも水の補給を最低限にして商売を優先した行商人だったりしたらヤバい事になりかねない。


だからそこら辺は要注意って買う時に念を押しておかないとだな。


「発掘時にちょっと砂を払いたい時なんかにもこのファンは便利そうね。

本当に貰っちゃって良いの?」

シェイラが出てきた水を蓋のコップに注いで飲んでみてから言った。


「暑い最中に発掘に夢中になっていて水の補給をしていなかったら危険だろ?

戻って補給したりしなくてもちゃんと水を飲めるから便利だろうし、使ってくれ」

水の補給をおざなりにしそうな危険性で考えるならば発掘隊全員に配るべきだろうと思うんだが、予算ピーピーな連中だから魔石が切れた時にそれを買い直すとは思えないんだよなぁ。


シェイラの分の魔石程度だったら他の試作品と合わせて魔力の充填を会いに来た際に俺がやるのは構わないが、他の連中の分まで全部やるのは嫌だ。


と言うことで、渡すのはシェイラだけ。

幸い、ツァレス以下の探索チームの人間はシェイラに渡した試作品を自分達にも寄越せと図々しく要求してくるタイプではないので、問題はないだろう。

時々俺が女に果てしなく貢ぐパトロン崩れであるかのような憐れみを籠めた目で見られることがあるが・・・俺はパトロンじゃないぞ?!


第一、普通に付き合っていたら女性に贈らなきゃいけない服や靴や宝石に比べれば試作品なんて安い物だし、シェイラは現実的な使用者としての視点から色々と役に立つ問題点を指摘してくれるから、アレクとシャルロだって試作品を渡すのに賛成しているんだ。


これは十分対等な付き合いだ。

付き合いな筈。

・・・付き合いだよな??


それはさておき。

「ちなみに、空気中に水分が多いと早く水が集まるから、それこそ泥水とか水溜りとかの傍で使うと効率的に飲み水を集められるぜ。

無いとは思うが、大人数でこの水筒を持って出掛けて一斉に水を飲もうとした場合なんかはちょっと離れて使うと良いかも知れない」


まだどのくらいの数を一斉に使ったら露骨に魔石の消費効率が下がるかのテストは出来てないんだけどね。

この新しいデザインの試作品が出来上がったのが昨日で、これから機密保持の誓約を結んだシェフィート商会と懇意にしている工房にまず30個ほど製造を頼んで試す話になっている。


「あら?

実質泥水を濾過するような効果があるんだったら、変な病気が流行っている場合なんかの現場に貸し付けたら感謝されるかも?

大抵の病気って水経由でも移るって話らしいから」

シェイラが提案した。


あ~。

確かに下痢とか消化器系がやられる伝染病とかってちゃんと水を浄化していない中途半端に小さな町とかで起きやすいって話だよな。

まあ、伝染病に見えて実は鉱山とかでヤバい土壌を掘り起こしちまったのが水源に混ざって下流の人間がやられたって場合もあるらしいから、この水筒で飲み水を確保して一時的に伝染病が収まって見えても解決にはなっていないなんて場合もありそうだが・・・少なくとも原因を探している間にバタバタ体力のない住民が死んでいくよりはいいだろう。


とは言え。

そこら辺の緊急事態の対処って商会とかが対応するじゃなくて国がやるべき話だ。


「アレクの方に、国に緊急事態用にこれを備蓄しておくのも良いかもって提案する様に言っておくよ」

まあ、普通に行軍なんかで使えるようだったら軍部に十分在庫がある状態になって態々備蓄しなくても済むだろうが。







一般的な男性は付き合っている女性に服を贈る際に自分の好みをそれとなく知らせるのがこの世界の円満な付き合い方の常識なんですが、それを全くしようとしないウィルw

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― 新着の感想 ―
[一言] 行軍事にわざわざ水を煮沸しなくてすむのはいいよね。ただ単純に水分子だけの純水は美味しくないけれど
[一言] ………まあ、ウィル君だし(嘆息)<一般的な恋の常識を実行しない朴念仁。 あとは国家として「人は金にして要」を地で行けるかどうか。 日本は超ハード環境なので、そこら辺がすっごく重要視されていま…
[一言] バブル期の流行語で言うところの ミツグ君でありアッシー、メッシーも兼ねておりますね ひょっとするとキープ君も!?
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