表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1099/1306

1099 星暦558年 紺の月 22日 創水の魔術回路(3)

「数字はパズルみたいで面白いんだってさ」

特許記録を漁りに既に魔術院で合流していたアレクとシャルロにキーナのコメントを伝える。


「ええ???

パズル?

数字が??」

シャルロが信じがたいという顔で俺の顔を見返す。


アレクは・・・ちょっと軽く頷いただけだった。

「確かにきっちり数字が繋がると、パズル絵の最後のピースがちゃんと嵌って絵が綺麗に完成したような満足感はあるな」


うぇぇぇ。

俺はシャルロ程数字が苦手って訳じゃあないが、どう考えても数字との睨めっこっていうのは苦行であり、楽しいパズルのゲームではない。


絵をバラバラのピースに小さく刻んだのを元に戻すパズル絵(ジグソーパズル)からしてそもそもそれ程面白いとは思わないが、あれの方がまだ数字の報告書よりはマシだ。


と言うか。

そう言う数字の流れがちゃんと見えて全体像の絵を認識できるアレクとかキーナのような人間が騙そうとして小細工した報告書なんて、俺やシャルロが必死になって見直したところで問題点は見つけられないんじゃないか??


まあ、見つけられるかどうかは別に、やった作業をちゃんと確認するという姿勢を見せることが重要なのかもだが。


どちらにせよ。

キーナとアレクの相性って想像以上に良いのかも?

まあ、似ている人間がそう言う意味で気が合うかどうかって言うのはまた別問題だけどな。

俺とシェイラだって然程似ちゃあいないし、シャルロとケレナだってかなり違うと思う。


価値観的な共通点はあるけど。


「取り敢えず、俺らからの提案はそれなりに考慮する価値はありそうとの返事だから、明日にでも面談に来るってさ。

シェフィート商会の方はその後になるが、明日の面談時にそっちの予定も話し合えるようにしておいてくれ・・・というか、シェフィート商会との話し合いはどうなった?」

アレクに頼もうとして、あっちの話し合いがどうなったのかまだ聞いていなかったのを思い出した。


「事務職員の派遣は構わないとのことだ。

数か月おきに交替と言うのは、ある意味変に慣れて間違いを何も考えずに続けたり横領を企んだりがし難くなるから、小規模支店での事務作業に関してそう言う形に本店から人を派遣するのも悪くないかもと兄が言っていた」

アレクが応じる。


確かに、支店の事務作業だって誰かがしなくちゃだよな。

最終的な全体的な売上報告書とかは本店で纏めるにしても、完成する前の情報として各支店で纏める売り上げや支出の管理は必要だろうから、それを扱う人間は必要だろう。


小さな支店だったりしたら別に毎日事務職員がいる必要があるとも限らないしな。

2日おきぐらいに小さな支店を3つぐらい回ってカバーするなんて言うのも可能なんじゃないか?

問題共有とか新しいやり方のアイディアとかが広がって良いかもだし。

まあ、間違ったやり方が一つの支店だけでなく複数個所で広がる危険性もあるが。


そこら辺は上の管理体制をしっかりしないと大変そうだな。

と言うか。

「考えてみたら、事務職員を派遣して貰ったとして、そいつが間違えてたり横領をしたりしたら責任は誰が負うんだ?」


監督者として俺たちが自業自得って事になるのか、それとも派遣元のシェフィート商会もある程度責任を取るのか?


「シェフィート商会に多少は派遣料を払うんだから責任も一部は負って貰うことになるが、現実的な話としては現場で監督する我々側が殆どの損失を負う事になるだろうな」

アレクが肩を竦めながら言った。


「まあ、横領とかされる可能性はあまりないよね?

常識的な範囲で気を付ければ良いよね、誓約魔術も使うんだし」

シャルロが明るく応じる。


「いつも誰かの行動を疑って調べていたら不快感を与えるしやる気を削ぐだろうが、悪意のない間違いだって見つけて指摘する必要があるし、全ての間違いを見つけるぐらいな気持ちでしっかり事務職員の仕事を確認しつつ監督していかないとだな」

見終わった特許申請の書類を棚に戻しながらアレクが言った。


「数字が楽しいパズルって言う人間の間違いを指摘できるとは思わないけど・・・まあ、頑張るね」

シャルロが小さくため息を吐きながら応じた。


「ちなみに、創水の魔術回路は何か良いのあったか?」

調べる範囲をどう分けているのかも聞かなきゃだし。


「物凄く古くて滅茶苦茶効率の悪い水を使った攻撃魔術の魔術回路はあったから、それの水を生み出す部分を抽出出来れば一応創水が出来ると思うが、それ以外は今のところ見当たっていないな。

私はこちらの棚から右、シャルロがあちらの棚から左を見ているんで、ウィルはそっちの壁沿いに調べて貰えるか?」

アレクが応じる。


はぁぁ。

相変わらず、調べる量が死ぬ程多い。

一応以前提供した記録用魔具の改訂版で申請された特許のリストの作成は始まった筈だが、過去の記録はまだまだ全然整理できていないって話だからなぁ。


先は長そうだ。


仕事を楽しんでいる数字が好きな間違いを犯さないか・・・

まあ、全体像が分かっている人の方が間違いにも気付きそうですよね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 水は「構造を理解」すると回路が捗りそうで。 とはいえH2Oを精霊に説明させるのも、なんか違う気がするし。 そこら辺を研究している錬金術士って、いないもんですかねぇ。 (まあ居たらいたで、面倒…
[一言] 経歴を知られている職場で働いても良いと思ってもらえるのかどうかは ひとえにギャラの額にかかっているでしょうね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ