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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後6年目
1093/1310

1093 星暦558年 紺の月 17日 裏社会からの依頼(16)

結局、転移箱に残っていたちょっと怪し気な手紙以外、書斎には特に役に立ちそうな裏家業関係の書類は見つからなかった。


そうなると・・・第三騎士団が書類を精査したら収入と支出が合わない可能性は高いが、記録に無い収入がどこから来たのかどこにも記録がないとなると会計記録不備や脱税で罰せられても、違法行為の追求は中々厳しくなりそうだ。

過去に関与していた人身売買関係の分だけで終わるかも?


だが、暗殺アサッシンギルドがこいつを名指しにしたんだからそれなりに関与していそうなもんだけどなぁ。

どうしても当局側に情報が入手出来なかったら、多分ギルドの方が最終的には手を打つだろう。

頭脳部分であるゼルパッグ伯爵と実際に東大陸からの暗殺者と関与していたグアナス男爵が居なければ何も出来ないってことで捨て置かれる可能性も皆無とは言えないが・・・見せしめ目的も含めたら、多分手を打たれるだろうなぁ。


ペディアグナ子爵って余計な自慢話をしそうなアホなタイプに見えるから、酒場とか賭場とかで『暗殺アサッシンギルドの奴らの裏をかくのに一役買っていたんだ』とかなんとか余計な話をして自爆しそうな気がする。


取り敢えずそのまま各部屋を見て回り、当主の寝室に来て先日さらっと確認したら隠し金庫をゲッカの為に開ける。

彼が中を漁っている間に部屋を見回していたら、ふと小汚い手帳がベッドの横にある小さなテーブルに放り出してあるのが目についた。


手に取ってみると、何やらどこかの名称っぽい略字と数字がずっと並んでいる。

ふむ・・・。これって賭けの勝敗履歴な気がする。

▽がついているのが損失だとしたら・・・時折大きく勝っているが、基本的に中ぐらいの金額を毎回負けているせいで勝ちが目立つが実際には大きく負けているな。


というか、大きく勝った時にそこでスパッとやめればトントンぐらいになるのかも知れないが、もっと勝って儲けるんだと欲をかいてまた負けこんでいるってやつなんだろうな。

典型的な賭場に財産を注ぎ込むカモの勝敗パターンだ。


何故かこういう負け方をする人間って、絶対に勝ったままでは終われないんだよなぁ。

実際に今迄の負けと老後の貯蓄になるぐらいに大勝したら・・・帰り道に殺されるか、大勝の噂を聞いてワラワラと湧いてくる詐欺師に勝った金を次から次へと騙し取られてすっぽんぽんになるかだ。


賭けで儲けて長生きできる人間はもっと冷静に細かく勝ちを刻んでいくタイプだ。

・・・アレクなんか向いているかもな。

まあ、あいつの場合は普通に事業をしている方が儲かるんだから、賭けなんぞに手を出す意味がないが。


それはさておき。

「これってどこの賭場を使っているか分かれば、少なくとも金の流れはそれなりにはっきりするし、酒を飲んでいれば色々と話も漏らしているんじゃないか?」

小汚い手帳をゲッカに渡す。


「確かに。

少なくともこれだけの金をペディアグナ子爵領から得られないのは賭場だって知っている筈だから、金蔓がどこだか位は探っている筈だな」

ゲッカが頷き、廊下から覗き込んだ部下(多分)を呼びつけて何やら指示を出しながら手帳を渡した。


さて。

後は残りの部屋と使用人部屋や屋根裏も一応確認して・・・その後は一応ペディアグナ子爵の愛人宅に行くか。


こんだけ賭場に金を注ぎ込んでるんだったら、愛人に大した金は出してなさげだが。

それでもある程度金をやっているんだから、自分の為にヤバい書類をこっそり隠しておいてくれると信じる男も多いんだよな。


と言うか、ペディアグナ子爵なんて結婚していないんだから愛人だって家に連れ込んでも良かっただろうに。

変に結婚期待を膨らませられると面倒だから、いつでも簡単に切れる様に愛人を外に囲っていたのかね?


なんか長の話ではペディアグナ子爵の兄が亡くなった時にその婚約者とペディアグナ子爵が結婚したらどうかと言う話もあったらしく、ペディアグナ子爵側は中々乗り気だったらしいが婚約者側が絶対に嫌だと拒否したらしい。


無理強いするなら自殺するとまで親を脅したらしいから、中々に凄いと長が笑っていた。

とは言え、ヤバい商売に手を出すような相手と縁付いたら義理の家族だとしてもとばっちりを受けた可能性は高いのだから、その家族は娘さんに感謝すべきだろう。


まあ、婚約者としてはペディアグナ子爵が兄を殺した可能性が高いと疑っていたのかもだが。


そうじゃなくても兄の方はそれなりに真面な人間だったらしいから、粗野で賭け事にのめり込むようなバカとの結婚をして一生そいつの尻ぬぐいをする羽目になるなんて絶対に嫌だと思ったのだろう。


「愛人宅をちょっと確認するが、誰か一緒に来てくれないか?」

使用人部屋と屋根裏をざっと歩き回りながら心眼サイトで確認し終わったところでゲッカに声を掛ける。


留守にしていたら勝手に入って調べるのもありだが、取り敢えず愛人本人に話を聞いた方が情報も手に入るだろうし、それだったら『暗殺アサッシンギルドの依頼』というよりは『騎士団の調査だ』と言える人間が一緒にいる方が楽だ。


騎士服ってそれなりに特徴的な上に金が掛かっていそうだから信頼を得やすいし。


「一緒に行くよ」

ゲッカが若いのを一人身振りで呼び寄せながら言った。


ほいほい。

これで終わりだと良いんだけど。


妙に子爵に掛ける文字数が増えてる・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] >何故かこういう負け方をする人間って、絶対に勝ったままでは終われないんだよなぁ バクチに夢中になる人って続ければいつかは必ず勝てると思ってるんですよね 理解できません
[一言] ………あまりに小物過ぎて、捜査線上に浮かび上がらなかったタイプか? 多分負けた時の言い訳で、余計なこと言ったかなこれは。 この調子で証拠が出てきて、ウィル君の仕事が減ることを切に願いますよ。…
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