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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後7年目

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1081 星暦558年 紺の月 15日 裏社会からの依頼(4)

まずは床にある隠し場所を調べようと絨毯を捲り、板を手で触れてどうやって外すのか確認する。


心眼サイトで仕組みをじっくり確認し、右端の方を手前に押しながら隣の板を奥へ押すと、それが跳ね上がるような感じにパカっと開いた。

バネで留める形になっている、中々複雑な仕組みだ。

これもプロを雇って造ったんだろうが・・・職人がまだ生きていると良いな。


隠し金庫とか隠し収納場所を作る職人って下手をすると情報漏洩防止の為に作業をした後に消される危険があるからなぁ。


持ち運びできて隠せる金庫や家具っていうのならまだしも、依頼主の屋敷の壁や床下に直接設置するタイプの場合、どうしても『これの場所を知っている人間を活かしておいたら情報が漏れる・・・』と考える貴族は多い。


まだ裏社会の人間だったら才能のある職人の希少さをちゃんと分かっているし、情報を漏らした時の報復の危険性も職人側が良く分かっているから絶対に口を割らないって言うのが常識なんで態々殺さないしお互い情報を職人から抜き取ろうとしないんだが・・・貴族って言うのはあっさり人を殺そうとする癖に、職人が殺される危険を恐れるから情報を漏らす事なんてないとは思わないんだよなぁ。


まあ、情報を漏らしても漏らさなくても殺されるんだったら八つ当たりと遺族への遺産代わりに情報を売ろうと考える職人もいるみたいだが。


はっきり言って、隠し金庫の設置なんて依頼は絶対に受けちゃいけないと思うね。


実際、ガキの頃にそう言うヤバい系の隠し場所を作れるぐらいの技能があるのに裏社会に紐付いて無かった(ので裏社会からの保護も無かった)知り合いの職人が、貴族にうっかり腕を見込まれて隠し床下収納を依頼され、慌てて一家全員で依頼した貴族と敵対的な派閥の貴族が治める地方都市へ夜逃げしていた。

その職人の師匠だった人間が、下町の職人だった癖にとある金払いの良い貴族の依頼を受けた後に『偶然』押し売り強盗に家族含めて皆殺しにされていたから、ヤバいと思ったんだろう。


まあ、それはさておき。


床板の下には幾つかの箱に分かれて、バインダーに仕舞われた書類がそこそこ沢山仕舞ってあった。

暗殺を依頼してきた人間の情報かな?

暗殺業を取りまとめる様になってからまだそれ程時間は経ってはいないと思うんだが、意外と数が多い。

もしかして実際に依頼してきた相手だけじゃなくて、依頼をしてきそうな後ろ暗い人間全てのファイルを準備しているんかね?


取り敢えず一部取り出して、内容を確認してみる。

家族構成や資産の詳細、政治的派閥や敵対関係など、色々と書いてある。

が、何かを依頼されたかなんて言う情報はない。


マジでこれって潜在的依頼人の情報ファイルなのか?

イマイチこれじゃあ情報部にチクっても意味がないぞ。


更に幾つかファイルを取り出して確認していったら、やっと7つ目のファイルに何やら違う紙が入っていた。


まず、読んでも意味が通じない。

いや、普通の手紙みたいな事が書いてあるが、今迄の他の情報に比べて明らかに異質で能天気なのが逆に目を引いた。


これかね?

二枚の暗号の符丁と比べ合わせて、何とか読み解けないか暫し睨めっこするが・・・イマイチ分からない。

暗号の符丁があったところでどうやって使うのか分からなきゃダメだな。


これの写しを作って長の所に持って行って誰かに解読させるか。


それともウォレン爺の所に持って行くべきか?

あっちに解読を頼んで事件性があるか自発的に情報部の人間に調べさせる方が、手間が省けるかもだな。


取り敢えず、机の上にあった便箋を下の方から一枚抜き取り、急いで能天気な手紙を一字一句間違えない様に、改行の場所も併せて写す。


マジでこの手間はウザい。


根こそぎ全部証拠書類を持って行くとか、当局に隠し場所を教えるって言うのだったら直ぐに終わるのに。

3家の貴族を調べ終わるまで、調査が行われているってバレて証拠隠滅されたら困るから書類をネコババ出来ないのは中々痛い。


やっと手紙を写し終え、隠し場所にファイルを全部戻してから今度は隠し金庫の方を開く。


こちらは普通に裏帳簿っぽかった。

まあ、これは後で良いかな。

どうせ暗殺業なんぞを取りまとめる男なのだ。

違法な密輸とか恐喝とか、そして結果的に脱税とかも嗜んでいるだろうから裏帳簿は当然あるだろう。


あとは・・・家令の部屋と当主の寝室か。

家令はあのせまっ苦しい部屋でまだ仕事をしている最中のようなので、先に当主の寝室を調べよう。

一体どれだけ残業するのか、気になるところだが・・・寝室を見終わってもまだ仕事していたら、眠り(スリプト)の術を掛けて寝させちまおうかな。


どうせ残業三昧で疲れているだろうから、仕事中に寝ちまっても不思議はないだろう。

インクを零したりしない様にペンを置いたタイミングで術を掛けなきゃいけないのがちょっと面倒だが。



ファンタジーな世界なのに、サービス残業があるブラックな職場・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] >暫し睨めっこするが・・・イマイチ分からない あーウィルはそういの不得意そうですね
[一言] 件の職人さん、逃げれてよかったですね。 (我が世界のベネチアンガラスの笑えない惨状を思い出しつつ) というか、「共和国」が似たようなことをやってそうでなぁ。 そして、ガチで依頼があったようで…
[一言] やってる事自体黒いから誤差だな!HAHAHA
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