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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後7年目

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1080/1343

1080 星暦558年 紺の月 15日 裏社会からの依頼(3)

いい年したおっさんなのだが、ゼルパッグ伯爵は夕方になったらさっさと仕事を終え、身支度をしてパーティに出て行った。


まあ、パーティに行くと言ってもキャッキャうふふふと女と戯れながらダンスを踊るって言うのではなく、パーティを開いている家のカードルームなんかで他の後ろ暗い事を考えている貴族や豪商なんかと酒を飲みつつカードをやりながら暗殺を取り持つ話をそれとなく匂わせて客を釣っているんだろうが。


そこら辺はウォレン爺の部下が裏付けがてらに調べるだろう。

というかあの爺さんは引退したって言い張っているんだから正式には部下じゃない第三騎士団の連中だろうけど・・・実質部下って言っていい気がする。

と言うか、引退前だって副団長だったって話なのに、何故か今でも団長を顎でこき使っている印象なんだが。

どうなっているんだか。


まあ、それはさておき。

静かに浮遊レヴィアで2階まで上がり、書斎の窓をそっとこじ開けて中に入る。

別に魔術を使わなくても登れるんだが、うっかり壁に痕跡を残したら面倒だからな。


空気中の魔術の痕跡なんかは風が吹けばすぐに消えるので、壁に直接触れるよりも浮遊レヴィアで上がる方が無難だ。


ゼルパッグ伯爵の屋敷の侵入経路をそこまで真剣に調べられるとは思わないが、調べられるような屋敷に潜入する羽目になった時の為に練習を兼ねて術を使う。

最近はすっかりこの副業をすることが減ったからなぁ。

でも、ちゃんと魔術師として稼げるようになったらすっぱり無くなるかと思っていたのに意外と完全には無くならない。なので機会があったら適当に練習しておくのは悪くないだろう。


そっと窓を閉めて、書斎の中を確認する。

執務机に隠し引き出しが一つと、二重底付きの引き出しが2つ。

後は普通の金庫と隠し金庫が一つずつに・・・床板の所にもう一か所隠し場所があるな。


流石暗殺業なんぞに手を出そうとする伯爵だ。

随分と隠し場所が多い。

とは言え、事業の書類を全部保管しておけるほどの空間は無いから・・・そう言う書類が無いのか、もしくは家令が管理しているのか。

長が教えてくれた愛人の家も後で調べた方が良いんだろうなぁ。


愛人なんぞマジで金で繋がっただけの相手なんだから、もしもの時には一緒に没落する羽目になる妻とか妻の実家の方が信頼できるんじゃないかと思うが、何故か愛人宅を隠し場所にする男って多いんだよなぁ。


愛人に秘密文書を売られる危険があるって思わないのかね?

まあ、愛人を囲っている時点で妻との関係が冷めているか敵対的ってことだから、妻にヤバい書類を預けたら報復に使われる危険が高いのかもだが。


なんだって態々結婚したのに他に手を出すのかね?

面倒だし維持費が倍になるしで良い事なんぞ無い気がするけど。

まあ、貴族家としての政略結婚だった場合は妻が致命的に気が合わない場合もあるだろうけど、それでも家が没落したら困るのは妻もなんだから、愛人よりは信頼できると思うんだが。


もっとも、息子が成人しているんだったら夫を引退に追い込んで息子に爵位を引き継がせるという選択肢はあるかな?

それで家が繁栄するか否かは微妙なところだが。

まあ、暗殺業なんぞで金を稼いで繁栄したところで先は短いか。

国に潰されるか、暗殺アサッシンギルドに皆殺しにされるか・・・どちらにせよ先は短い。


東大陸との交易で複合毒を入手する伝手があるんだったらそれを大人しく暗殺ギルドに売りつけることに満足すれば良かったのに。

まあ、暗殺アサッシンギルドとしては扱いの難しい複合毒なんぞ使わなくても技でそれなりに今迄通りに殺せるんだから、高い金を払う気が無いって言うことで交渉が決裂したんだろうな。


欲をかいて消される羽目になるなんぞ、アホだが。


それはさておき。

最初に調べた隠し引き出しに入っていたのはちょっとヤバ気な手紙だった。

自分が受け取った物なのか、盗んだ脅迫用なのか微妙なところだが、これ単品(複数枚あったが内容は違った)ではイマイチ誰用なのか分からないな。


二重底の所に入っていたのは何やら暗号文用の符丁らしき一覧表だった。

書いた日によって違う符丁を使う暗号らしいが、比較的単純そう・・・とは言え、記憶できるほどの量ではないのでしょうがないから書き写した。


映像を記録する魔具をポケットに入るサイズにしてこういう案件で持ち歩こうかなぁ。

はっきり言って、手で書き写すのは時間が掛かりすぎる。


情報を盗み出すのに悪用されそうだから一般への販売はしない方が良さそうだが、自分用に開発したい。

まあ、開発して、使い始めたら長なりウォレン爺なりにバレて自分達も欲しいと強請られそうな気がするが。


そのうちどっかで情報漏洩して、いつの間にか知る人ぞ知る裏の魔具っぽい感じに普及するかも?

特許登録も出来ないし、造っても結局誰かに勝手に使われることになると考えるとちょっと悔しい気もする。


まあ、それはさておき。

どうやら最初に見つけた符丁は誰かとのやり取り用らしく、もう一つの二重底の方にも別の符丁が入っていた。

そちらも書き写す。こっちは裏帳簿か暗殺事業の記録用かね?


次は普通の金庫を開けて調べる。

そこそこ高いのを使っているが、専門家プロにとっては大したこと障害では無い。

盗賊シーフギルドの見習いを卒業したてな若いのでも破れそうだ。

こちらは幾らかの金貨と、ナイフと、宝石が入っていた他は普通にゼルパッグ伯爵領の収支関連の書類が入っていた。


イマイチ良く分からないが、余り儲かっていないようだ。

昔の書類よりも最近の書類の収益の数字が減ってきているっぽいので、領地経営に失敗しているのか、何か不幸な気候変動があったか、もしくはそれこそ東大陸への新しい交易ルートが出来たことで利益が減ったかってところかな?


それでも複合毒を入手できるようになったんだから、新しい交易ルートはゼルパッグ伯爵も活用しているようだが・・・表立って公に出来るような利益を得られる交易の伝手を入手できず、足掻いている間に裏社会の連中と出会ったのかも知れない。


さて。

隠し金庫と床の隠し場所にもっと役に立つ情報があると良いんだが・・・。


少しは収支報告の読み方が分かるようになってきたウィル君w

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― 新着の感想 ―
[一言] ウィル君も読み書きを活用できるようになったようで。 しかし、そっち関係は素人だった人間に「これは駄目じゃね?」って一発で理解される状態。 ……素直に専門の代官を介入させろよと思うのですが、プ…
[一言] スパイ道具一式開発したらウォレン氏が喜びそうですね
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