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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後7年目

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1075/1342

1075 星暦558年 紺の月 9日 例年の時期と言えるかも(12)

「サウナはどうでした?」

帰る前の挨拶に寄ったら昼食を一緒にと招かれたので、遠慮なくご馳走してもらう事にした。

で、相変わらず美味しいキャリーナの料理をがっつこうと席に着いたら、キャリーナが聞いてきた。


「すっごく良かった!

魔術学院に作った温泉の横にも教員の人が作ったサウナがあるんだけど、なんかちょっと違う感じだったのが不思議~」

冷やした水をぐいっと飲みほしたシャルロがにっかり笑いながら返事をした。


「確かに何か王都のよりも乾いた感じだったかも?

でも、どちらにせよかなり汗をかいて喉が渇いた気がするから、しっかり水を飲まさないと脱水症状で倒れる人間が出るかも知れないですね」

アレクも水に手を伸ばしながら言った。


「エールを売っているからお金を持っていないと喉が渇いても我慢しろって感じになりかねないからなぁ。

この際エール売り上げの利益は度外視して、水も出しておくか。

どうせ酒を飲みたい人間は飲むんだし」

ちょっと考えたジャレットが肩を竦めて判断を下した。


少なくとも浮浪児や孤児院のガキどもは金を出してエールを買うぐらいだったら喰う物を買うだろうからなぁ。

そう考えると金のない弱者が飲み物を我慢して、倒れかねないから危険だ。


その点、水を提供しておいてくれるなら安心だ。


「そう言えば、浮浪児たちに洗濯を教える方は上手くいきそう?」

キャリーナに尋ねる。

ペブラン達を集めてキャリーナに纏めて引き渡したのは俺だからな。

これで家と食事の助けだけ貰っておいて、真面目に仕事をせずに金だけ貰おうとするとかスリに戻るとかって言うんだったらふん縛って船に突っ込み、帰りにジルダスへ放り出しに行く。


「清潔観念に関してはまだもう少し訓練が必要だし、洗い方のコツとかもしっかり教えていかないとしつこい汚れをちゃんと落とせないけど、やる気はあるわね。

孤児院に入って将来役に立つ人間になるようにしっかり教育を受けていく気があるならまだしも、ただ飯と屋根だけ手に入れてこちらの要求に従う気も無く将来は穀潰しか破落戸になるだけなんだったら、さっさとジルダスに強制送還するってウィルが脅したのが効いたみたいよ?

やる気だけは気の毒になるぐらいあるわ」

ちょっと微妙な表情で肩を竦めながらキャリーナが言った。


「ジルダスやケルパッサだって気候的にはパストン島と似たり寄ったりだと思うけど。

浮浪児にとってそれ程違いは無くない?」

シャルロが首を傾げながら聞き返す。


「ジルダスやケルパッサってある程度育った孤児は人身売買商人に狙われやすいんですって。

だからここにいる子達もある程度、育っているでしょ?

自力で船に乗るだけの判断力と体力があるってだけでなく、あちらに残っていると生きて成人できる可能性がかなり低いって危機感を持つ年齢になって逃げたらしいわ」

キャリーナが言った。


あ~。

ジルダスだったら呪具の、ケルパッサだったら毒や解毒剤の実験台に使うためにガキが売買されるのか。


アファル王国だったら人身売買って言ったら見目の良い若い女(場合によっては華奢な男も)が狙われやすいが、東大陸は生きてある程度の体力さえあれば顔なんざどうでもいいって言う需要があるとゼブが言っていた。


アファル王国の領事館と情報収集と安全確保の契約を結んだ時に、アファル王国人が子供を連れて来るなら目を離すなって警告する際にかなり強く念押ししていたな。


身代金が取れるとか娼館へ売れる様な服装や風貌でなくてもガキは狙われやすいから、子供を連れて来るなら絶対に目を離すなって言っていた。

まあ、アファル王国の役人や貴族や大手商会のガキが誘拐されたりしたら、ゼブの組織にも探索と救助の協力を求めることになるからな。


人身売買商人との面倒な交渉を任される羽目になりたくなかったらしく、東大陸特有の人身売買需要に関して色々と教えてくれた。


「あいつらがそれなりに良い感じに育って、島の開拓や発展にも貢献しそうだったらジルダスやケルパッサに仕入れに行く際に連れて行って知り合いのガキをスラムから勧誘してくるのも有りかも?

まあ、ちゃんと個人的に知っていて信頼できる相手にしろって言い聞かせる必要があるが」

東大陸のスラムの浮浪児なんぞ読み書きは出来ない。

だから手紙を書いて昔の仲間を誘う危険は余りないが、変に船乗りとかにパストン島は孤児に親切だって話を広めてくれなんて頼まれたりしたら面倒だ。


それぐらいだったら自分で行ってしっかり相手を選んで連れてくる方が良いだろう。

まあ、スラムの中に入って行ったら無事に帰ってくるか微妙だから護衛役な成人男性も連れて行く方が良いだろうが。


「ふむ。

まあ、それはしばらく様子を見てからだな。

上手くいきそうならありかも知れん」

ジャレットが頷いた。


来年にまた来ることになったら聞いてみよう。

と言うか、夏の休みに学院長を連れて来るんだったらその時にペブランとちょっと話をしてみても良いかも知れないな。


生活に余裕ができると昔の仲間を助けたいと思う可能性はありますからね〜

下手に不特定多数へ『ここは良いよ』なんて話を広められたらスラムの住民が大挙して来しそうw

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ日本で外国人と結婚したら、一族郎党の面倒見せられるってパターンがよくあるらしいので(白目)。 そう考えると、慎重に慎重を重ねるぐらいで丁度良いのかもしれませんね。 しかし優秀なのは島にぶ…
[一言] >ジルダスだったら呪具の、ケルパッサだったら毒や解毒剤の実験台に使うためにガキが売買される うわあ悪質な国ですね 水で洗い流した方が良いのでは?
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