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シーフな魔術師  作者: 極楽とんぼ
卒業後7年目

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1048/1342

1048 星暦558年 紫の月 8日 音にも色々あり(11)(第三者視点)

ウォレン爺視点です

>>>サイド ウォレン・ガズラート


シャルロが昨日持ってきた試作品を手に、第三騎士団の中をうろつく。

さて、誰に押し付けるか。

自分が人と会う際に使う為の試作品は二つ確保してあるが、残りは第三騎士団で会議や食堂などに使ってみて貰いたいが、感想を聞いたり効果を確認する諸事は若いのに任せるに限る。


それにしても。

相変わらず、のほほんとした顔で想定外な物を開発してくる三人組だ。

元々、完全な防音結界は存在するし機密度が高い案件を議論する場合などは安全対策を講じた上で使っている。


だが音を完全に封じられる防音結界は暗殺や襲撃に使える為、それの不正利用を防ぐ為の措置が王宮や騎士団拠点内には講じられている。なので防音結界を使うにはそれなりに面倒な手続きと安全対策が必要なのだ。

極端な安全対策が必要のない盗聴だけを難しくする魔具が売り出されたら、色々と楽になる。

まあ、情報部側の盗聴が面倒になるが、元より第三騎士団の防諜活動における盗聴はそれ程多くはない。

却って延々と無駄話に耳を傾ける必要が無くなって良いかも知れない。


それでもどこかの研究部署にこの魔具の穴を突くような道具や手段を探させるだろうが。


新しい魔具の影響を考えながら階段を上がって上層部の部屋の方に向かっていたら、副団長が前方を歩いているのを見かけた。

丁度いい。


「副団長!

ちょっと面白い魔具の試作品を入手したんじゃが。

試してみて、使い勝手や精度に関して調べて貰えんかの」


自分でやれと言われない様に敢えて年寄り臭い口調で話しかける。

儂は既に引退した人間。

知恵を貸すことはあっても働くのは現役の連中が負う責務だ。


「魔具ですか?」

忙しいのか一瞬嫌そうな顔をした副団長だったが、即座にそれを消して丁寧な物腰てこちらに向きあう。


「うむ。

盗み聞き防止になるような魔具らしい。

テーブル周辺や部屋の内部に結界を展開することで外へはっきりとした音が漏れにくくなる。

ただし完全に防音ではないから大声を出せばそれなりに騒ぎに気付ける可能性が高いので、販売制限は科されないのではないかとの話だ。

ちょっと細かい音が鳴るのでそれが気になる人間もいるかも知れぬから、そこら辺に関する感想も確認して欲しいとのことじゃ」

あのシャカシャカした音もベルの音も、深刻な国防や反逆に関わるような話題を話し合っている時に流れたら微妙な気がするが・・・まあ、ある意味深刻になりすぎなくて良いのか?


「テーブル周辺に展開できるんですか。

それは良いかも知れませんね。

ちょっと食堂にそれを設置したテーブルの一角を作ってみましょう」

基本的に表情が乏しくて感情が分かりにくい副団長だが、何やらかなり乗り気になったようだ。


「会議では使わんのか?」


「そちらも試作品の数が足りるなら試したいですが、まずは食堂での情報漏洩を何とかしたいところなので・・・」

苦い顔をしながら副団長が階段を降り始める。


そういえば、先日も何やらどこかで情報漏洩があったという話を聞いたが・・・。

「第三騎士団の団員が拠点内とは言え、食堂で機密情報を話すか?」

そんなのは魔具で対処する以前に解雇するべきじゃろうに。


「いえ、流石にウチの団員でそれは無い様ですが、使い勝手を確認して問題が無ければ全ての騎士団の食堂に設置したいのですよ。

流石に外の食事処や酒場で自分が扱っている案件や機密情報を口にする馬鹿はそれ程は居ないですし、居た場合は比較的早期に突き止めて懲戒解雇出来るのですが、どうしても内部の人間しかいないと認識している拠点内の食堂では警戒心が下がるようで・・・。

特定な案件に関しては、通常は信頼できる団員でも家門の派閥によっては騎士団内部の情報を何気なく家族に伝えた場合にそこから重大な情報漏洩に繋がることがあるという事をどうしても実感できていない人間が多くて。

もう、同じテーブルについていない人間の雑談を耳に出来ない様にしたいと思っていたところなんです」

副団長が言った。


情報を主に扱う第三騎士団の人間はまだしも、他の騎士団の脳筋どもだとそれこそ『△月〇日にどこそこの倉庫を抜き打ち調査する』とでもいうような露骨な作戦情報でない限り、騎士団の動きや方針を拠点内の食堂で話していても問題が無いと思っている者は多い。


入ったばかりの見習いや給仕などもいるし、臨時雇いの人員だって食堂の利用は許されている。捜査などでは派閥なども考慮して人員を選んでいるので情報漏洩は不味いと上が考えているというのを理解していない人間は、どれだけ教育しても暫くしたら機密保持の基本が頭からすっぽ抜けていく。


そう考えると、各テーブルごとに話が漏れないようにするのは良いかも知れない。

まあ、それだけの予算をどこから捻り出すかは頭が痛い問題になるかもだが。


うっかり機密漏洩した人間から巻き上げた罰金でも使うか。



食事どきの身内どうしの雑談って、意外と他部署の人間には知らなかった目新しい情報が一杯なこともありますよね〜

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、飲食・喫煙・甘味辺りは口が軽くなる筆頭ですからねぇ。 (緊張を取り仕事に集中するための行為だけど、同時に弛緩しすぎて愚痴が出るんだよ) そういう意味では甘味室と喫煙室を用意して、そこに…
[一言] 裁判所近辺の赤ちょうちんにいけば公判の内容がわかるなんて昔は言われていましたねww 官僚のいく飲み屋でも同じ
[一言] 情報部には必須かも知れませんね
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