1012 星暦558年 藤の月 11日 棚以外にも使えるよね?(9)
「これってさ、元の嫌がらせっぽい形に戻したらどうかな?」
赤ちゃん用のオモチャをどう改造するかを話し合おうとお茶を淹れて魔力が特に無いメイドレベルで動かせる様にするにはどうするか悩んでいたら、シャルロが思いがけない提案をした。
「え、戻すって?」
温めたポットに茶葉とお湯を放り込みながら聞き返す。
「元々さ、これってカタカタと棚の中で動いて音がして安眠を妨害するタイプの嫌がらせだったんでしょ?
軽い箱型のオモチャが板にでも当たってカタカタする場所にカサカサ音がするような素材を付けて音を立てさせて、更に箱の上に軽い飾り紐を付けたらそれがちらちら揺れるしで、赤ちゃんの注意を引くんじゃない?
別に大きく回らなくても良いんじゃないかと思うんだよね」
シャルロが最初に魔術回路を試した試作品の箱っぽいのを取り出しながら言った。
最初の試作品は魔力を吸収する部分を大きくするためにそれなりに大きな箱だった。だが同調用の魔術回路を使い、赤ちゃんの周辺から魔力を吸収するのではなく大人が端末を触れてそちらで魔力を吸収させる感じだったらオモチャ本体の方は小さく揺れる為の魔術回路を刻めるだけの大きさがあれば良い。
そうなると比較的お手軽なオモチャになるか?
「小さいのだったらちょっとしたお出かけにも持って行って親が人と話している最中に子供をあやすのにも使えるかも知れないな」
アレクが頷きながら相槌を打った。
「寝転がっている赤ちゃんの上に紐を垂らす為に高さを出す棒が必要だが、そこはちょっとした組み立て式でも良いか。
軽い素材で作るんだったらしっかりした棒である必要も無いし、良いかも知れないな」
ある意味、貴族の女性なんかが持っている日傘よりも軽くて華奢な作りで構わないだろう。
というか、外に出かけるんだったら赤ちゃん用の日傘って必要なんじゃないか?
そう言うのにぶら下げられる形でもいい気もするが・・・そこら辺は取り敢えず試作品を出来るだけ軽く作ってから、どこかから吊るせる仕組みを付けられない考えれば良いか。
ということで軽い箱にちゃちゃっと魔術回路を刻み、薄い飾り紐を付けてちょっとした三脚付きの棒に吊るしてみたのだが・・・。
「箱と一緒に下の部分が動くとカサカサ音がしないな」
ゆらゆらと動く箱と飾り紐を見ながらアレクが言った。
「軽いから一緒に動いちまうんだな」
考えてみたら、重い箪笥を揺らしてカタカタ中の物に音を立てさせる仕組みって要は箪笥の中の物って極僅かに素早く動くだけだったら箪笥と一緒に動かないから音が鳴っただけなんだよな。
オモチャだとその下に付けてあるカサカサ音がする紙も軽いから、一緒に動いてしまう。
「もう箱の中に小さな欠片でも入れて、それが揺れて音がチョットする程度でもよくない?
どうせ人がいるリビングとか食事処だったら周囲の音で小さなカサカサ音なんて聞こえなくなるんだろうし」
シャルロが下に取り付けた触れるとカサカサ音がする紙を取り外し、それを小さくちぎって箱の中に幾つか放り込みながら言った。
「ね?
静かだったら多少は音が聞こえるでしょ?」
共鳴端末の方を握って一歩離れながらシャルロが言う。
ゆらゆらと箱とそれに繋いだ飾り紐が動き、それと一緒に中で何かが擦れている音が微かに聞こえる。
「なんだったら、この中の物有りと無しで赤ちゃん相手に試して、どっちの方がより効果があるかを確認してみたらどうだ?
微かな音が聞こえる方が赤ちゃんの好奇心を引くかもしれないし、小さすぎて聞こえない様だったら意味がないかもだし。
赤ちゃんの聴覚ってそこまで極端に良い訳でもない気がするから、極端に拘る必要はないと思う」
アレクが提案する。
あれ、そう言えば赤ちゃんってあまり耳が良くないんだっけ?
確かに、盗賊時代に赤ちゃんが寝ている部屋に隠れていたことがあったが、うっかり音を立ててもあまり反応しなかったかも?
寝ていることが多い赤ちゃんだったから単に寝ているだけだったのかと思ったが、もしかして音があまり聞こえていなかったのか?
かなり図太く、殆ど泣かない赤ちゃんだったからなぁ。
父親は成金の微妙な野郎だったが、あの赤ちゃんは大物に育ったかもしれない。
今度どうなったのか、調べてみようかな。
生まれてすぐは赤ちゃんの聴覚って大したことはないでしょうが、どのくらい経ったら成人並みになるんでしょうね?




