帰還
訂正(8/17 5:42)
戦闘描写に修正を加えました。
アレから俺は師匠に導かれるまま、知っている道まで帰って来た。
一体あそこは何だったのか、何で学園内に敷地があるのか...知りたいことはいっぱいあるけど、多分今の俺じゃ理解できない何かがあったんだと思う。
外の時間はそこまで過ぎていなかった。30分ほどだろうか。
…1800年くらい修行してたってことか...?
まあいい、とりあえず今は急いで戻らなければ。
そう思って俺が駆け出すと、違和感を覚えた。
…速い。速すぎる。
景色がどんどん後ろに流れていく。俺は普通に走っているつもりなのに...これが初めて空を飛んだ小鳥のような気持ちか。
気づけばすでに第1校舎の前だ。やはり修行の成果が出ているのだろうか...
暇つぶしに剣を振っていると、先生とタル坊がやって来た。なんかいっぱい人連れてきてる。あの生徒たちは誰なんだ。
「『芽』クラスの落ちこぼれ...逃げずによく来たとほめてやりたいところだな!」
タル坊がそう言うと、他の生徒たちは口々に俺を罵り始める。
「実力主義のこの学園において、『芽』のような落ちこぼれは必要ない!」
「アレが木刀しか使えないっていう噂の?かわいそ~」
「ヴェルディアもろくに使えん分際でよく入学できたな!」
おかしいな。この学園は学生を全て平等に見ていたはずだが。実際はそうではなかったらしい。
しばらく耐えていると、先生が口を開く。
「ヴェルディアは使用禁止、相手に致命傷を与えるのはナシ。それ以外なら何をしてもよい、相手が降参したら勝ち...。これでいいね?」
「あぁ!落ちこぼれにはこのくらいで十分だ!」
「それでいいぞ。」
…相当舐められている。ヴェルディアを使わなくても俺はコイツに勝てると思っているのだろう。
「『開花』クラスの俺がお前に格の違いってものを見せつけてやるよ!」
タル坊の威勢がいい。しかし、何があるかわからない。全力で相手しよう。
「それでは...始め!」
審判役の先生が試合開始の合図をする。
「覚悟しろ、落ちこぼれが!」
そうして、彼が突きの姿勢を取ったまま「歩いて」来る。いや、歩くより遅い。
舐めているのか?いくら俺が『芽』だからって、舐めてると痛い目を見るぞ。
そう思い全力で手を払いのけると...
「へぶッ!!!!!!!」
盛大に吹き飛んでいった。スーパーボールのようだ。
おかしい。こんな力はなかったはずだ。
周りがポカンとしている。明らかに動揺しているのが目に見えてわかる。
「舐めるなァ!!!!!」
まだ攻撃してくる元気があるようだ。そうだ。アレを使ってみるのもアリかもしれないな。
「鳳仙花!」
模擬戦用の木刀を5回振るうと、斬撃が音速を超え、衝撃波を伴ってタル坊に届く。
「ぐへぇッ!!!!????」
飛んで行ったタル坊の体に5回の打撃。鳳仙花は、衝撃波を引き起こすとともに、自身が放った斬撃を飛ばし、相手に当てる技なのだ。
ぶっちゃけ衝撃は斬撃を飛ばすための副産物なのだが...
その後、タル坊の傍に一瞬で近づき、首筋に剣を立てる。
「アイツ今何をした...?」
「ユンタル様が吹っ飛ばされた!?」
「それになんだあの速度!?先生より早いだろあれ!?」
そういう声が聞こえてくる。そういやタル坊はユンタルって名前だったな。
「こ、降参だ...もうやめてくれ...」
…やりすぎてしまったかもしれない。完全に戦意喪失してしまった。
「で?勝者はどっちなんだ?火を見るよりも明らかだと思うが。」
そう審判に言うと、慌てたように勝利宣言を行う。
「...ッ!勝者、リオール!」
おかしい。勝敗が付いたというのに、一切の歓声がしない。
それどころか若干のざわつきが広がっていっている。
視線も痛いので、俺はさっさとこの場を離れることにした。
歩きながら、俺は考えることがあった。
「それにしても、タル坊って『開花』クラスだったよな?何で俺が勝てたんだ?」
「そりゃぁ坊主、お前が強かったからに決まってるじゃねぇか!お前、仮にも自分が1800年修行したことを忘れたのか?」
「それもそうか...剣を振ってるだけだったから、ほとんど効果がないと思ってたよ」
「基礎は何よりも大事だ!技を磨くのもいいが、あまり頼りすぎるなよ?」
「わかったよ師匠...。」
少しの反省点を抱えつつ、クラスへと向かっていると...
「1年『芽』組、リオール。至急学園長室まで来ること。」
そう告げる校内放送が。
すまん、帰ってもいいか?
ここまでお読みいただきありがとうございます。
入学直後のドタバタはひと区切り。続きが少しでも気になったら、評価やブックマークで応援していただけると励みになります。