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オーウェンの決意

「イゾルデ、動線を切れ!」

「了解!」

斧が地を叩き、大地から鋭い棘が列を成して突き出す。リリアとジェムの間を断ち割るようにして伸び、二人を分断した。


「ッ……!」ジェムが舌打ちをし、跳躍しようとするが...


「射線、確保。」

ザミエルの魔弾がその足元を縫い止める。ジェムの動きが鈍り、軽快なステップが乱れる。

「ぐっ……!」


その隙を逃さず、俺は木刀を振り抜いた。短剣を弾き飛ばし、ジェムを壁際へと追い込む。


「リリア!」

俺はすぐに標的を切り替える。杖を構えて花粉を撒こうとした彼女に斬りかかる。

互いの武器が火花を散らし、リリアの幻覚が空気を揺らす。だが...


「そんな幻覚、もう通じない!」

棘の列が風の流れを変え、花粉の拡散を阻んでいた。視界が鮮明になった瞬間、俺は力で押し切り杖を弾き落とす。幻覚が霧散し、リリアの目が驚愕に見開かれた。


「オーウェン!」

俺が叫ぶと同時に、ブルーノの義手が再び膨張した。

「今度は……俺が止める!」


オーウェンの咆哮とともに拳が叩き込まれる。

ズン、と重音が響く。

触れた瞬間、またしても強化が掻き消えた。ブルーノの巨体が大きく揺らぎ、膝が沈む。


「ここは私が仕留める!」

イゾルデが棘を操り、巨体を絡め取った。何重にも巻き付く棘が鉄のように締め上げ、ブルーノの動きを封じ込める。


「記録が……!」

ルキウスの顔に焦りが浮かぶ。必死にノートを掴み直すが、ページは破れ、紙片が宙に舞った。


「総攻撃だ!」

俺の号令で全員が動く。


オーウェンが巨腕を正面から受け止め、強化を消す。


「今だ、イゾルデ!」


オーウェンの声に呼応し、イゾルデが棘を伸ばしブルーノの足を絡め取る。


バランスを失った巨体に、ザミエルの魔弾が顎を撃ち抜き、追い討ちにオーウェンの拳が叩き込まれる。


轟音。巨体が崩れ、ブルーノは意識を失った。


杖を振ろうとしたリリアに俺が踏み込み、木刀で軌道を逸らす。

「幻覚なんてもう効かない!」

イゾルデが棘を突き上げて足を払う。よろめいた瞬間、俺の木刀が鳩尾を突き抜け、息を奪う。

そのままリリアは崩れ落ちた。


「まだ、まだぁっ!」

ジェムが跳躍するが、ザミエルが先読みした弾で進路を封じる。

「狙い通りだ。」

動きが鈍ったところを俺が迎撃し、木刀で短剣を弾く。

背後から迫ったオーウェンが拳で押し飛ばし、壁に叩き付けられた衝撃でジェムは気を失った。


最後に残ったルキウスはノートを握りしめながら後退する。

「こんなの...集めたデータにないぞ…!」


だがイゾルデの棘が地を割って進路を塞ぎ、俺とオーウェンが左右から迫る。


「実験は終わりだ!」


ザミエルの弾がノートを撃ち抜き、気を取られた瞬間に俺の木刀が側頭部を打つ。

ルキウスは膝を折り、そのまま意識を手放した。

「勝者、『満開』クラス!」


歓声が爆発する。観客席の熱気が嵐のように押し寄せ、全身を震わせた。


「……完敗、か。」


ルキウスがゆっくりと立ち上がり、破れたノートを抱えたまま白衣を払った。


「だが、最高の実験結果が得られた。これは……有意義すぎる。」


彼らの顔には悔しさよりも満足感があった。

戦いに敗れても、研究者としては収穫を得たのだろう。


退場の際、ルキウスは振り返り、俺たちを見据えた。

「君たちのデータ……まだまだ取りたい。いずれまた、実験の協力を頼むことになるかもしれないな。」


その声音には敵意ではなく、研究者としての純粋な興味が滲んでいた。



「中盤はどうなるかと思ったけど...案外何とかなったじゃない。」

「途中から全く攻撃が通じなくなってな...研究者の維持を感じたよ。」


ヴァレリスが話しかけてくる。確かに相手は強敵だった。

そうだ。一番の功労者を労うのを忘れてしまっているじゃないか。


「お前のおかげだオーウェン!お前のヴェルディア、すごかったな!」


「お前もだ!リオール!お前の指示のおかげで助かったぞ!」


そう、あそこでオーウェンがブルーノを弾き飛ばしていなかったら、俺たちの心は折れていただろう。

ところで...


「オーウェン!お前のヴェルディア!『花』になってるじゃねぇか!」


そう、オーウェンが花開いた。恐らくだが能力は、『触れている間ヴェルディアを無効化』。

どんな能力でも一撃で仕留められる可能性を秘めた恐ろしい能力だ...。


そして、俺たちの決勝戦の相手が決まった。


決勝戦の相手は...


「やっぱり来るか...!『グラディオラス』!!」


『グラディオラス』に決定したのだった。

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