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繋がる裂け目

…すごいな。ペイル。


俺が抱いた感想は、シンプルなものだった。

ペイルの裂け目は確かに強力だし、本人の身体能力もかなり高い部類だ。


だがしかし...あれほどまでとは。

ペイルは弱気がゆえに、あまり裂け目を使いたがらなかったし、なかなか相手に攻撃を加えることが出来なかったはず...


だが今はどうだ。彼は積極的に裂け目を作り、相手に攻撃を加えている。


ヴァインやアラエルの励ましもあるんだろうが...


一番はオスカーだろう。彼が何かを口にした途端、ペイルの動きが明らかに変わった。

それに表情も変わった。ペイルからは一切の怯えを感じられない。

彼の手の甲から出た光も気になるが...今はそれどころじゃないな。


ペイルに何があったんだ?だが、それを今の俺には知る術はない。

————————————————————————————————————————

「……僕はもう、怯えない。」

ずっと震えていた。迷惑をかけるのが怖くて、背中を向けてきた。でも――


「仲間がいる限り、迷う理由はない。」

ヴァインさんも、アラエルさんも、オスカー君も…みんな信じてくれた。なら、僕も応えなきゃいけないんだ。


「裂け目は闇を裂く光――その先に勝利があるなら、僕は幾度でも開こう。」

これは逃げ道じゃない。僕が切り拓く、前へ進むための道だ。光は必ず暗闇を貫く…!


「迷惑を恐れて俯く自分は、ここで終わりだ。」

臆病で、弱くて、役立たずだと笑われる自分はもういらない。今日で終わりにする。


「たとえ影に覆われても、希望の道は必ず咲き誇る。」

闇に閉ざされた大地にも花は咲く。なら、僕の裂け目からだって、きっと希望を咲かせられるはずだ。


「今…僕の力で、みんなを勝利へ導く!」

恐怖も迷いも捨てた。今こそ、ぼくが皆を支える時だ!

今ならわかる...この力の使い方!


「皆!裂け目を使って!」


「ペイル~...いい顔になったじゃん~...。」


「はい...!ありがとうございました!」


そうして、皆が僕の裂け目に潜る。そして....


「すごいねペイル~...これ、力が湧いてくるよ~...。」

「あらあら~?今なら何でもできそうな気がするわ~」

「おやおや...これほどまでとは、驚きましたねぇ。」


「よし…!行くぞ!」

裂け目を駆け抜けたヴァインさんの鎖が、まるで生き物みたいに鞭使いを絡め取った。


さっきまでなら簡単に振りほどかれていたはずなのに、今は違う。相手は抵抗する間もなく地面に引き倒されていった。


「いただき~♪」


鎖がきらめき、敵の体力を奪い取っていく。


続いてアラエルさんが裂け目から飛び出し、羽ばたき一つで宙に舞う。

鉄の羽が流星みたいに撃ち出され、警棒の男の足を正確に撃ち抜いた。


「ふふっ、立てないのなら退場よ~?」

さらに羽の雨を浴びせかけ、彼を気絶させた。


残るはガロさん。大盾を構えるリーダーだ。

衝撃を吸収して放つ厄介な相手。でも……今の僕らなら。


「抵抗は無駄だ...『パエオニア』!」

盾を叩きつけた瞬間、衝撃波が広がる。


だけど...!

「皆!」

僕の声に応じて、仲間たちが次々と裂け目へ飛び込む。

衝撃波は空を切り、そして次の瞬間、四方から仲間が姿を現した。

ヴァインさんの鎖が盾を絡め取り、アラエルさんの羽が縁を切り裂く。


「僕を忘れてしまっては困りますねぇ...!」


さらにオスカー君の刃が裂け目を抜けて飛び出し、死角から迫った。

そして僕も逃げずに踏み出す。

「はぁぁぁぁッ!」

大鎌を振り下ろす。


盾は衝撃を吸収しようとしたけれど、仲間たちの四方八方からの攻撃には対応しきれない。

そこへ僕の一撃が叩き込まれ...

能力は不発。ガロさんは大きく体勢を崩した。

「なっ……!」

驚くガロさんを裂け目の後ろから伸びたヴァインさんの鎖が捕らえ、動きを封じる。


「これで……終わりですッ!」

全員の力が重なり、彼は地面に叩き伏せられた。

「勝者...『ナルキッソス』!」


学園長の声が響いた瞬間、観客席から大きな歓声が上がる。

僕は大きく息を吐いた。

……勝ったんだ。

怯えて逃げるだけだった僕じゃない。

仲間と一緒に、ちゃんと掴み取った勝利だ。

————————————————————————————————————————


すごかった。その一言しか出てこない。

あの弱気だったペイルとは思えないほどの強さだった。


周りからはざわめきが聞こえてくる。それもそうだろう。ぽっと出のクランが、治安維持の『ペオニア』に勝ったのだから。


「ペイル!お前に任せて良かった!」


素直な感想をペイルに伝えると、彼は少し照れくさそうにしながら、


「僕はやるべきことをやっただけですよ...他の皆に感謝してください...。」


と言った。本人の性格は大きく変わっていないようだ。安心した。

それで...さっきから気になっているんだが...

「手の甲のそれ...『花』だよな...?」

「はい。僕がくじけそうになった時、皆の言葉で励まされて...気づいたら開いてました。」


彼の手の甲には、『蕾』ではなく『花』があった。それすなわち彼の力が増したという事。

だが...俺も負けるつもりはない。


「ペイル、俺は...」


「おうペイルゥ!スゴかったじゃねェかよ!!」

「...さいこ~だったよ~」

「私も頑張らないとね!皆に負けないように!」

「あっ...ちょっと...。」


それを言い終わる前に、ペイルはクラスメイトたちに連行されて行ったのだった。

次からは俺の出番。ヴァインやアラエル、オスカーに...ペイル。彼らの戦いに負けないようにしよう。

俺は決意を強く固めるのだった。

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