魔弾の射手
アレから特訓を重ね2ヶ月目になった。時間がたつのは早いものだ。ただ単に俺があの遺跡で修行をしていたからかもしれない。
そして、遠距離チームと合流する。今日から彼らと特訓を重ねるのだ。
「オウオメェ等!よろしくなァ!」
急に元気な女子が言葉をかけて来た。
すごく声が大きい。師匠と同じタイプだ。
名前は...えっと確か...
「...オルテア、急に大声を出すな。」
「あァん?クラスメイトなんだしいいだろうがよォ、ザミエルゥ...」
そうだそうだ。オルテアだ。そして、オルテアを制した男子がザミエル。
どちらも遠距離チームの中心人物だ。
そして...
「アラエル~...だるい~...帰りたい~...」
「ヴァイン、まだ今日は始まったばっかりよ~?」
アラエルとヴァイン。ヴァインの方はこんな感じだが、戦闘能力自体はかなり高い。
アラエルはいつの間にかヴァインのお母さん的存在になっていた。内に秘めている母性が爆発したのだろう。
「まずは特訓について話し合おう。とりあえず団体戦の練習を始めよう。お互い相手の射程とのいい立ち回りは分からないと思うから、始めは個人戦で行こうか。」
そう。本番は4対4なのだ。このまま個人戦の練習を続けていてもダメだと思い、オルテアに提案をする。
「あァ、そうだなァ異論はねェ。戦りあう相手は適当でいいよなァ?」
「こちらも異論はない。それじゃあ始めようか。」
そして、話し合いの結果...俺の最初の相手はザミエルになるのだった。
ザミエルか...彼の能力は俺もよくわかっていない。銃を使うということは辛うじてわかるが、それに何がついているのかがよくわかっていないのだ。
そして、各々散った後...
「リオール...負ける気はない。」
ザミエルは寡黙な人物だ。しかしやるべきことはしっかりとやる仕事人タイプ。俺が手合わせするのはこれが初になる。
「あぁ、こちらこそ負ける気はない。よろしく頼む。」
「『ローザ・アルバ』...来い。」
彼の武器の形状は、彼曰く『ライフル』と呼ぶものらしい。
引き金を引くと弾丸が発射されるという扱いやすい武器ながら、速度も恐ろしく速い。
とても厄介なヴェルディアだ。
始まったその瞬間、彼がヴェルディアをこちらへ向かって撃つ。
動体視力にはある程度の自信がある。
ギリギリそれらの弾丸を躱し、彼に接近すると...俺の背中に激しい衝撃が。
「ぐっ...!」
出たな...彼のヴェルディアの能力。
彼のヴェルディアの能力は誘導弾。指定した対象に向かって弾が飛んでいく。
それはカミヤ先生との手合わせで見ていたのである程度理解していたつもりだが...
「俺の魔弾は確実にお前を狙う...。」
「厄介だな...!」
攻撃を続ける。接近しなければ相手の思うがままだ。
その度に彼が弾丸を放ち、それに被弾する。
しかし、その度に若干の『違和感』を俺は感じ始めていた。
「ザミエル君...君のヴェルディアの能力、確実に俺に当たるのか?」
「...ほう?なぜそう思った?」
「勘だよ...ッ!」
彼の反応を見るに、やはり彼のヴェルディアの能力は誘導弾ではない...!
試しに、俺は彼に近づくふりをして、彼の弾丸が俺に当たるその時、後ろへと方向転換をする。
弾丸は俺が『いたであろう場所』へと直撃する。やはりか。
彼の能力は誘導弾でもなんでもなく...
予めルートを決めておける弾丸...ってことか!
俺はてっきり、彼の能力は誘導弾だと思っていた。いや、『思わされていた。』
理由として、カミヤ先生は弾丸のその全てを弾いていたというのが挙げられる
…やっぱあの人バケモノだな...。
タネがわかれば、あとはフェイントを入れれば...!
そう思った瞬間、俺が動いた方向へと弾丸が曲がって来た。
「気づいたか...。それなら、気づいた前提で軌道を組む...それだけだ。」
「心理戦ってことかよ!」
ここからは心理戦だ。相手が予想できない動きをいかに行うか。それが重要になってくる。
軌道を読んで、近づく!それだけの簡単な作業だ!
…待て、いいアイデアが思いついた。
「一気に行くぞォ!」
「来い...。」
そして、俺はヴェルディアを投げ、空中で後ろから蹴る。
木刀は俺の蹴りの勢いを受け、スピードを増してザミエル君へと近づく。
「何...ッ!」
この世界に生きる多くの人にとって、ヴェルディアは生命線だ。
だから、ヴェルディアを能力の関係以外で『手放す』なんていう思考にはならない。
だが俺のヴェルディアはただの木刀。普通の武器と同じだ。
「ヴェルディアは持ってなきゃいけないなんて誰も決めてないよな!」
そして、木刀は彼に直撃した。
「ぐふっ...見事...。」
そして倒れ込むザミエル。だが今回の勝利は、彼がうまく力を出せなかったのが原因だろう。
あの武器は障害物が多いようなフィールドで、一方的に打てる場合に大いに役立つ。
フィールド次第では俺は勝てなかったかもしれない。練習の形式に感謝するべきだろう。
「ナイス勝利!それにしても...よくヴェルディアを投げようと思ったね!」
「おめでと。アンタ、結構えげつないことするのね...。」
「リオール!キミは...いつも俺の発想を超えてくれる!」
各々祝福してくれる。だが今回の勝利は俺一人の力ではない。皆との特訓があったからこそ、彼のスピードに対応することが出来た。
ちなみにみんなの戦績は
オーウェン 敗北
イゾルデ 勝利
ヴァレリス 勝利
だったようだ。遠距離への攻撃手段が一切ないオーウェンは厳しかったか。
だが、本番は4vs4。遠距離への対抗手段がなくても大丈夫だ。
そう考えていると、遠くから声が。
「テメェ等!さっさと次行くぞォ!」
「だるい~...。でも勝ちたい~...」
「ヴァインがやる気になってくれてうれしいわ~。」
「負けたままでは終われない...。」
そうして、遠距離チームとの特訓の時は流れる。




