岩の戦斧
その日から、実習の授業では各々自由に特訓することが認められた。
先生は基本的には傍観しており、どうしてもわからない時にだけ質問すれば答えてくれる。
修行をするにあたり、先生にヴェルディアで打ち込んだ時の結果をもとに、それぞれのヴェルディアを近接、遠距離、特殊という分類に区別した。
理由としては、そうすればいろいろな戦闘スタイルに対応できると思ったから、それと、2つのチームが練習している間、もう一つのチームが休めるからだ。
チームメンバーは、
近接が俺、ヴァレリス、イゾルデ、オーウェン。
奇遇にも、全員俺と親交のある人物だ。
遠距離がザミエル、アラエル、オルテア、ヴァイン。
チラッとそちらの方を確認すると、弾幕が飛び交っている。
それぞれが各々のヴェルディアを使い、早速特訓を始めているようだ。
そして...どれにも該当しない、または能力が特殊な者は、オスカー、ペイル、アレクセイ。
オスカーとアレクセイが談笑をしている横で、ペイルがなかなか輪に入り辛そうにしている。ペイルはどうやらシャイな子のようだ。
一時集合し、みんなで話し合った結果、スケジュールが決まった。
近接チームはこうだ。
1ヶ月目はチーム内での練習。
2ヶ月目は遠距離チームとの特訓。
3ヶ月目は特殊チームとの特訓。
「というわけで、今月はチーム内練習になった。初めての練習は...各々戦ったことのない相手と戦った方がいいだろう。」
「私は賛成よ、多少でも慣れてる相手と戦うより、初めての相手との方が楽しそうだもの!」
「私もそう思う!この前の模擬戦でヴァレリスちゃんとは戦ったから...私はオーウェン君かリオール君?」
「うおお!この前の模擬戦では初戦でぶっ倒れて他の人の戦いを見ることが出来なかったからな!楽しみだぜ!」
みんな賛成のようだ。そして、それぞれ戦ったことのない相手と戦えるように調整し...
「というわけで、よろしくね!リオール君!」
俺はイゾルデと戦うことが決定したのだった。
「じゃあ行くよ!『カレンドゥラ!」
「いつでも来い!」
イゾルデのヴェルディアは知っている。周りにあるものを吸収し巨大化。その大きさに加え、形状に多少の自由が利く...便利な能力だ。
早速、周りの石を吸収した彼女が、その角ばった形状の戦斧を振りかざしてくる。
そしてそれを俺は避ける。
カミヤ先生との戦いのときであれば、彼女は一撃必殺型だ。攻撃を躱されたり受け止められたりするとその後隙が出来る。
「もらった...!」
その瞬間、地面から岩が突きだしてくる。俺を一直線に狙ってきたそれに、俺は回避行動が遅れ当たってしまう。
「...予想外だったな。一体どういう原理だ?」
「それを教えちゃったら面白くないでしょ!」
「ははっ...それもそうだな!」
一進一退の攻防が続く。しかし、俺が攻めようと思ったタイミングに合わせるかのように、岩が地面から突き出してくるのだ。
何発か食らってしまった俺とは反対に、彼女は無傷だ。
彼女は能力を隠していて、実はこちらが本命だった...ということも考えたが、それは考えづらい。隠す理由がないからだ。この不意打ちのために今まで隠していたとは考えにくい。
「『鳳仙花』!」
遠距離からの攻撃はどうか。そう考え、俺は鳳仙花を放つ。
斬撃が飛んでいくが...地面から突き出してきた岩によって防がれる。
徒労に終わったかと思ったその時...俺は気が付いた。彼女の武器が少し小さくなっていることに。
…なるほど。そういう事か。
一つアイデアが浮かんだ。試してみる価値はあるな。
次に岩が地面から出てきた時...その時がチャンスだ。
俺は接近し連撃を叩きこむ。その間、地面に『武器が接しないように』動く。
耐えかねたのか、彼女は距離を取った。この瞬間を待っていた。
「『鳳仙花!』」
俺は鳳仙花を後ろに放つ。衝撃で俺は彼女の方へと高速で吹っ飛ぶ。
そして...彼女に一撃を入れる。
「ハッハァ!やっぱりな!お前のその岩、武器に纏わりついてる岩を地面に刺して出してるんだろ!?」
そう、彼女は今まで武器が地面に接したときにのみ岩を出していた。
そして、先ほど武器が小さくなっていたこと...これらを加味して考えると、これしか考えられない。
「バレちゃった!でもね、勝負ってのはここからだよ!」
実際、意表をついてしか彼女に一撃を加えられていない現状がある。
しかし、俺は気付いている。彼女の能力には「弱点」があることを。
隙をつくためにも、岩を使わせなければならない。
そのためには何発か食らうことを覚悟しなければならない...
でも、その程度で負けるようじゃ俺が目指す『最強』には程遠い!
「どうしたのリオール君!急に動きが単調になってるよ!?」
俺の動きが単調になったのを見て、彼女が岩を出す。
何発もまともに食らってしまうが、全て急所は外してある。
そして、ついにその瞬間がやって来た。
「やっと来たかァ!」
「もしかしてリオール君...これを狙って!?」
彼女のヴェルディアはもう何も纏っていなかった。
そう。俺が何発も喰らって待ち続けたその瞬間...弾切れだ。
「ヴェルディアに纏わせることはできても...短時間で纏わせることはできないみたいだな!」
そして彼女の首筋で木刀を寸止めする。
「やっぱりリオール君は強いや...私の負けだよ。」
そうして、俺はイゾルデに勝利するのだった。
感想を語り合っていると、話しかけてくる声が。
「リオール!そっちはどうだったんだ!?」
ちょうど同じタイミングで向こうも終わったらしい。
「もちろん勝ったさ。そっちこそどうだったんだ?」
ヴァレリスとオーウェン、炎使いと、炎のようにアツい男。
面白い組み合わせだったが...結果はどうだったんだろうか。
「もちろん勝ったぜ!リオール!俺もキミに負けないように頑張った甲斐があったな!」
オーウェンが勝ったらしい。しかしここ最近ヴァレリスには負けが続いている。これをきっかけに落ち込んだりしなければいいんだが...
「勝ったといっても辛勝でしょ!ほら行くわよ!今度は負けないんだから!」
「ちょっと待ってくれ今はヴェルディアの反動で...うわあああああ!!!」
哀れなオーウェン。ヴァレリス(バトルジャンキー)に目をつけられてしまったからには彼はもう...
「助けてくれリオール...助け...!!!」
あぁ...しばらく彼は戻ってこない。花でも手向けといてやろう。




