俺の志
「それって...俺がどう思ってるかってことですよね?」
「さる事なり。君ははたみづからにも手に余るほどの力を持てる可能性ありさうならずや。その力をいかが使はむとす?」
…俺の力についてか。
色々なことがあったが、一番印象に残ったのは、エレノア先生の、「君のヴェルディアは『危なすぎる』」という一言だ。
あの先生たちを持ってそう言わせる程の力...一体どれほどなのだろうか。
「俺のヴェルディアについては...とても気になります。どうして使えないのかも気になるし...。」
これは本音だ。誰だって自身が使えない、危なすぎると言われた力はとても気になる。俺は強くなりたい。俺より力の強い人間をここで見た。カミヤ先生や学園長、おそらくエレノア先生も。
「でも...俺はヴェルディアに頼らない方法を見つけたい。カミヤ先生と同じ、あるいはそれ以上に、俺の力で強くなりたいんです。」
これも本音だ。実際に見てわかった。俺が目指すべきはカミヤ先生だ。ヴェルディアに頼らないあのスタイルは、俺が憧れるにはふさわしすぎるものであった。
「それと同時に...俺は『最強』を目指したいんです。ヴェルディアも、俺の力も、両方を使って。矛盾してますよね。ははは...。」
そんなバカげた話を聞いて、先生は笑うことをせず、真剣な顔をしていた。
「ふむ。この物語は後よりするあらましなれど...近頃学園のクランの争うクランバトルがあり。」
クランバトル...聞いたことがある。学園が所有するクランが、お互いに競い合うためにトーナメント形式で対戦を行う祭りだ。
丁度この時期にあるということは知っているが...それが何だろう。
「リオール君。汝がその祭りで一度も負けざらば...我が力を伝授することもやぶさかならず。『最強』を志さば...さばかり易く行ふべし。」
…!!!
カミヤ先生の力...その一端でもいいから吸収できるというのならば、俺も本気で取り組まなければならない。
最強を目指すなら、それくらいできるだろう?
その言葉は俺に深く突き刺さった。負けているようでは最強とは言えない。
決意を固め、俺は先生に返事をする。
「はい。ボッコボコにしてやりますよ。」
そう答えると、先生はにっこりと笑みを浮かべ...
「その意気ぞ。その志に負くまじく努力せよ。」
温かい言葉をかけてくれるのだった。
先生ェ....!!!!
「『ヒガンバナ』のことは俺に任せろ!元の持ち主として、お前よりは理解しているつもりだからな!ガハハ!」
師匠ォ....!!!!!
あれ...そういや何か忘れているような「キーンコーンカーンコーン」
アッ!!!!授業!!!
ふと横を見ると先生がいない。あの人多分もう教室についてるだろ!!!!
急いでクラスへと向かうが...
「リオール君。二日目さりとて気を緩むべからぬぞ~。」
事情を知っているはずなのにそんな風に声をかけてくる。
不服だが席に着くと、ヴァレリスが話しかけてきた。
「アンタ、朝早く出てたわよね?どうしてこんな遅くなったの?」
「アハハ...ま、色々あってね...」
本当に色々(主にヴェルディア関連)なことがあった。
「ふうん...遅刻しすぎるんじゃないわよ。」
そんなふうに会話をしていると、先生が口を開いた。
「ではこれより...年ごろ恒例、クランバトルにつきて説明を始む。」
なるほど...先ほど話していたものか。
「さて、何ゆえここにて語らふか……汝らは八つ目のクラン、『ナルキッソス』なり。すなわち、汝らのクラスがクランとして出場する故に他ならぬ。」
確かに、俺らのクラスはクラス単位でクランということは伝えられていた。だが、満開クラスは今年からの制度。つまり...
「カミヤ先生!それって上級生とも戦わなきゃいけないってことですか!?」
イゾルデが質問してくれた。答えは予想はできるが...。
「然り、かくのごとし。『精鋭』と名乗る者ならば……これくらひは当然のことなり。」
クラスがざわめく。あ、オーウェン君が興奮しすぎて汗かきまくってる。
後で喜びを分かち合うことにしよう...
「今年もまた、トーナメント形式にて行はん……一回戦の相手は『ペオニア』なり。」
『ペオニア』...主に治安維持を行っているクランだ。
治安維持を行っているだけあって...生徒の実力はかなり高い。初戦から苦戦を強いられるだろう。
「一戦につき四人を選びて戦ふ。すなわち、一人、二度出場する者も出んということなり。されど……これをリオールに任せんと思ふ。」
先生がこちらを見て言う。理由は間違いなく『アレ』だろう。
「はい!全力で務めさせて頂きます!」
「開催は三か月後……皆、敗ることなきよう、励むがよい。」
クランバトル....
その言葉は、全員の心に火をつけた。そして、その火に油をくべたのが、カミヤ先生の発破だろう。『満開』クラスはまだぽっと出...自分たちが『精鋭』だとこの一件で学園に認めてもらうために、各々心の火を燃え上がらせるのだった。