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真相-Ⅱ

「説明を続けるですよ。その『ヒガンバナ』は万能の力です。ただ、その万能さと能力の性質故...『禁忌の力』と認定されたのですよ。」


能力の性質...アレは死者の記憶から必要な知識を抜き取って教えてくれるが、それはあくまで死者の記憶...すでに死んでいる人間の墓を掘り起こして情報を盗み取るような真似をしているのでわかる。

だが...


「能力の性質ってのはわかりますけど...なんで万能だったらダメなんですか?」


そう、万能なことは良いことなんじゃないか?医療に使えば凄腕の医師に、料理で使えば凄腕のコックに...いいことづくめだと思うんだが...?


「バカだね君は。考えてもごらんよ。仮に、とても重要な機密情報を持っている人間がいたとして...その人物を殺して記憶を覗けばどうなると思う?」


「あ...情報が漏洩する...。」


それに、わざわざ自分が殺さなくたって、自然死したり戦死した人物でもいいわけで...


「世界は『ヒガンバナ』の持ち主...君の師匠を、何としてでも引き入れようとしたんだ。当然だ。手に入れれば圧倒的な情報アドバンテージを得ることが出来るからね。」


「ここからはワタシが説明するですよ。その結果、世界では戦争が巻き起こった...たった一人の能力者を巡って。」


師匠は黙っている。いつもの笑顔はどこへやら、今の顔はとても...恐ろしい。


「そこで、今では滅んだ団体が、彼の『ヴェルディアの核』を抽出することに成功し、それを封印したですよ。実際のところ、長く扱われたヴェルディアには本人の意思が宿っていたようですが...」


「つまり...それが俺が今使っている『ヒガンバナ』であり、師匠であると?」


急にいろんな話をされすぎてわからなくなってきた。


「ふむ...されど封印は解かれたり。何故なりや?」


ナイスアシストカミヤ先生。実際、俺が何故封印されていたはずの場所に入れたのか、俺自身でもよくわからなかった。


「簡単だよ。ヴェルディアの核...力を無理矢理押し込めたようなそれは、迅速に対処しなければすぐにその力が暴走するんだ。」


「力の暴走...って、具体的に何が起こるんですか?」


「能力に応じて暴走する...としか言えないねえ。これはボクの推測だけど、『ヒガンバナ』の場合...死者の記憶を無理やりにでも得るために手当たり次第に周りの人間を殺害していたかもしれないねぇ。」


恐怖する。

…自分が使っていた力がこんなにも曰くつきの代物だったなんて...


「だから、当時のワタシは封印すると同時に、それを持つにふさわしい人物に継承しようと決めたですよ。それを持つのにふさわしい人物が現れたとき、その封印を解除するようにしていたのですよ。」


当時のワタシ...当時のワタシ!?

この人さっき太古の昔って言ってたよな!?

どんだけ前から生きているんだ...違う意味で恐怖する。


「だから、アナタが『ヒガンバナ』を持っていた時は驚いたですよ。もし不正な手段で手に入れたのなら...アナタを最悪始末していたかもしれないですよ。」


「どおりで俺は目が覚めてすぐ坊主と出会ったわけか...。あのまま一生ブタ箱の中にいて、気づいたら大量に被害を出していた...なんてことになるかもしれなかったわけだな?」


「そういうことになるですよ。リオール君が現れたことは、学園にとって最良の結果をもたらしました。しかし、同時にイレギュラーが発生してしまっているですよ。」


イレギュラー?どういう事だ?

俺は球根を食べて、継承したはずだが...。


「ここからはヴェルディアのことになるのでボクが説明しよう。ヴェルディアはその成長度合いに応じて、『芽』『蕾』『花』...そして、『満開』の4段階に分けられる。もっとも、満開まで行った人間は歴史上でも何人かしかいないがね。」


…満開なんて知らなかったぞ。

しかし、多くの生徒は『蕾』のまま学園生活を終える。

世間的にも『花』は希少であり、多くの人は『蕾』のまま一生を終える。


「それが何の関係があるんでしょう?」


「まあまあ落ち着きたまえ。別に急いでるわけじゃあないんだ。『ヒガンバナ』は、本来『花』の状態で継承されるべきものだったんだ。しかし今、『蕾』の状態で継承されている。」


「ふむ...そのゆえは、リオール君の片方のヴェルディアに関はりたらずや?」


俺のもう一つのヴェルディア?今のところ木刀でしかない、アレのことか?


「鋭いねカミヤ君。実は君のヴェルディアを寝てる間に調べさせてもらったけど...どうやらソレが『ヒガンバナ』の成長を抑えているようなんだよねぇ...。」


寝てる間...昨日の模擬戦の時か。


「...どうして、そんなことになっているんですか?」


そう、ただの木刀が『ヒガンバナ』を抑えられるとは考えられない。


「単刀直入に言おう。君のヴェルディアは『危なすぎる』。それを抑えるために何か強い力で成長を抑えられているが...その影響が『ヒガンバナ』にも及んだんだろうね。」


危な...すぎる?

何を言っているんだ?アレはただの木刀で...今の今まで一度も能力が使えなくて...

成長を縛り付けられている?俺のヴェルディアが?いったい誰に?


「それを伝えるためだけに坊主を呼び出したってか!?そんな重要なことをこんなガキ1人に伝えて、何かできると思ってるのかよ!?」


師匠がキレている。こんな師匠を見るのは初めてだ。

しかし、師匠の言っていることは分かる。俺にそれを伝えて何をしようというんだ?


「リオール君が暴走すまじくするため...にはあらずや?」


「鋭いねカミヤ君。ここまで説明してボクと学園長が言いたいことはただ一つ。『ヒガンバナ』を使いすぎるな...それだけだよ。」


「この前のような状況ならしょうがないですが...『ヒガンバナ』が抑えられている状態で使用されている以上、どんな副作用があるかわからないですよ。」


なるほど...言いたいことは分かった。

つまり、俺本来のヴェルディアで『ヒガンバナ』が抑えられている以上...その副作用が未知数である...と。


「そうですか...ありがとうございました...」

「リオール君が帰らば、我も失礼す。では。」


朝から情報を入れすぎて、何がなんやらさっぱりだ。

授業に集中しよう...そう思いながら歩いていると、


「リオール君は、今の話につきていかが思ひけりや?」


カミヤ先生が質問をしてきたのだった。

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