模擬戦
「それにしてもすごかったねリオール君!君のヴェルディアってどんな能力なの?」
俺のはイゾルデのような視覚的にも効果的にもわかりやすい能力でも、オスカーのように相手を惑わせるようなトリッキーなものでもないからなぁ...ていうか無いし。
「俺は...まだ自分のヴェルディアの能力がわかってないんだ。もしかしたらただの木刀ってこともありうる。」
正直に答えると、彼女は驚いたような顔をしている。
「ううむ...君ほどの強さがヴェルディアの補助なしに成り立っているというのがすごく不思議だけど...カミヤ先生もそうだからね...うん!私にはわからん!」
そんな調子で話していると、ヴァレリスも輪に入って来た。
「アンタ、予想はしてたけどすごいわね...私なんて、先生から『ヴェルディアに頼りすぎ』って言われたのよ?」
「それは事実だからな。俺と戦ってる時も感じたし...他のみんなもヴェルディア頼りになっているとはいえ、ヴァレリスはそれ以上だ。」
「ふむ...ヴェルディアに頼らない戦い方も練習する必要があるんだ...」
隣でイゾルデがつぶやく。こういう姿勢を見ると、やっぱり満開クラスの生徒なんだと実感させられるな。
話をしていると、先生が口を開いた。
「休息は取れたか? さて、ここより模擬戦を行ふ。呼ばれし者は前へ進み出でよ。」
満開クラスの生徒同士での対決...ヴァレリスと戦ったのはこのクラスに入る前だったから、実質初めてだ。とても楽しみだ。
「まずは……リオール君とオーウェン君。」
おっと、早速か。オーウェン君といえば...先ほど、グローブ型のヴェルディアを使いカミヤ先生に殴りかかっていた男子だ。水をかけたら蒸発するんじゃないかってくらいアツい男だった。
「リオール!俺は見ていたぜ!キミのカミヤ先生に見せた素晴らしい剣技を!」
「ありがとう、オーウェン君こそ、見事な足捌きだった。参考にしたいくらいだ。」
「はっはっは!リオール!俺と君の仲じゃないか!オーウェンと呼んでくれ!」
いつ親睦を深めたんだろう、今?
しかし話していて気持ちのいい男だ。
「そうするよ、オーウェン。でも、褒めたって手を抜いたりはしないぜ?」
「俺はキミと全力の勝負がしたい!望むところだ!『カメリア』!」
オーウェンがヴェルディアを装着する。
「うおぉぉぉ!始めから全力で行くぜ!力がみなぎる!骨も心も硬くなる!目も耳も鋭くなる!頭も体もフル回転!痛みも感じない!ついでに免疫力もアップだァ!」
先の戦いを見るに、恐らく彼のヴェルディアは自身を強化するものなんだろう。
能力が目に見えないという点においては俺と同じだ。親近感を覚えてしまう。
…最後の免疫力アップの意味はあるんだろうか。
俺も自身のヴェルディアを召喚し、構える。
「よし……始め!」
先生の合図とともに、彼が近づいてくる。
彼の戦闘スタイルはその性格に反し、案外頭を使うスタイルだ。
剣先をわずかに振り、オーウェンを誘導する。そして...
「隙だらけだぜ!」
「そう来ると思ったよ...『向日葵』ッ!」
その一撃を受け流し、素早く一撃を叩きこむ。
『向日葵』はカウンターに特化した技だ。
常に太陽に向かって咲き続ける向日葵のように、相手の一撃を受け止め、その後素早くカウンターを決める。シンプルだが、効果は絶大だ。
オーウェンは吹き飛ばされはしたものの、すぐ体勢を立て直しこちらを見据える。
「そう来なくっちゃな!それでこそ俺が友と認めた相手だ!」
いつ友になったんだろうか。
「だが!俺は倒れん!リオール!キミを倒すその時までは!」
再度向かってくる。その攻撃を受けては一撃、躱しては一撃...彼の体がいくら強化されているとはいえ、何度も攻撃を喰らってしまえば流石に効いてきたのか、彼は苦悶の表情を浮かべるようになってきていた。
対して俺は無傷。差が見え始めていた、その時...
「ハァ...ハァ...俺は...倒れん...!」
まだ立ち上がるオーウェン。そして...
「俺の最後の力...受けられるものなら受け止めてみろ!リオール!」
その拳を固く握る。先ほどまでの苦悶の表情が嘘のように、真剣な表情になる。
受け流す体勢を取った、まさにその時...
「喰らえッ!」
「速ッ....。」
とっさに受け止めるが、その拳は俺にヴェルディアごと打撃を加えるのには十分すぎる一撃だった。
鈍い痛みが顔面に走り、俺は地面を転がる。
何とか立ち上がったものの、視界が揺れている。焦点が定まらない。安定して立つことが出来ない。
対して相手はまだ動けている。負ける...その時だった。
「いい...勝負だったぜ...。」
オーウェンが地面に倒れ伏す。そして...
「勝者――リオール。」
俺の勝利を告げる先生の声が響くのだった。




