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初めての授業

「そろひたりやうなれり。それならば、授業をはじめん。」


授業が始まったことを知らせる鐘とともに、どこからか現れたカミヤ先生。

どうなってんだこの人...ヴェルディアすら使ってないのに、一瞬で移動してやがる。


「ひとまず、汝らには各々のヴェルディアを用ひさす。危ぶきやうなれば、我が止むゆえ、心安くあれ。」


先生が止めてくれるらしい。的のようなものが見えないが、目標物は何なのかな?


「ヴェルディアの力を用いつつ、我に撃ちかけよ。汝らほどの攻めにては、我が倒るることさらにあらじ。」


…煽られている気がする。


「さらば…イゾルデ殿。向かひ来たれ。」


「おおっ!やっと私の番か!」


明るい橙色の髪をポニーテールにした明らかに元気な女子が答える。

先生と真反対のタイプだ。先生も苦労するだろう。


「静まりたまへ、イゾルデ...汝が声高らかなれば、他の者どもも惑はされるなり...。」


先生にも苦手なタイプがあるようだ。明らかに苦笑いを浮かべている。

念のため脳内メモに焼き付けておこう。


「わかったよ!これでいいか!?」


…全く変わっていないように見えるのは俺だけだろうか。


「よかろう……そのまま構へよ。まずは打ち込んで参れ。」


先生もだった。

この女子も『満開』クラスの生徒だ。学園が精鋭と認めた実力はあるのだろう。


「わかった!私の実力を見せてやろうではないか!来るがいい...『カレンドゥラ』!」


そう宣言すると、その女子...イゾルデの雰囲気が明らかに変わる。

まだ蕾のその紋様から、その小さな体には明らかに不釣り合いな豪快な戦斧が出現する。

その周りに周囲の石や土、金属を吸収していく。

まるで生きているかのようにそれらは形を変え、戦斧の周りに集まり固まってゆく。


「じゃあいくよ...!」


ヴァレリス、いや、俺よりも劣るが、一般の生徒から見ると俊敏な動きで先生に近づき、飛び上がり空中で一回転したかと思うと...思いっきり振り下ろした。

土煙が上がる。

…これ先生大丈夫なのか?

そう思ったが、杞憂だったようだ。

土煙の中から指でつまむようにしてイゾルデの戦斧を受け止めた先生がそこにはいた。


えぇ...

ぶっちゃけドン引きである。あそこまで強いの?


「ふむ……力は悪しくはあらぬが、全体に緩慢にして、見切るはたやすし。評は C+ とす。」


「かなり自信があったのだが...さすがは先生だ!」


うん、ぶっちゃけあれ見たら俺もそう思う。


そして、残りの生徒たちも先生へと打ち込んでいく。


他のクラスメイトたちも、それぞれ異なる力で場を支配していた。

しかしカミヤ先生の前ではどれもこれも徒労に終わったが...


そうこうしているうちに、俺の番になった。


「リオール君……汝がことは学園長より聞き及んでおる。なかなの腕前と聞くぞ。」


先生がこちらへと話しかけてくる。あの1戦のことを言っているのだろうか。俺は『ヒガンバナ』を使うつもりはないので、今回は木刀だけで挑む。


先生が僕の手の甲をチラッと見ると、俺にこう話しかけてくる。


「『片割れ』――あの紅き方も気にかかるが、今日は汝ひとりの力を示してみせよ。」


…バレたんだろうか。まあ使わないでいいなら越したことはない。


「それでは...行かせていただきます!」


俺のヴェルディアは現状ただの木刀だ。その状態で先生に高得点をつけてもらうしかない。


「ふむ……ヴェルディアの力は用ひぬのか?」


「使いたいのですが...あいにくまだわからなくてです...ねッ!」


いい調子だ。先生に「受け」させることに成功している。

今までの生徒達は皆ここまで長引いてはいなかった。皆一瞬でやられていた。


「さて……ここよりは、攻めをいかに受け、いかに返すか、その技倆を見せてもらはん。」


そう言い放つと、恐ろしい速さの拳が飛んでくる。

何とか受け流してはいるものの、この量を捌くのには無理がある。そのうち、俺は弾き飛ばされていた。


「ハァ...ハァ...どうすれば...」


戦ってみてわかった。この人はバケモノだ。明らかに手加減した状態でさえこの力。力の底が見えない。恐怖していた時...先生が口を開いた。


「……ここまでとしよう、リオール君。受けも攻めもよく備はり、ヴェルディアに依らぬ基礎力、確かに鍛へられておる。これを高めれば、いづれ我をも凌がんやもしれぬ。されどヴェルディアを自在に操れぬは減点。C-。」


基礎だけであれだけ出来てる先生がバケモンだよ...

ただ褒めてもらったのは確かだ。嬉しい。しかし先生を超えられるビジョンは見えない。


「今回の授業はここまでとす。各々、しばし休息を取りたまへ。」


これから模擬戦だから、休憩を取れるのは助かる。


そう思い休息をとっていると...


「すごかったねリオール君!」


イゾルデが話しかけてきたのだった。

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