9/14
参:そうして私は考えた(2)
「……それだけ、ですか」
思わず、口をついて、そう言ってしまっていた。
私は社の手入れをしていただけだ。
霊感などというものとは無縁だし、物に力を宿すような能力があるとは思えない。
物に戦う力を宿す、というのは、そういったものが必要となるのではないのか?
「必要なのは意志の力です。思いの強さと言い換えても構いません」
と言われたのだが。
正直に答えよう。
神社が無くなり、確かに困惑した。
が、どうしても元に戻したい、是が非でも取り返さねばならない、という思いは、私にはない。
いや、むしろ……。
自分の思いを明確な言葉にする前に、私は心に蓋をした。
こんな私よりも、社のことにもっと心を注いできた人が、他にいるはずだ。
まあ、もしここで断れば私は――この誰もいない、時間の止まった世界に一人、永遠に取り残されるかもしれないのだが。
その事とは別に、わずかに気がかりと言うか、引っかかる事があった…。
「この社にあった剣から禍気を取り除いたとして、ですね。
そうした場合、この社はもとに戻るのですか…?」