参:そうして私は考えた(1)
「……サニワ」
先程も、彼らが話してくれた。
確か、物へ思いを与え、心を目覚めさせ、戦う力と姿を与える。
物を、付喪神にする事できる力のある人の事を言う、…のだったろうか。
何故。
またしても、何故という思いが湧き上がる。
何故。
私なのだ。
何故。
管理をしていた、小さな小さな村社が消えたのだ。
何故。
ご神体としていた剣に禍々しいものを吹き込まれねばならなかったのだ。
何故。
サニワとやらになって欲しいと言われているのだ。
そもそも。
何故。
歴史編纂主義者とやらは生まれたのだ。
何故。
時の政府とやらが、自分たちでサニワとやらにならないのだ。
それに。
何故。
時間が止まってしまっているのだ。
私は、もう一度、空を見上げ、羽ばたいている途中で止まったままの鳥を見た。
男たちは、私が空を見上げている事に気が付き、視線をたどったようだ。
「本来、過去の事柄、人物に接触することはありえないことなのです」
歴史編纂主義者に、何らかの影響を受けた物、人物、そして審神者となるべく人物への接触。
最低限の接触にするために、時間を止めている、という。
「…ひょっとして、私がサニワとやらになるのを拒否すると、時間が止まったままのここに、ずうっと独りで、置き去りにされるのでしょうか…?」
その問いには、片方の男が、ぎくりと肩を動かした。
「さすがに、それは…」
と言いかけたのを、もう片方の男が制した。
「そういう可能性もあります」
可能性、か…。
私は何度目かの苦笑まじりのため息をついた。
「私が、そのサニワとやらになる資格があるとでも?」
「十分にありえます」
即答だった。
まあ、ないとは言うまい。
「具体的に、どこが、どのように、と聞いても?」
説明によれば、私は社の管理者であり、そこには刀が祀られていた――それだけだという。