弐:そうして私は話を聞いた(3)
筋が通るようで、何かが引っかかる。
何故、だ。
少しの間、頭の中には、その言葉しか浮かばなかった。
混乱を極めた私を、彼らは何も言わず、ただこちらを見ていた。
私は軽く頭を振り、浅くなっていた呼吸を整えた。
――とりあえず、今は彼らの話をすべて“真実”として聞いてみよう。
「……模造品とは言え、剣を祀っている神社は、他にも多々あるはずですが、まさか、それらすべてが…?」
「おそらく、いや、間違いなく、ほとんどが消えているでしょう」
「では、全ての剣…刀剣が、禍気を吹き込まれ、悪しき付喪神になったと…?」
黒服の男は、そこで少し間を置いた。
「いえ、歴史編纂主義者の動きを知った直後に、こちらも名だたる名刀は保護下に置きました」
「……」
名だたる名刀は、か…。
私は、浅く苦く笑った。
それは、まあ、そうでしょう…。
そして、そういった名刀の類は、おいそれと簡単には、禍々しいものを受け入れたりはしないのでしょう…。
「社が消えたのは…ご神体がご神体ではなくなったため…」
「はい」
私のつぶやきに、彼らは、納得頂けたようで、と頷いた。
妙なひっかかりは覚えるが、まあ、今はそれで良しとしよう。
「そこで」
彼らは、言葉をつづける。
その響きに、あまり良い予感はしない。
私は、改めて彼らと真正面から向き直った。
「あなたには、審神者の一人となっていただきたいのです」