弐:そうして私は話を聞いた(2)
「彼らが禍気を宿す器として刀剣を選んだのは、
それらが武器でありながら『祀られている』からです」
それは、何となくわかる気がした。
『祀られているモノ』は神聖視されている。
禍気とやらを吹き込む前から、何等かの気をまとっているともいえる。
ゆえに、付喪神として具現化しやすい、という事だろう。
そう告げてみると、彼らも、おおむねそのように予想している、と言う。
ん…?
祀られている…刀剣に、禍気…?
まさか、と彼らに目を向けると、気が付きましたか、と呟いた。
「うちの…社にあった刀に、禍気が…?」
「ええ、ほぼ、間違いなくそうでしょう」
「しかし、何故? あれは名刀でもないし、刃があるかどうかも分からない模造品ですよ!?」
「それでも、刀剣であり、神具として祀られていた」
理屈はわかる。
が、何故だ。
何故、うちの、こんなちっぽけなうちの社のご神体が、そんなわけのわからぬ事に巻き込まれねばならないのだ。
何故、だ。
頭を抱えつつ、私は社のあった場所を見やった。
何故、だ。
「では…禍気を宿した刀が、うちの社を消した、と…?」
「あるいは、禍気を宿した事により『無かった事』になったか」
「『無かった事』…」
「禍気により、神具ではなくなったため、祀る必要性が無くなった、ゆえに、社ごと『無かった事』になった」
「意味が、分からない!」
とうとう私は叫んだ。
静寂の中、自分の出した大声が耳を打つ。