表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

弐:そうして私は話を聞いた(1)

「歴史編纂主義者と呼ばれる者たちが現れ、歴史を改竄しようとしている事は先ほど話しました」


確かに、そのような事を言っていた。

なので私は黙って頷いた。


「彼らは、刀剣に禍気(まがき)を宿らせ、付喪神的な存在を作り上げました。

そして、過去の歴史を変えようと画策し始めまたのです」


「禍気……というのは、神道での二魂の一つ、荒魂(あらみたま)と同じと考えても?」


知らない言葉は、できるだけ自分の知っている単語に置き換えたい。

それ以上に……神職もどきとしての、わずかな矜持と多大な見栄が、自分の知っている専門用語を使わせていた。


荒魂(あらみたま)…文字通り、荒ぶる魂である。

神の持つ荒々しい側面であり、それにより、天変地異が引き起こされ、悪い病が流行り、更には、人の心が荒廃し争いへ駆り立てられる…。

「神の祟り」と呼ばれる厄災を引き起こす性質の事だ。


「おおむね、合っております」


黒服の男は頷いた。


「ですが、神の持つ性質であれば、祭事で治めることができるでしょう。

祟り神は(まつ)り上げれば良い」


そんなに簡単なものではないが…

まあ、まあ、輪郭としては確かにそう言えるかもしれない。


「ですが、禍気は違います。確かに人の心を荒廃させ争いへと駆り立てますが、(まつ)り上げたら治まるものではない。

(しず)めの(ことば)も、(おさ)めの(ことば)も効きはしない」


私たちの存在も、考えも、否定し、破壊してくるもの。

それが禍気であり、禍気を宿した刀剣だという。


そのような禍気を作り出した歴史編纂主義者とは…。


「歴史に『もしも』はありえないのです」


黒服の男は、静かに、しかし断固として言い放った。


「空想する分には構わない。

あの合戦で『もしも』あちらが勝っていたら…。

あの時『もしも』別の選択をしていれば…。

そうやって歴史の“もしも”を空想すること自体は、否定しません。個人で楽しむ分には、です。

――だが」



その『もしも』を実行してしまった場合、どうなるのか。

何もかもが変ってしまう。

科学の進歩も、私たちの住む場所も、私たちの存在そのものも。


「過去に起こった事は変えようがない、変えてはいけないのです。

しかし、歴史編纂主義者たちは、そうは思っていない」


歴史的『もしも』を実現させ、今とは異なる世の中を作ろうとしている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ